2008/07/21

魅惑のホール3

Posted in テクニック tagged , , @ 11:26 pm by Yuki

「ブルース・ハープは吹くのではなくて、吸って演奏する」 という話を聞いたことのある人は少なくないと思います。ブルースの演奏においては、ブロウ音よりもドロー音の方が、表情に富んだ音色を持ちます。そして、そのドロー音よりも、更に表情豊かでブルージーな音色を持つのが、ベンド (ドロー・ベンド) 音です。ブルースにおいてのベンド音は、通常のブロウとドローでは得られない音程を補うだけではなく、ブルース的な 「色」 を演奏に加える、重要な役割を持つのであります。

今日は、このベンド音が3つもある3番穴についての話です。この穴はすごいです。演奏する人によっては、この穴だけでブルースは演奏できてしまうというくらいの表現力があります。往年のハープ・プレイヤーは皆、この3番穴を駆使しているし、現在のプレイヤーでも上手いと思う人は皆、3番穴の使い方に長けています。 逆に言うと、3番穴を上手く使いこなせるかどうかは、素人と玄人を分けるポイントのひとつなのです。

表情豊かなブルースを演奏するために、この3番穴は欠かせないのですが、これを自由自在に使えるようになるのは至難の業です。まず、

一.3つのベンド音を、正しいピッチと良い音色で鳴らすことができる

というのは大前提で、その後、

二.ブルー・ノートを含む、半音と半音の間の微妙な音程 (microtone = 微分音) をコントロールすることができる

三.音をスライドしたり、第1ベンド音にスロート・ビブラート (喉でするビブラート) をかけたりなど、音に表情をつけることができる

という段階を得て、やっと、

四.上記の3つを、効果的にセンス良くインプロヴィゼイション (アドリブ / 即興) に生かして行く

という、なんとも長い道のりです。

3番穴を使いこなすには、テクニック的な面の練習と同時に、色々なプレイヤーの演奏を聴いて、彼らがこの穴を使ってどのような表現をしているかを、耳をそばだてて聴くと良いと思います。泣いたり、怒ったり、囁きかけたり、じらしたり、存在を主張したり、、、様々なハーピストが、3番穴を使って本当に色々な表現をしています。今日も、ビッグ・ウォルター (Big Walter Horton) の、第1ベンドにかけられた美しいスロート・ビブラートや、半音と半音の間の微妙な音程を行ったり来たりするソロを聴いて、鳥肌が立ってしまった私です。

イギリスのハープ・プレイヤー、ジャイルス・キング (Giles King) は、この3番穴で奥さんを口説いたらしいです。彼が3番穴を吹いた (正確には吸った) 瞬間、ライブを観に来ていた彼女は何か特別なものを感じたのだそうです。演奏に表現力が増して、更に、素敵な女性 (または男性) を口説けてしまうなんて、言うことなしですね。みなさん、がんばって3番穴を上手く使いこなせるようになりましょう!

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