2008/10/21

Little Walter と Kim Wilson

Posted in ハーモニカ・プレイヤー, CD tagged , , , @ 11:29 pm by Yuki

キム・ウィルソン (Kim Wilson) は、モダン・ハーピストの中で、私が最高に好きなハーピストの一人である。本当に素晴らしいプレイヤーだから、私に限らず、そういう人は多いと思う。それでも、批判というのはどこにでも存在するもので、キムをリトル・ウォルター (Little Walter) のコピーだとかイミテーターだとか言う人も存在する。要するに、「リトル・ウォルターの真似してるだけじゃん」 ということである。

キムを自分のスタイルをしっかりと持つトップ・プレイヤーだと思っている私は、彼をただのイミテーターと呼ぶのはナンセンスだと思うけれど、キムがリトル・ウォルターに大きな影響を受けているのは確かである。ちょっと聞いただけではあまりわからないが、二人の演奏を聞きこめば聞きこむほど、キムがリトル・ウォルターから受けた影響が明らかになってくる。まず、明るくて軽めで、ホーンのような音色。それから、フレージングと、メロディを構成するリズム。このフレージングやリズムの影響は、多くの場合、微妙に現れているので、聞き込まないと気がつかないことが多い。しかし、二人の演奏をあまり聞いたことのない人でも、キムがウォルターに影響を受けているということがはっきりとわかる曲がある。ジミー・ロジャース (Jimmy Rogers) が演奏する “Sloppy Drunk” という曲である。YouTube でリトル・ウォルターがハープを吹いているこの曲を聴くことができる。
Jimmy Rogers – Sloppy Drunk

キムは、ジミー・ロジャースの “Ludella” というアルバムに収められたこの曲でハープを吹いていて、これがまた、リトル・ウォルターの影響を受けまくった演奏をしている。残念ながら YouTube ではキムのこの演奏が見つからなかったのだけれど、アルバムをお持ちの方は聞き比べてみるとおもしろいと思う。(ちなみに “Ludella” はすごくかっこいいアルバムなので、キムが好きな人は買っても損はしないでしょう。)

もちろん異論はあるかもしれないけれど、この曲に関しては、私はリトル・ウォルターの演奏の方が好きだ。ハープというのは、バッキング・アップをするのがとても難しい楽器だと思う。他の楽器と演奏する場合、音が際立つので、自分のソロが回ってきた時は良いのだけれど、それ以外の時、他の楽器やヴォーカルの邪魔にならずにバッキング・アップをするのが非常に難しい。特に、ハープの演奏するラインはヴォーカル・ラインと近いこともあって、ヴォーカルを妨げない演奏をするのは特に困難である。これが最高に上手いのが、リトル・ウォルターとビッグ・ウォルター (Big Walter Horton) で、私は常々、バッキング・アップに関しては、この二人の右に出るものはいないと感じている。この “Sloppy Drunk” でも、リトル・ウォルターは始終ヴォーカルにからんでいるけれど、それが決してうるさくなく、邪魔でもなく、逆にこの曲の重要な部分となっているのである。

人から聞いた話で、真実かどうかは定かではないのだけれど、キムは、「リトル・ウォルターは自分よりも上手い」 と言っているそうである。私としては、「そんなことはない。ブルース・ハープの歴史の中では、キム・ウィルソンだってリトル・ウォルターと同じくらい重要なハーピストだ」 と思うのだが、本当に上手い人というのは謙虚さをいつも心に持っているものなのだろう。

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