05.07.09

Joe Spiers Custom Harmonica - その2 ・ カスタム・ハーモニカというもの

カテゴリー: ハーモニカ tagged , , , に 11:29 pm : Yuki

前回からもう少し話を広げて、カスタム・ハーモニカというものについて書いてみたいと思います。先日の記事を読んでいない方は、こちらからどうぞ。
Joe Spiers Custom Harmonica - その1

なぜカスタム・ハーモニカというものが存在するのかという疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。そもそも、最近のストック・ハープ (手直しされていない、店で普通に買うハープ) は、多かれ少なかれ、どこかに欠陥があるのが普通なんですね。例えば、私が馴染みのあるストック・ハープはマリンバンド・デラックスですが、買って箱から出したばかりなのに、チューニングが狂っていたりとか、すかすかして感度の悪いホールがあったりとか、キーキー鳴るリードがあったりとか、何かと欠陥があるのが普通です。以前、スティーヴ・ベイカーと話した際に、ホーナーの製品の質は一時期は低迷したが、最近はまた質が上がってきて、現在は60年代以来の質の良さだと言っていました。確かに最近のデラックスは、「おっ」 というくらい素晴らしいものもありますが、それでも全ての穴がバランスがとれて良く鳴るストック・ハープに当たるのは、かなりラッキーなことだと思います。マリンバンドのニューモデルについての記事でも書いた通り (>Marine Band Crossover)、スティーヴ・ベイカーは、ホーナーの製品開発に深く関わっている人で、彼自身、素晴らしいプレイヤーでもあります。自分はストック・ハープで十分で、カスタム・ハープは必要ないと言っているスティーヴですが、そんな彼でも、自分の演奏に合わせてリードを調整したり、チューニングをしたりという作業は自身で行っているそうです。

ということを踏まえて湧いてくるのが、「それではなぜ、工場での品質管理をもっと厳重にして、欠陥のないハーモニカを作らないんだ!」 という疑問です。これは、「ブルース・ハープは低価格の楽器である」 という前提があるためです。消費者が納得する安い値段で、一枚一枚のリードの並びやカーブの具合、リードとリードプレートの隙間などをチェックして調整するのは、到底無理な話なのです。そういうわけで、全てのリードがしっかりと調整されたハーモニカが欲しいと思えば、自分で手直しするか、それなりのお金を払って職人にその仕事をしてもらうしかないわけです。

しかし、カスタマイズと一言で言ってもその仕事の度合いは様々で、腕の良いカスタマイザーの仕事は、修理をしたり調整したりする以上のものであります。彼らの目指すところは、可能な限りエアタイト (高い気密性) に加工して感度を最大限に高め、可能な限りダイナミックス (音量の強弱の幅) を広げ、奏者の希望によってはオーバー・ブロウ / ドローがスムーズにできるセッティングも行うなど、言わば 「スーパー・ハープ」 なのです。しかし、いくらスーパー・ハープ (というのは私が勝手に名付けたのですが。) とは言えど、テクニックが無ければもちろん使いこなすことはできません。でも、プロのプレイヤーやプロ並の演奏を目指す人にとっては、無駄な労力を使ったり、楽器に心を煩わされることなしに、自分の目指す音楽を作り出すことのみに集中できる、ありがたい楽器なのであります。

このスーパー・ハープの開拓者が、このブログでも良く登場するジョー・フィリスコ氏なわけですが、彼は始めは、「戦前の物にできるだけ近い、良質のハーモニカを作ろう」 ということで、カスタム・ワークを始めたらしいです。リトル・ウォルターやビッグ・ウォルターなどの、古き良きブルースの時代のハーモニカは今とは比べ物にならないくらい良質だったそうですが、それ以前の戦前のものはもっと質が良かったそうですね。現代のカスタム・ハーモニカはもともとそういう目的から始まったのですが、それがどんどん進化して、現在のスーパー・ハープに至るわけです。

私が始めて吹いたトップ・クラスのカスタム・ハープは、数年前に夫が買ったブラッド・ハリソンのハープでした。この時の衝撃は、未だにはっきりと覚えています。吹いた瞬間、「詐欺だ!」 と思いました。驚くほどエアタイトで、ベンドなんかもするするっと抵抗なくできてしまう。それまで吹いてきたストック・ハープとは全然違うので、同じハーモニカという楽器だとは信じられませんでした。それで、「キム・ウィルソンもデニス・グルンリングも、ゲイリー・プリミチも、ジェリー・ポートノイも、リック・エストリンも、みんなこんなハープ使ってるの?そりゃー上手いはずだよ!詐欺だ!」 と叫んだわけです (実際には、彼らのハープを作っているのは、ハリソンではなくてジョー・フィリスコやリチャード・スレイなのですが、同じトップクラスのカスタム・ハーモニカということで)。まあこれはもちろん冗談で言ったのですが、それほどの衝撃だったということです。

今回私が買ったジョー・スパイアーズのハープは、ハリソンのに比べて、ほんの少し抵抗が強いです。これは感度が悪いという意味ではなくて、例えば車でいうと、ハリソンのはちょっとアクセルを踏んだだけで 「ぎゅん」 と進みますが、スパイアーズのは少し踏み込んで 「ぐわん」 と前に行く感じ。どちらも素晴らしい性能の車であります。夫が愛用しているリチャード・スレイのハープは、どちらかというとハリソンのに近いですが、ちょっと落ち着いた感じがします。もうこれは、吹く人の好みでしかないですね。

先日も書いた通り、時間のかかる作業なので、トップ・カスタマイザー達は随時注文を受け付けているわけではないことが多いです。一定期間内で仕上げられる量の注文だけ受け付けて、その目途がつくまでは次の注文は受け付けないという人が多いようです。それでも、その間、以前に作ったハーモニカのリペアやチューニングなどの依頼が入ったりもするので、なかなか予定通りには行かないみたいですね。夫がスレイのハーモニカ4本を買った際は、仕上がりまでに6ヶ月程かかると言われていたのですが、延びに延びて、結局9ヶ月くらいかかりました。最近ハリソンのハープを買った友人も、当初の予定より2ヶ月ほど長くかかったと言っていました。

そんなわけで、カスタマイズは手作業のため時間がかかりますし、高度なスキルと経験が必要です。そして完成したハープの出来栄えは素晴らしいものなので、高い値段がつくわけです。スパイアーズのハープはハープのモデルやカスタマイズの度合いによって値段は違いますが、私が今回買ったのは、送料込みで305ドル (約29600円) のもの。他のトップ・カスタマイザー達も色々ですが、150ドル (約14700円) から 180ドル (約17600円) くらいが相場のようです。確かにストック・ハープに比べると高いですが、受け取った時点で製品に明らかな問題があれば無料で調整してくれるはずですし (私が買ったスパイアーズのハープは2年間の保証が付いています。)、その後も有料ですが修理や調整やチューニングをしてもらえるので、買い換えの必要はないのです。欠陥があることが普通のストック・ハープと違って、カスタム・ハープはその品質を信頼することができるので、少々高いお金を出してもカスタム・ハープを選ぶという人がこちら (欧米) では多いです。
もちろん、ストック・ハープを使っているプロもいますが、そういう人でも前述のスティーヴ・ベイカーのように自分で手直ししているか、又は欠陥の少ないものを選ぶなどしている場合がほとんどだと思います。

うちの夫も、以前から自分のハープの調整をしていたのですが、最近カスタマイザーとしての仕事を本格的にはじめて、これがなかなかの好評であります。先日も、スレイのハープを愛用している友人から、「アメリカのクラフツマンに負けないくらいの良い仕事だ」 と言われていました。現在は集まった注文をこなすのに手一杯な様ですが、時間ができたらウェブサイトも作る予定だそうなので、その際はこちらで紹介したいと思います。

04.30.09

Joe Spiers Custom Harmonica - その1

カテゴリー: ハーモニカ tagged , に 4:38 pm : Yuki

ジョー・スパイアーズ (Joe Spiers) のハーモニカが届きました!数ヶ月前に注文して、待ちに待っていたカスタム・ハーモニカです。ジョーは、ジェイソン・リッチなどのハーモニカを手がけるトップ・カスタマイザーの一人で、こちら (欧米) で現在のハーモニカ事情を目ざとく追っている人なら、誰でも知っている名前であります。

今回私が買ったのは、マリンバンド (C調) をカスタマイズしたもので、コームは完全防水加工された特製の木製コームが使われています。口当たりがなめらかで非常に吹きやすいです。そして、美しい。なんかもう、オーボエとかクラリネットとか、そういう雰囲気です。ため息出ちゃいます。

spiers_harp

吹いた感想は、「素晴らしい。」 の一言。全ての穴がバランスよく調整されていて、とても吹きやすい。ベンドも余分な力を入れずに楽にできますが、同時にしっかりとした安定感もあります。オーバー・ブロウ / ドローのセッティングもばっちり。それから、私が一番感心したのが、吹いた時のドライブ感。ものすごくパワフルです。カスタム・ハープの利点のひとつは音量を出せるということにありますが、ジョーのハープは音が大きいというだけではなくて、音にパワーがあります (もちろん、そのパワーを引き出せるかどうかは奏者にかかっているわけですが)。それでいて、ものすごく小さく繊細な音を出そうとしてもきちんと対応してくれる。素晴らしいです。

私は様々なポジションを使うので、チューニングは平均律 (equal temperament) でお願いしましたが、コードの響きを少し和らげるために、全ての3度 (2、5、8 ブロウ、3、7 ドロー) を5セントだけ下げてもらいました。これは、リチャード・スレイから教えてもらったコツなのですが、結果、平均律のあの耳障りなコードの響きがかなり和らいで、とっても満足。しかし、ジョーがチューニングした純正律 (just intonation) のコードの響きは本当に素晴らしいということなので、それが体験できなかったことは非常に残念です。

音色は、カスタム・ハープにしてはやや暗めで、深く豊かな音色です。カスタム・ハープって、ものすごく鮮やかで明るい音色のことが多いんですよね。それは音が通るということなので、バンドと一緒に演奏する時は最大の長所となるわけですが、アコースティックのソロとか、デュオの演奏などでは、ちょっと薄く感じてしまうことがあるのも事実です。ジェイソン・リッチは、音色をよりダークにするために、このカスタム・マリンバンドにスペシャル20のカバープレートを付けてもらっているのだそうです。私も注文する際に、そういうオプションがあることを教えてもらったのですが、結局、普通にマリンバンドのカバープレートを付けてもらいました。結果、予想していたよりも明るすぎなかったので、私としては満足でした。

YouTube で、Todd Parrott と Jason Ricci がジョーのハープを使ってデモストレーションをしている映像があるので、興味のある方はご覧下さい。もちろん、ジョーのハーモニカを使えば彼らのように吹けるようになるというわけでは全くありません (笑)。また、ジョーのハーモニカに限らず、カスタム・ハーモニカはベンドが無駄な力なしでできるようになっているので、まだベンドがきちんとできていない初心者は、口先だけで音をベンドしてベンドができたと思い込み、悪い癖がついてしまう危険性もあると思います。私は個人的には、基礎はストック・ハープ (カスタマイズされていない、店で普通に売られているハープ) で学ぶのが良いという気がします。

Joe Spiers Custom Harmonica – Todd Parrott
In ‘SPIER’ ed (A one chord harp tribute to Joe Spiers) Bb

ということで、このように素晴らしいハーモニカなわけですが、もちろんお高い物です。今回、私が買ったものは、アメリカからの送料込みで305ドル。日本円にすると、現在のレートで2万9千600円。ストック・ハープと比べると驚きの値段ですね。貧乏音楽家には正直きついです。しかし、最近うちの夫がカスタマイズの仕事を始めたので、それを見ている私は、カスタマイズにどれほどのスキルが必要で、一本のハープにどれだけの膨大な時間を費やすかがよくわかるのです。今回買ったジョーのハープは、リチャード・スレイやジミー・ゴードン、ブラッド・ハリソンなど、他のトップ・カスタマイザーに比べでも一段と高いのですが、それでもその製品の価値を思うと、決して高すぎる値段ではないと思います。加えて、今回私が買ったハープは、2年間の保証つき。2年の保証期間が終わった後も、有料でメインテナンスはきちんとしてもらえる、一生もののハーモニカです。

次回、カスタム・ハーモニカというものについて、もうちょっと詳しく書きたいと思います。

04.15.09

Marine Band Crossover

カテゴリー: ハーモニカ tagged に 10:48 am : Yuki

少し前に、ハーモニカおたくご用達のメーリングリストで、近々発売されるマリンバンドのニュー・モデルが話題になっていました。その名も、マリンバンド・クロスオーバー (Marine Band Crossover)。

Marine Band Deluxe や Marine Band SBS など、ホーナーの製品開発に深く関わって来たスティーヴ・ベイカー (Steve Baker) が、メーリングリストでこの新製品についての説明をしていました。以下は、スティーヴによる説明の要約ですが (本文ではもっと詳しく説明されていました。)、「~なのだそうです。」 という表現はまどろっこしいので省かせていただきます。

marineband_crossover

スティーヴは18ヶ月前に、密封加工とラミネート加工がされた竹製のコームを試して、その吹いた感触と感度に直ちに惚れ、ダイアトニック・ハープに竹製のコームを使うことをホーナーに勧めました。その後、色々なテストを重ね、去年の秋に、Howard Levy、Joe Filisko、Michael Timler を交えて、ブラインド・テストを含む様々なテストを実施。結果、竹製コームが、プラスティック製や梨木製のコームにかなりの差をつけて、総合的に高い点数を獲得しました。それを受けて、ホーナーはマリンバンドの新しいモデルに竹製コームを使うことを決めたのであります。

チューニングは、スティーヴ (ホーナー) が呼ぶところの “new compromise tuning” です。これは、従来のマリンバンドのチューニング (compromise tuning) と equal temperament の中間に位置するチューニングで、全ての3度 (2、5、8 ブロウ、3、7 ドロー) がequal temperament のそれより6セント低くチューニングされており、更に、ドロー・コードの7度は equal temperament にチューニングされています。結果、スムーズな響きのコードを保ちつつ、ファースト、セカンド、サード・ポジション以外のポジションを演奏する場合にも、ほどよく調和のとれた演奏が可能となる仕上がりになっています。

60ドル (約5,900円) というのはちょっと高いという意見に対しては、確かに安いとは言いがたいけれど、ジョー・フィリスコの 「ホーナーがこれまで作った中で最高のハーモニカ」 という意見を踏まえて、(少なくともスティーヴ自身にとっては) その値段分の価値がある製品であると言っております。

Marine Band Crossover が入手可能となるのは、アメリカではSPAH (ハーモニカ・フェスティバル) の行われる8月中旬、ヨーロッパではその1~2ヶ月前の予定。楽しみですね。

02.27.09

Little Walter の未公開映像 - その後

カテゴリー: ハーモニカ, 本 / DVD / 映画 tagged に 12:11 pm : Yuki

リトル・ウォルター (Little Walter) の未公開映像がDVDで発売されるぞ!という記事を書いたのが去年の10月 (>Little Walter の未公開映像)。

その後どうなったかというと、無事に発売されたようです。YouTube に映像がアップされています。

little_walter_rc

みなさんそれぞれに思うところがあると思いますので、今回は敢えて私自身のコメントは書かないことにします。Enjoy!

Little Walter Live in Germany (1967) #1 – Mean Old World
Little Walter Live in Germany (1967) #2 – Untitled Instrumental
Little Walter Live in Germany (1967) #3 – My Babe

01.29.09

練習を録音してみる

カテゴリー: テクニック, ハープ日記, ハーモニカ tagged に 1:22 am : Yuki

自分の演奏を録音して聴いてみるというのが大切な行為だとは承知していますが、実はそれほど頻繁にはやりません。ものぐさなのもありますが、何より、録音した自分の演奏を聞くのは恥ずかしくて、逃げ出したくなってしまうからであります。これは本業のピアノも同じです。でも、常にそう言ってもいられないので、昨日は練習をちょっと録音してみました。私の練習なんか聞いてもしょうがないという気もしますが、お暇な方はどうぞ。何しろ初心者なのでお聞き苦しい点もありますが、良くないところは反面教師として下さいませ。

Slow blues in G

こうして聞いてみると、4穴ベンドの弱さが浮き彫りになりますね。4穴のベンドは調子がよい時はけっこうしっかりできるのですが、緊張したりすると (録音するのって、誰が聞いているわけでもないのになぜか緊張しますよね。)、グリップが弱くなってしまいます。ということで、今日はいつもの一通りの練習の他に、4穴ベンドの練習を小一時間やりました。意識して練習すると、普段使っていない筋肉が鍛えられているのが感じられてうれしいのであります。最低でもあと一週間はこの練習を続ける予定です。

ちなみに、曲の終わりで使った、2穴と3穴を同時にベンドして上げるというテクニックは、とてもよいベンドの練習になります。両方の穴の音をかすれたり途中で途切れたりせずに最後まで上げ切るのはなかなか大変ですが、これができるようになると、全体にベンドがしやすくなると思います。「ベンドは一応できるけど、なんかいまいちなんだよなあ」 と思っている方は、挑戦してみるとよいかも知れません。ベンドってできていると思っていても、実はまだまだ改善の余地があることが多いんですよね。

その他の反省点としては、3穴ベンドの音色にもっとバリエーションがあった方がいいなとか、いくつかのフレーズはもっとなめらかさがあった方がいいなとか、色々あって挙げるときりがありません。しかし、こういうバッキングなしでやるソロのアドリブって難しいですね。拍やリズムを自分でキープしなければならないし、グルーヴを作り出すのも大変です。更に、しっかりした構成をアドリブで作り上げていかないと、わけのわからない演奏になりかねないとも思います。バッキング・トラックを使った練習も役には立ちますが、ソロの練習も大切だと実感したのでありました。

bushman

今回使ったハープは、Bushman の Delta Frost です。何の変哲もない (カスタマイズなどされていない) 普通のハープであります。日本ではどうなのかわかりませんが、イギリスでは16.99ポンドと安いのがうれしいハープです。Marine Band Deluxe が34.99ポンド、Suzuki Hammond が29.99ポンド、Seydel 1847 が61.50ポンドですから、これは安い! 今のところ、C調はこの子一本でがんばっています。

01.11.09

SEYDEL の練習用CD-ROM

カテゴリー: ハーモニカ, ハーモニカ小物 / お手入れ tagged に 12:25 pm : Yuki

最近の私の練習の友。SEYDEL社の、バッキング・トラックが入ったCD-ROMです。

ピアノとドラムの演奏で、ロック・ブルース、シカゴ・シャッフル、ルンバ、モジョ・スタイルなど、11の異なるグルーヴの曲が収められています。とまあ、ここまでならあまり珍しくもないのですが、この製品の優れているところは、全てのトラックを12の違うキーで演奏できるところにあります。どのハープでもどのポジションでもOKで、とっても便利です。こういうのがずっと欲しかったので、すごくうれしい。私は去年の暮れあたりから、必要に迫られて (この事情は長いので、またの機会に説明する予定です。)、ブルースでよく使われる 1st, 2nd, 3rd ポジションの他に、4th, 5th, 6th, 11th, 12th ポジションも練習しているので、毎日の練習に使っています。

CD-ROMなので、操作方法が視覚的にわかりやすいところも良いと思います。
各トラックは、mp3ファイルとして、パソコンやmp3プレーヤーで演奏することも可能です。

seydal_bpp

難を言えば、全体に明るい曲調が多いです。これは曲のキーがメジャーかマイナーかということではなくて、例えば、シカゴ・シャッフルなんかも、ごりごりのブルージーな演奏ではなくて、ブギウギ調の明るい仕上がりとなっています。理論的に言えば、ブルース・スケールではなくて、メジャー・ペンタトニック・スケールを主に使った演奏です。全体にそんな感じなので、「このピアニストは、ブギウギ・プレイヤーなのかな?」 と思ってちょっと調べてみたら、やはりブギウギ弾きのようです。上手いですけど、「今日はファースト・ポジションで思いっきりダーティーな演奏の練習をするぜ!」 というような時にはちょっと合わないかも、と思います。まあそこは、「練習用」 と思って、あまり気にしないようにして練習するしかないですね。

それにしても SEYDEL は、画期的な製品を作るので、いつも感心します。社員は全部で22人という小さな会社ですが、だからこそできることもあるのかもしれません。ブリストルで行われるハーモニカ・フェスティバルに、毎年ドイツから社長が直々やって来て、プロモーションやセールスをするような、良い会社です。

プロモーションのやり方も、きれいなブロンドのお姉さんやかわいい男の子がハーモニカを持っている写真が使われていてかっこいいです。上の写真のステッカーと缶バッジも無料で配られていました。

SEYDEL のサイトで、このCD-ROMのサンプルを見ることができます (”Check it out online now” というところの下をクリックすると、ウィンドウが開きます。 )
SEYDEL Soundcheck Vol. 2 – Blues Playback Pack

09.10.08

カスタム・ハーモニカ - その2 (West Weston のハープ)

カテゴリー: ハーモニカ tagged に 3:25 pm : Yuki

ウェスト・ウェストン (West Weston) のカスタム・ハーモニカをオーダーしたので、届いたらこちらで報告します、と書いたのが先月のこと (>West Weston)。報告せずに一ヶ月が経ってしまいました。実はあの記事を書いてからすぐに届いていたのですが、なかなか文章がまとまらず (大したことのない文章とはいえ、一応いろいろと考えて書いているので、まとめるのにけっこう時間がかかるのです。)、今日まで来てしまいました。ウェストンのハープについて書くには、まず 「カスタム・ハーモニカがどういうものなのか」 から書かなくてはなあ、、、などと考えているうちに、延ばし延ばしになってしまったのです。何が言いたいのかというと、先日書いたカスタム・ハーモニカについての記事は、今日の前置きだったということです。読んでいない方は、こちらをどうぞ。
カスタム・ハーモニカ - その1

先日の記事では有名なハーモニカ・カスタマイザーの名を挙げましたが、その他にもカスタマイズや修理を行っている職人はたくさんいます。カスタマイザーと一言で言っても、非常に細かい作業をして仕上げる人から、ちょっと吹きやすくするぐらいの人まで、色々と存在するのです。ハーピストでも、自分に合うようにハーモニカをいじる人はけっこういますね。私はまだやったことがないのですが、夫はたまに自分のハープをチューニングをしたり、吹きやすくしたりしているみたいです。見たところ、ものすごく細かい作業で時間もかかるので、「これは高くつくはずだわ~」 と思います。

さて、肝心のウェストンのハープは、Hohner の マリンバンド (Marine Band) をカスタマイズしたものです。コームは角が取れて丸みがあり、口当たりよく仕上がっています。木製のコームは長く吹くと水分で膨れ上がってしまうことが多いのですが、それを防止する加工もされています。更に、従来のマリンバンドは釘で止めてあるので、自分で洗ったりチューニングをしたりするのが困難でしたが、ウェストンのハープはそれが可能なように、釘をねじに替えてあります。写真は、上がウェストンのハープ、下が普通のマリンバンド。

リードの作業としては、チューニングとギャッピングがされています。ギャッピングというのは簡単に言うと、リードとリードプレートの間の隙間を調節して、吹いた時の感度を変える作業です。ハーモニカ・カスタマイズにおいて、最も重要な作業ともいえると思います。ウェストンは彼自身がオーバー・ブロウを演奏で使わないため、オーバー・ブロウのセッティングはされていません。

吹いた感じは、チューニングも気に入ったし、感度も良くて吹きやすいです。3穴が私にはちょっと重いのですが、ウェストン自身が優れた奏者なので、これは彼の好みなのだろうな、と思います。それから、コームにコーティングがしていないので、速く動く時やタング・トリルをする時にちょっと動きにくいと感じますが、これも慣れでカバーできると思います。

音色は、ワイルドでブルージー。マリンバンドをアップグレードしたものに、マリンバンド・デラックス (Marine Band Deluxe) がありますが、ウェストンのハープはデラックスよりもマリンバンドに近く、良い意味での粗さがあると感じます。先日の記事にも書いたように、近年のマリンバンドは色々と問題があるのですが、それでもこのマリンバンドの音色がやはり好きだという人にはぴったりのハープだと思います。ウェストンのハープを使っているポール・ラム (Paul Lamb) は、60年代のマリンバンドに近い楽器を捜し求めて、ウェストンのハープにたどり着いたのだと言っていました。

値段は £36 (約6800円)。カスタム・ハープにしては決して高くはない値段です。私が普段よく使うマリンバンド・デラックスは £34.99 (約6600円) ですから、大差ないですね。更に、£16 (約3000円) で修理やリードの交換もしてもらえるので、長い目で見ると安上がりになります。後々のケアもしてもらえるのが、カスタム・ハーモニカのよいところです。

ウェスト・ウェストンのカスタム・ハープのサイトはこちら (サウンド・サンプルが聞けます)。
West Weston’s Custom ’Marine Band’ Harmonicas

ウェスト・ウェストンのサイトはこちら (ウェストのかっこいい演奏が聞けます)。
West Weston

09.09.08

カスタム・ハーモニカ

カテゴリー: ハーモニカ tagged , , , に 1:36 am : Yuki

より良い演奏を無駄な労力なしでできるように手が加えられたハーモニカを、カスタム・ハーモニカといいます。アメリカやヨーロッパでは、プロのハーピストやプロ並の演奏をする人 (または目指す人) は、カスタマイズされたハーモニカを使っていることが多いです (手直しされていないハーモニカをそのまま使う人ももちろんいます)。私は日本の事情はよくわからないのですが、吉田ユーシンさんなんかがカスタマイズをやっているみたいですね。

「どうしてカスタマイズなんかが必要なんだ。ソニー・ボーイ・ウィリアムソン (両者) やリトル・ウォルター、ビッグ・ウォルターなどの往年のプレイヤーは、みんな Marine Band をそのまま使っていたじゃないか」 という疑問が湧いてくるわけですが、その頃の Marine Band は近年の物とは比べ物にならないくらい質が良かったのです。大量生産されるようになったのと、古い機械を長年変えずに使い続けて来たのとで、近年の Marine Band は質がぐっと下がってしまったらしいです。しかし、Hohner で働く知人によると、数年前に機械に入れ替えをしたので、最近はまた質が上がって、60年代に次ぐ質の良さに戻ったのだということでした。

もともと市販のハーモニカというのはどれも少しずつ癖があって、完璧な物は稀なのです。物によって、「2穴が鳴りにくいな」 とか、「3穴がすかすかするな」 とか、難点があるのが当たり前というくらいです。特に Marine Band は当たりはずれが多い楽器だと言われます。Marine Band をそのまま使っているというプロの人もいますが、そういう人でも、「はずれ」 の Marine Band は使わないはずだと思います。それから、オーバー・ブロウなどを演奏で使う人は、それがしやすいように手を加えたハーモニカを好む様ですね。

さて、カスタム・ハーモニカの職人として有名なのが、以前紹介したジョー・フィリスコ (>Joe Filisco)。キム・ウィルソン (Kim Wilson)、デニス・グルンリング (>Dennis Gruenling)、ジェリー・ポートノイ (>Jerry Portnoy)、ハワード・リーヴィー (Howard Levey) など、トップ・プレイヤー達のハーモニカをカスタマイズしている人です。ジョー自身もすばらしい演奏をするプレイヤーであります。

他には、リチャード・スレイ (Richard Sleigh)、ジェームス・ゴードン (James Gordon)、ブラッド・ハリスン (Brad Harrison)、ジョー・スパイアーズ (Joe Spiers) などが有名どころでしょうか。前述のジョー・フィリスコをはじめ、この方達はもう、魔法のような仕事をすることで名が知られています。各プレイヤーのニーズに合わせて、膨大な時間をかけてハーモニカを仕上げます (当然値段もお高いです)。私は夫が持っているブラッド・ハリスンのハープをちょっと試し吹きしたことがありますが、これは大きな衝撃でした。驚くほど気密性が高くて感度が良く、同じハーモニカであるとは信じられないほどでした。でも逆に、感度の良いハープというのは、テクニックがしっかりしていないと使いこなすのはむずかしいなあ、と思ったのも事実です。

カスタム・ハーモニカと普通のハーモニカを吹き比べする、というのを、我らがジェイソン・リッチ (Jason Ricci) がやっております。
Custom Harmonica Vs. Out of Box Harmonica 007

彼が吹き比べをしているのは次の3つのハーモニカ。

1.普通の Marine Band
2.ジョー・スピアーズがカスタマイズした戦前 (1920年代) の Marine Band
3.ジェイソン自身がカスタマイズした Golden Melody

聞き比べてみると、確かに、なめらかで気密性の高いカスタム・ハープに比べて、普通の Marine Band は leaky (空気が漏れやすい) ですね。音量もカスタム・ハープに比べると小さいです。ジェイソンは 「自分は、普通の Marine Band をそのままギグで使うことは絶対にない」 と言っていますね。それでも彼が吹くと、普通の Marine Band もさすがにいい音がしていると思います。

ついでに、ジェイソンがカスタム・ハープを使ってオーバー・ブロウをして見せる映像というのもあります。
Custom Harmonicas Part 2/bending overblows 008

07.03.08

James CottonとSEYDEL

カテゴリー: ハーモニカ, ハーモニカ・プレイヤー tagged , に 10:21 am : Yuki

このところ、サイドル社(C.A. Seydel Söhne)の製品についてばかり書いていたので(>SEYDEL 1847>BIG SIX Blues)、今日は違うことを書こう!と思っていたのですが、サイドルのページでニュースがあったので、本日もまたサイドルな話です。

あのジェームス・コットン(James Cotton)が、サイドルのアーティスト・ページに加わりました。
コットンは、今年の3月に、リトル・ウォルター(Little Walter)がロックの殿堂入りをした際に、そのセレモニーで演奏したのですが、その時はサイドル社のスティール・リードを使ったのだそうです。現在製作中のニューアルバムでも、SEYDEL 1847を使っているのだそうな。写真はサイドルのハープを持つコットン。

サイドルのオフィシャル・サイトでは、このことを大々的にニュースとして発表していました。まあ、ジェームス・コットンといえば、生きるブルース・レジェンドですから、誇り高いことなのでしょう。私は2005年にイギリスに来た際にライブを見に行きましたが、すごく楽しそうにハーモニカを吹いていました。それにしても、最近、サイドルはめきめきと力をつけていますね。

サイドルのコットンについてのページはこちら
>Superharps united: Blues Legend James Cotton becomes SEYDEL endorsee

06.30.08

SEYDEL BIG SIX Blues

カテゴリー: ハーモニカ tagged に 3:52 pm : Yuki

先日、サイドル社のSEYDEL 1847について書いたので(>SEYDEL 1847)、そのついでに、今日はBIG SIX Bluesについて書きたいと思います。ダイアトニック・ハープの1穴から6穴までを使った、小さなハープです。マリン・バンドと比べると、こんな感じ。

通常10穴のところが6穴になっているだけで、あとは普通のダイアトニックと同じです。小さいといっても、ハーモニカの質はおもちゃみたいな感じではなくて、かなりしっかりとしています。ホールの大きさもダイアトニックと同じ。小さいハーモニカというのは色々出ていますが、ホールの大きさを変えずに小さくするというのは、これまでなかったアイディアだと思います。だいたい、ブルース・ハープのセカンド・ポジションでよく使うのはこの6穴なので、穴の数が減ってもかなりのことができてしまいます。

このハープのよいところは、なんといっても、ハンド・テクニックが簡単にできるところです。私は手が小さいので、10ホールズだと完全に空気が漏れるのを防ぐのは不可能なのですが、このBIG SIXでは、それが簡単にできてしまうのです。歴代のハーピストの写真を見ると、クロマティックがダイアトニックに見えるくらい手が大きい人が多いです。手の中にすっぽりと収まるBIG SIXを使っていると、「ソニー・ボーイ二世にとって、ダイアトニックはこんな感じだったのかなあ、、、」などと思います。

サイドルはBIG SIXのプロモーションに力を入れていて、このハープは首から下げられるストラップ付きというおしゃれなデザインで、更にかわいい缶に入っています。この缶はマイク代わりに手に持って、カップ奏法にも使えるという優れもの。

BIG SIX Bluesの他にBIG SIX Folkというのも出ていて、こちらはダイアトニックの4穴から9穴までを使った構造なのだそうです。私は別にサイドルの宣伝をしようとしているわけではないのですが、良い製品を作る会社ががんばっているのを見るのは、うれしいことであります。

サイドル社のオフィシャル・ページはこちら
>SEYDEL HARMONICAS

BIG SIXについてはこちら
>BIG SIX

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