07.01.09
オーバー・ブロウ / ドロー
先日の続きです。
ブルースハープの演奏におけるオーバー・ブロウ / ドローについての意見は様々で、かなり執着を持って音を出すことに取り組んでいる人もいれば、「リトル・ウォルターやビッグ・ウォルターなどの巨匠達は皆、オーバー・ブロウなんか使わずに素晴らしい演奏をしていたじゃないか。それなのにどうしてオーバー・ブロウなんかが必要なんだ。」 と言う人もいます。この 「どうしてオーバー・ブロウなんかが必要なんだ」 というのは、実は私もそう思っていた時期があるので、わからなくはないのです。現在でも、「オーバー・ブロウを使っているからすごい」 という価値観は私の中にはなくて、「どういう音楽を作り出すか」 ということが最も重要であると思っています。オーバー・ブロウやドローなどのテクニックをを駆使しても、音楽的に脈略がなかったり説得力がなかったりしては意味がないと思うし、オーバー・ブロウを含むたくさんの音をぴらぴらと速く吹きまくる演奏みたいなのにも興味がありません。私が目指すのは、「聞き手にオーバー・ブロウを使っていると気付かせないような演奏」 です。「音楽を作り上げていく中で、出したいと思う音があって、それがたまたまオーバー・ブロウだった」 というのが理想です。あくまでも、「文脈の中で必要だったから使った」 という感じで使いたいと思っています。そういう使い方を上手くやってのけていると私が感じるプレイヤーに、Joe Filisko、Dennis Gruenling、Jason Ricci、Steve Baker などがいます。
最近では、オーバー・ブロウ / ドローを演奏で使う人は珍しくなくなりましたが、全体的にはやはりまだ少数派だと思います。私も意識して練習に取り入れるようになったのはこの2ヶ月ほどで、それまでは実あまり興味がありませんでした。それは上で説明したように、「オーバー・ブロウなんて使わなくても良い演奏はできる」 という気持ちと、「毎日の限られた練習時間の中では、オーバー・ブロウなんかする前にまだまだやらなくてはいけないことはたくさんある」 という気持ちがあったからであります。でも最近は、「そこに音があるなら (ブルース・ハープという楽器がオーバー・ブロウ / ドローができるように作られているなら)、使わない手はないんじゃないか、というか、使って当然なんじゃないか」 と思い始めています。まあ、基礎的なテクニックがかなり改善されて、練習時間に余裕ができてきたということもあるのですが。何はともあれ、ジョーやデニスやジェイソンやスティーヴなどのように使いこなせるようになるのはまだまだ先のお話です。
06.26.09
パッカー
最近、集中して行っているのが、パッカーの練習。何を今更、という感じもしますが、実は私はパッカーの演奏が大の苦手なのです。普段は全てタング・ブロックで演奏するので、たまにパッカーで吹いてみると、うわっ何これ!というお粗末な演奏になります。これまでタング・ブロックのみの演奏に不自由を感じたことはなかったのですが、訳あって、パッカーももうちょっとましにできるようになろうと心に決めたのでした。その訳というのは、オーバー・ブロウ / ドローを演奏に取り入れようと思い始めたことにあります。私は、オーバー・ブロウ / ドローがまだ、タング・ブロックでできないんですね。練習はしているのですがなかなかできなくて、これは時間がかかりそうだということで、とりあえずはオーバー・ブロウ / ドローを使う時はパッカーに切り替えようと決めたのであります。
プロの人はだいたい、パッカーとタング・ブロックをミックスして演奏していることがほとんどだと思いますが、ジョー・フィリスコやデニス・グルンリングなど、ほぼ100%タング・ブロックを使う人もいます。デニスに憧れてハープを始めた私としては、彼の言葉を信じて (笑)、タング・ブロックこそがブルース・ハープの道だ!というような感じでこれまで練習して来てました。今でもそういう思いは少なからずあって、タング・ブロックを多く使うプレイヤーの演奏の方が、音色もその演奏のアプローチも、好みだと感じることが多いです。しかし、デニスやジョーの様にタング・ブロックでオーバー・ブロウ / ドローができるようになるにはまだまだ時間がかかりそうだし、それまではひとつパッカーでやってみようじゃないか、ということにしたのです。以下、練習の覚え書きです。
まずはトーン (音色) 作り。良いトーンが出せなければ何も始まらない、ということで、いつものスケールをパッカーで練習。ううっ。トーンがかなり貧弱。特にベンド音。口の先をすぼめてストローで飲み物を飲む時のように 「チュー」 という感じで吸うという、薄い音にならないためには死んでも避けたいやり方でベンドをしそうになってしまう。いかーん!!そこで、タング・ブロックに切り替え、同じ音を吹いて、正しい身体の使い方を確認。そうそう、ここなのよねー。口の形は変えないで、喉のこのあたりを下げる感じで、この部分で発音するようにベンドするのよねー。と確認して、今度はそれを再現するようにパッカーで吹いてみます。こうして、タング・ブロックで見本を示して (自分で自分に見本を示すというのも変な話ですが。)、パッカーで再現するのというのを繰り返し練習して、良いトーンでスケールが吹けるようにします。まあ、なんとも面倒な練習であります。
タング・ブロックだとベンドがしにくいと言う人もいますが、私は、正しい身体の使い方でのベンドを学ぶには、タング・ブロックはとても役に立つと思います。パッカーだと口先でベンドをするという間違いを犯してしまうことは簡単ですが、タング・ブロックだと舌と口がハーモニカに固定されるため、嫌でも口先以外の場所を使ってベンドをしなくてはならなくなります。舌をハーモニカにつけ、口を大きく開くことによって、口の奥や喉が開きやすくなるので、ナチュラル音 (ベンドしない音) のトーンも良くなることが多いです。「すべてタング・ブロックで演奏するべきだ」 とは言いませんが、トーンやベンドのテクニックを改善したいと思っている方は、試してみる価値は大いにあると思います。
さて、スケールがだいたいできるようになったら、次はタング・ブロックとパッカーの切り替えの練習。スケールを、タング・ブロック→パッカー→タングブ・ロック→パッカー・・・と、一音ごとに切り替えて練習。トップの音まで行って戻ってきたら、次は同じスケールをパッカーから始め、パッカー→タングブ・ロック→パッカー・・・と練習。これもまた面倒ですが、効果はありです。
更に、私がいつもタング・ブロックで練習する基礎練習のひとつ、タング・スラップとコード・リズムを織り交ぜたブギ・パターンを、パッカーで練習。ビッグ・ウォルター様がよく使うテクニックです。これを、12バーの構成でやります。ウォルター様はタング・ブロックを使っていますが、それに近いサウンドをパッカーで作り出すようにがんばるのです。良いトーンで吹けているか、きちんとアーティキュレートできているか、ベンド音のピッチは正確か、などとひとつひとつ確認できるゆっくりのテンポからはじめて、少しずつテンポを上げていきます。
これらの練習を始めてから今日で5日目くらいですが、だいぶ自然にパッカーの演奏ができるようになってきました。私は使うポジションが多いので、スケールもブギ・パターンも、全てのポジションでやると、かなりの量になります。パッカーの練習の他に、毎日の日課であるタング・ブロックでの練習も普通にするため、最近は基礎練習だけでものすごく時間がかかってしまいます。でもそのおかげで、この頃は曲をやってもなかなか調子が良いです。楽器の演奏はスポーツのように、日々の体作りがものを言うというところがあると思います。
オーバー・ブロウ / ドローを演奏で使うことについても書く予定でいたのですが、思いのほか長くなったので、次回にしたいと思います
03.08.09
呼吸で作るグルーヴ感
今日はうちの夫の演奏をアップしたいと思います。興味のある方はどうぞ。
>Slow Blues in D – solo harmonica
私はハーモニカの基礎は、ほとんど全て彼から学びました。最近は様々なポジション (ファースト、セカンド、サード以外) を練習したりしていることもあって、たまに質問したりアドバイスをしてもらうくらいなのですが、彼から学んだ基礎なしにはここまでハーモニカにのめり込むことはなかっただろうと思います。
ハーモニカを始めたての頃から、耳にタコができるほど夫から注意され続けてきたのが、「音色」 と 「呼吸で作るグルーヴ感」 です。音色についてはこのブログでも何度も書いてきたので、今日はグルーヴについて書いてみます。
上手い人は皆、音が出ていない時でも呼吸でリズムを取っていて、それがグルーヴ感につながるのだ思います。リトル・ウォルターなどが良い例で、彼の演奏を注意して聞くと、いたるところでこの 「呼吸が作り出すリズム」 を聞くことができます。「タッ」 とか 「ハッタハッ」 という感じで、ハーモニカを口につけるかつけないかというくらいの音にならないような音なのですが、それがフレーズや音楽全体に流れを与えているのです。これなしにリトル・ウォルターのスウィング感は作り出せないと思います。私の尊敬するギタリストが、「グルーヴを作るのに大切なのは空ピックだ」 と言っていたのを聞いて、(ギターが弾けないにもかかわらず)、「ハーモニカととても似ている!!」 と思ったことがあります。ギターを弾く方なら、空ピックのようなものだと思えばわかりやすいのかもしれません。
前述のリトル・ウォルターに限らず、上手い人なら皆やっていることで、これができているかいないかは、「上手い人」 と 「ほどほどに上手い人」 とを分ける一線のひとつだと思います。良い演奏をするためにはとても大切なテクニックなはずなのですが、教えるのが難しいためか、自分でできないので教えられないためか、または自分ではできていてもあまり意識していないためか、ワークショップなどでもあまり語られることがありません。ではどうやったらマスターできるようになるのかというと、曲をコピーする時に、明らかに聞こえている音だけではなくて、音と音の間の音やフレーズとフレーズの間の音まできっちり耳をそばだててコピーして、だんだんと感覚をつかみ、アドリブの時でも自然にできるようにする・・・というように、地道に取り組むしかないのかもしれません。これができるようになると、演奏のレベルが一段アップすることは間違いなしなので、努力する甲斐はあると思います。
02.21.09
スケールのすすめ
私が毎日の練習に取り入れているもののひとつに、スケール (音階) の練習があります。なぜスケールを練習するかというのは人によって多少異なるのかもしれませんが、私にとってのスケール練習は、
アドリブ (即興演奏、インプロヴィゼイション) における自由を獲得するための手段
に他なりません。この 「自由」 というのは2つに分けることができて、
1.思考上の自由
2.身体上の自由
となります。
ブルース・ハーピストというのは、私を含め、他のハーピストのリフやリックをコピーしてアドリブをすることが非常に多いです。コピーをするのは大切な練習法ですが、それ以外のアプローチができない奏者が多いのも事実だと思います。知っているリフやリックを繋ぎ合わせるだけではなくて、もうちょっと踏み込んだ、又はもっとオリジナルな演奏をしようという場合には、理論的なアプローチが手助けになってくると思います。スケールを練習すると、「どこにどの音があるか」 というマップが頭の中にできやすいですし、ブレス・パターンによる演奏だけではなくて、音楽の構成に従って音を選んでいくことができるようになります。「今、バンドはこのコードを演奏しているから、このスケールの中からこの音を使うことができる」 というようなアプローチが可能となるわけです。これが、「思想上の自由」 です。
「身体上の自由」 というのは、出したい音を、出したい時に、出したいように出せるという自由です。例えば、ベンド音。何度も練習したリフの中ではうまく鳴らすことができるベンド音も、アドリブで咄嗟に 「今、ここでこういう音色でこのベンド音を鳴らしたらかっこいいだろう」 という時には、身体がついて行かないことがあります。アイディアも音のイメージもあるのだけれど、コピーし慣れたリフやリック以外の演奏にはテクニックがついて行かないのです。これも、毎日のスケール練習でかなり改善することができます。ただし、身体に共鳴した良い音色が出ているか、ピッチは正確か、身体に余分な力が入っていないか、身体の正しい場所でアーティキュレーションができているか、レガート奏法はできているかなど、色々と注意しながら練習することがあくまで大切で、何も考えずにがむしゃらに練習しても時間の無駄となるだけです。これらのことがきちんとできるテンポで始めて、徐々にテンポをあげて行くのが良いと思います。テンポが上がっても、注意点は忘れないことが大切です。
ジェイソン・リッチ (Jason Ricci) も、「ハーモニカを速く演奏する方法 (Playing Harp Fast) 」 という題で、スケール練習を取り上げています。私は速吹きを目指しているわけではないのですが、スケールが速く上手くできるようになってから、特に速くないフレーズでも、演奏するのがぐっと楽になりました。ジェイソンは、ハーモニカ専用のフォーラムでもスケール練習の重要さを話題にしていて、現在でもスケールを練習していると言っていました。
私は、ジェイソンがここでやっている練習法を含む計8パターンの練習法を、メジャー・ペンタトニック・スケール、マイナー・ペンタトニック・スケール、ブルース・スケールの3つのスケールでそれぞれ練習します。なぜこの3つなのかというと、私がブルースのアドリブで使うのは、この3つのスケールが圧倒的に多いからであります。これを、1st、2nd、3rd、4th、5th、6th、11th、12th の各ポジションで練習すると、軽く2時間はかかります。「そんな退屈なこと毎日やってられるか!」 という方も多いかと思いますが、私はこういうのはあまり苦にならないんですね。かれこれ2ヶ月ほど毎日やっていますが、効果は抜群で、最近はジャムに行くのが楽しいです。スタンダード・ポジション (1st、2nd、3rd) 以外には興味がないという方は2時間もいらないですし、スケールを毎日の練習にちょっと取り入れてみるというのはいかがでしょうか。
02.07.09
ストローでオーバーブロウ
「だから何?」 というようなものでもあるのですが、まあおもしろいのでアップします。Ben Hewlett による、ストローを使ってオーバーブロウをするという映像。ジュースなどを飲むときに使うストローを使ってハーモニカを吹くと、オーバーブロウになるのだそうな。ベンはブリストルのハープ仲間で、私は実際にやって見せてもらったこともあるのですが、まさか YouTube にアップするとは・・・。愛すべきハープおたくであります。
>Overblowing with drinking straw
手を使わずにハープを吹くという映像もあります。サニー・ボーイ二世なんかもやっていたあれです。これは、Joe Filisko がブリストルのフェスティバルに来た時に、教えてもらったのだそうな。
>Hands-Free Harmonica
他にも色々とアップしているので、興味のある方はどうぞ。
>YouTube – PaulLennonUK’s Channnel
01.29.09
練習を録音してみる
自分の演奏を録音して聴いてみるというのが大切な行為だとは承知していますが、実はそれほど頻繁にはやりません。ものぐさなのもありますが、何より、録音した自分の演奏を聞くのは恥ずかしくて、逃げ出したくなってしまうからであります。これは本業のピアノも同じです。でも、常にそう言ってもいられないので、昨日は練習をちょっと録音してみました。私の練習なんか聞いてもしょうがないという気もしますが、お暇な方はどうぞ。何しろ初心者なのでお聞き苦しい点もありますが、良くないところは反面教師として下さいませ。
こうして聞いてみると、4穴ベンドの弱さが浮き彫りになりますね。4穴のベンドは調子がよい時はけっこうしっかりできるのですが、緊張したりすると (録音するのって、誰が聞いているわけでもないのになぜか緊張しますよね。)、グリップが弱くなってしまいます。ということで、今日はいつもの一通りの練習の他に、4穴ベンドの練習を小一時間やりました。意識して練習すると、普段使っていない筋肉が鍛えられているのが感じられてうれしいのであります。最低でもあと一週間はこの練習を続ける予定です。
ちなみに、曲の終わりで使った、2穴と3穴を同時にベンドして上げるというテクニックは、とてもよいベンドの練習になります。両方の穴の音をかすれたり途中で途切れたりせずに最後まで上げ切るのはなかなか大変ですが、これができるようになると、全体にベンドがしやすくなると思います。「ベンドは一応できるけど、なんかいまいちなんだよなあ」 と思っている方は、挑戦してみるとよいかも知れません。ベンドってできていると思っていても、実はまだまだ改善の余地があることが多いんですよね。
その他の反省点としては、3穴ベンドの音色にもっとバリエーションがあった方がいいなとか、いくつかのフレーズはもっとなめらかさがあった方がいいなとか、色々あって挙げるときりがありません。しかし、こういうバッキングなしでやるソロのアドリブって難しいですね。拍やリズムを自分でキープしなければならないし、グルーヴを作り出すのも大変です。更に、しっかりした構成をアドリブで作り上げていかないと、わけのわからない演奏になりかねないとも思います。バッキング・トラックを使った練習も役には立ちますが、ソロの練習も大切だと実感したのでありました。

今回使ったハープは、Bushman の Delta Frost です。何の変哲もない (カスタマイズなどされていない) 普通のハープであります。日本ではどうなのかわかりませんが、イギリスでは16.99ポンドと安いのがうれしいハープです。Marine Band Deluxe が34.99ポンド、Suzuki Hammond が29.99ポンド、Seydel 1847 が61.50ポンドですから、これは安い! 今のところ、C調はこの子一本でがんばっています。
01.20.09
身体で感じて演奏する
昨晩は、エディ・マーティン (Eddie Martin) が、ゲストとして夫 (ハープ吹き) と私 (知らない方、忘れている方もいらっしゃるかもしれませんが、本業はあくまでピアノ弾き) をライブに呼んでくれたので、彼のバンドに加わって演奏しました。エディはイギリスが誇るブルース・マンです。以前紹介したことがあるので、知らない方はこちらの過去記事をどうぞ。
>Eddie Martin

エディのような大物と演奏するのはとても刺激があるし、私も数曲リードさせてもらったりして楽しかったのですが・・・しかし、エディのバンドは相変わらず音がでかい。先日会った際に、最近はなるべく音量を落とすようにしていると言っていたのですが、それでもやはりでかい。ドラマーの音が大きいので、それに比例してバンド全体の音量が上がっている感じを受けました。うちのバンドは音量を上げすぎないことを常に心がけているので、こういうステージ・ボリュームが高い中で演奏するのは、私としては理想のコンディションではありません。しかも昨日は、真後ろにドラム、斜め後ろにベースアンプがあるというピアノの配置。モニターの音量をぎりぎりまで上げても、自分の音が聞こえにくいという状況でした。
ステージで自分の音が聞こえないというのはとてもやりにくいし、全く好きではありません。でもですね、ピアノだと、よく自分の音が聞こえなくても弾けるんですよね。「こういうふうに身体をつかって、こういうタッチで弾いたら、こういう音が出る」 というのを身体で覚えているし、イメージした音は頭の中で全て鳴るので、実際に音が聞こえなくても弾けるのです。極端な話をすると、電子ピアノを無音で (スピーカーやヘッドフォンを通さずに) 弾いたものを録音してみたとしたら、弾きこんだ曲ならば、そこそこの演奏にはなると思います。
ピアノという楽器は、一度出してしまった音は修正できません。ハーモニカや多くの管・弦楽器は、音を出してしまった後からでも音色を立て直すことができますが、ピアノはそれができないので、鍵盤に触れて音を出すまでが勝負なのです。ですから、熟練したピアニストなら誰でも、身体 (指だけでは決してない) の使い方と音のイメージを密着させた演奏法を身につけているはずだと思います。
ハーモニカはピッチ (音程) を自分でコントロールしなくてはならないので、ピッチ調整は調律師任せであるピアノとは若干違いますが、それでも身体で覚えていれば音が聞こえにくくても演奏できるようです。「ようです」 と書いたのは、私自身、まだできていないからであります。ジャムで演奏する際、自分の音が聞こえないと、どの音を吹いているのかさえよくわからなくなることがあります (恥)。更に、ついつい強く吹きすぎてしまい、その結果、音程が下がったり、音色が荒くなったりもします。それでも聞こえていないから、気づかないんですよね。後で夫に指摘されて、落ちこむ羽目となるわけです。
夫に言わせると、「音が聞こえなくても空気の流れを感じることができるし、どういう音が出ているのかを口や身体で感じて吹くことができる」 のだそうな。確かに彼は、大音量のジャムでも、昨日のようなステージ設定でも (夫の隣には、エディのでかいギターアンプがありました。) 強く吹きすぎることなく演奏できるし、音も客席にはしっかり通っているんですよね。デニス・グルンリング (Dennis Gruenling) もワークショップで、「自分の音が聞こえないって言う人は多いけど、身体で感じればきちんと演奏できる」 と言っておりました。
これは、「音を聴かなくてもよい」 ということではないので、どうか誤解しないで下さいね。演奏において、自分の音、更に他の奏者の音をよく聴くことは、とても大切ですし、ステージでは自分の音と他の人の音がバランスよく聞こえるのが理想です。ここで私が言いたいのは、熟練した奏者は、身体の使い方と音色をいつも意識して演奏しているので、音がよく聞こえない状況でも演奏をすることが可能であるということです。そのように楽器を自分のものにするためには、「上手く吹けている時、良い音がしている時は身体のどこを使っているのか。どのように身体で感じているのか」 を日々の練習で意識して、少しずつ身体に覚えこませていくしかないのだと思います。地味な作業ですね。
私はハープに関しては、まだまだ 「身体で感じて吹く」 というレベルではありません。でも考えてみたら、ピアノはもう30年近くも弾いていて、それでもまだ毎日練習している状態です。練習を始めて3年にも達していないハープが簡単に行かないのは当然ですよね。楽器の習得は、時間と経験を要するものなんだよなあ、とつくづく感じます。
08.05.08
1穴タング・ブロック
最近、ビッグ・ウォルター (Big Walter Horton) のコピーをしています。今日は、大好きなアルバム “Little Boy Blue” に収められた “Two Old Maids” を練習しました。このアルバムは、ウォルターのソロをすべて口ずさめるくらい何度も聞いてきたので、コピーするのは比較的楽ではありますが、それにしても耳コピというのは根気がいるし、時間のかかる作業であります。
ビッグ・ウォルターのコピーをする時に必要なるのが、1穴のタング・ブロック。普段タング・ブロックで演奏する人でも、1穴の奏法は色々で、パッカーを使う人もいれば、タング・ブロックとパッカーをその時によって使い分ける人もいます。これは、他の穴のように左側に押さえる穴がない1穴は、タング・ブロックをする必要性があまりないし、特に1穴のベンド音はパッカーの方が良い音色が出しやすいことが多いのが理由だと思います。シングル・ノート (単音) を吹く分には、1穴はパッカーで十分だと思いますが、ビッグ・ウォルター特有の、タング・スラップを使ってコード・リズムをいたるところに入れる演奏では、1穴のタング・ブロックが必要になってきます。
この時のタング・ブロックは、舌の左側で2~3穴、または2~4穴を押さえてします。他の穴が、舌の右側を使って吹く穴の左側を押さえるのと、ちょうど逆のやり方ですね。慣れるのにちょっと時間がかかりますが、これができるようになると、1穴でもタング・スラップをすることが可能になります。
ビッグ・ウォルターの演奏は、ぱっと聞いた感じではそれほど音は多くはなくシンプルに思われますが、よく聞くとたくさんの効果音が使われているので、そういう微妙なトリックを学ぶには最適だと思います。一音一音コピーするというのはけっこう大変な作業ですが、大好きな曲が吹けるようになるというのは、やはり楽しいです。耳コピは、自分の好きな曲を選ぶのが上手く続けられるコツなんだろうな、と思います。
関連記事
>タング・ブロック - その1
>タング・ブロック - その2


