2008/07/08

Joe Filisko

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged , , , @ 11:05 pm by Yuki

ヨーロッパのハープ・プレイヤー達と、「モダン・ハープ・プレイヤーの中で、一番好きな人は?」 という話をするとき、必ずと言っていいほど耳にするのが、ジョー・フィリスコ (Joe Filisko) という名前である。「ジョーは今までに出逢った、最高の教師だ」 と言う人や、ジョーは俺の harmonica god だ」と言う人が、必ず一人はいる。日本ではあまり名が知られていないが、アメリカやヨーロッパで現在のハーモニカ事情を追っている人なら、誰でも知っている名前である。

ジョー・フィリスコといえば、カスタム・ハーモニカを作るハーモニカ職人として有名である。彼の作るハーモニカは 「ハーモニカのストラディバリウス」 と言われ、キム・ウィルソン (Kim Wilson) やデニス・グルンリング (>Dennis Gruenling)、ジェリー・ポートノイ (Jerry Portnoy)、ハワード・リーヴィー (Howard Levey)、故ゲイリー・プリミッチ (Gary Primich)、など、現在活躍するトップ・プレイヤー達のハープは皆、ジョーがカスタマイズしている。ハーモニカ・カスタマイザーとして、この人を上回る者がいないことは、誰もが認める事実である。しかし、「クラフツマンとしてのジョー・フィリスコ」 は、あくまで彼の一面でしかない。教師として、また、プレイヤーとしても一流で、その人柄の良さも手伝って、人々から親しまれ、尊敬されている。

ジョー・フィリスコの演奏が人々の心をつかむ理由は、それが、ハーモニカという楽器への愛情と敬意に満ちているからだろうと思う。ハーピストに限らず、ミュージシャンというのは、概して演奏にエゴを押し出すことが多い。もともと音楽というものは自己表現の手段なのであるから、これはまあ当然のことなのだが、ジョーの場合は少し違う。彼の演奏において、一番に来るものはエゴではなくて、ハーモニカである。彼は、ハーモニカという楽器を知り尽くしていて、この楽器の持つ美点を最大限に引き出すことに勤めているように見える。しかし、そうすることによって、奏でられる音楽はジョー・フィリスコにしか作り出せない音楽となるのである。

キム・ウィルソン (Kim Wilson) やデニス・グルンリング (Dennis Gruenling) など、モダン・ハーピストで好きな人達はたくさんいるけれど、ジョーほどソウルフルな演奏をする人はいないような気がする。

映像は、2007年にドイツで行われたハーモニカ・フェスティバルでのコンサートの模様。ギターはエリック・ノーデン (Eric Norden)。ハーモニカという楽器が、更には、音楽というものがこの世に存在することを感謝したくなるような演奏である。

私は2年前に、ブリストルで行われたハーモニカ・フェスティバルでジョーにお会いしたのだが、彼の演奏する音楽そのもののような人柄であった。

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