2009/01/20

身体で感じて演奏する

Posted in テクニック tagged , @ 12:02 am by Yuki

昨晩は、エディ・マーティン (Eddie Martin) が、ゲストとして夫 (ハープ吹き) と私 (知らない方、忘れている方もいらっしゃるかもしれませんが、本業はあくまでピアノ弾き) をライブに呼んでくれたので、彼のバンドに加わって演奏しました。エディはイギリスが誇るブルース・マンです。以前紹介したことがあるので、知らない方はこちらの過去記事をどうぞ。
Eddie Martin

eddie_martin_lp

エディのような大物と演奏するのはとても刺激があるし、私も数曲リードさせてもらったりして楽しかったのですが・・・しかし、エディのバンドは相変わらず音がでかい。先日会った際に、最近はなるべく音量を落とすようにしていると言っていたのですが、それでもやはりでかい。ドラマーの音が大きいので、それに比例してバンド全体の音量が上がっている感じを受けました。うちのバンドは音量を上げすぎないことを常に心がけているので、こういうステージ・ボリュームが高い中で演奏するのは、私としては理想のコンディションではありません。しかも昨日は、真後ろにドラム、斜め後ろにベースアンプがあるというピアノの配置。モニターの音量をぎりぎりまで上げても、自分の音が聞こえにくいという状況でした。

ステージで自分の音が聞こえないというのはとてもやりにくいし、全く好きではありません。でもですね、ピアノだと、よく自分の音が聞こえなくても弾けるんですよね。「こういうふうに身体をつかって、こういうタッチで弾いたら、こういう音が出る」 というのを身体で覚えているし、イメージした音は頭の中で全て鳴るので、実際に音が聞こえなくても弾けるのです。極端な話をすると、電子ピアノを無音で (スピーカーやヘッドフォンを通さずに) 弾いたものを録音してみたとしたら、弾きこんだ曲ならば、そこそこの演奏にはなると思います。

ピアノという楽器は、一度出してしまった音は修正できません。ハーモニカや多くの管・弦楽器は、音を出してしまった後からでも音色を立て直すことができますが、ピアノはそれができないので、鍵盤に触れて音を出すまでが勝負なのです。ですから、熟練したピアニストなら誰でも、身体 (指だけでは決してない) の使い方と音のイメージを密着させた演奏法を身につけているはずだと思います。

ハーモニカはピッチ (音程) を自分でコントロールしなくてはならないので、ピッチ調整は調律師任せであるピアノとは若干違いますが、それでも身体で覚えていれば音が聞こえにくくても演奏できるようです。「ようです」 と書いたのは、私自身、まだできていないからであります。ジャムで演奏する際、自分の音が聞こえないと、どの音を吹いているのかさえよくわからなくなることがあります (恥)。更に、ついつい強く吹きすぎてしまい、その結果、音程が下がったり、音色が荒くなったりもします。それでも聞こえていないから、気づかないんですよね。後で夫に指摘されて、落ちこむ羽目となるわけです。

夫に言わせると、「音が聞こえなくても空気の流れを感じることができるし、どういう音が出ているのかを口や身体で感じて吹くことができる」 のだそうな。確かに彼は、大音量のジャムでも、昨日のようなステージ設定でも (夫の隣には、エディのでかいギターアンプがありました。) 強く吹きすぎることなく演奏できるし、音も客席にはしっかり通っているんですよね。デニス・グルンリング (Dennis Gruenling) もワークショップで、「自分の音が聞こえないって言う人は多いけど、身体で感じればきちんと演奏できる」 と言っておりました。

これは、「音を聴かなくてもよい」 ということではないので、どうか誤解しないで下さいね。演奏において、自分の音、更に他の奏者の音をよく聴くことは、とても大切ですし、ステージでは自分の音と他の人の音がバランスよく聞こえるのが理想です。ここで私が言いたいのは、熟練した奏者は、身体の使い方と音色をいつも意識して演奏しているので、音がよく聞こえない状況でも演奏をすることが可能であるということです。そのように楽器を自分のものにするためには、「上手く吹けている時、良い音がしている時は身体のどこを使っているのか。どのように身体で感じているのか」 を日々の練習で意識して、少しずつ身体に覚えこませていくしかないのだと思います。地味な作業ですね。

私はハープに関しては、まだまだ 「身体で感じて吹く」 というレベルではありません。でも考えてみたら、ピアノはもう30年近くも弾いていて、それでもまだ毎日練習している状態です。練習を始めて3年にも達していないハープが簡単に行かないのは当然ですよね。楽器の習得は、時間と経験を要するものなんだよなあ、とつくづく感じます。

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6件のコメント »

  1. ぺたぺた said,

    > しかし、エディのバンドは相変わらず音がでかい。先日会った際に、最近はなるべく音量を落とすようにしていると言っていたのですが、それでもやはりでかい。
    「でかい」の連呼に、思わず笑ってしまいました。
    音がでかいときのびっくりさは、よ~~~っくわかります。(笑)
    ひょええええ~~~!ってなりますよね(わはは)

    確かに大音量って、苦手といえば苦手、でかくしすぎないのってベストだと思います。
    でも、実は嫌いじゃなかったりします。
    あまりにも長時間だとつらいですけどね・・・(^^;)

    ゆきさんも演奏しながら「でかすぎだー!」ときっと心の中で叫んでいたんでしょうね(笑)
    笑い事じゃないけど、面白く読んでしまいました。

  2. noginogi said,

    こんにちは。
    自分の音が聞こえないと辛いのは、ハーモニカよりヴォーカルだと僕は常々感じていて、僕が未熟なだけかもしれませんが、声と楽器の違いを感じます。YUKIさんは世代的にご存知かどうか、鶴田浩二みたいになってしますのです。聞き耳を立てるような、耳を掌で囲む仕草です。
    僕の場合、ハーモニカは自分より、やはり客席に届きにくくなるのが気になります。聞こえてるよ、と言われても、リードを取った時にどれくらい聞こえてた?と思います。この辺はミキシング卓の前の人の力量も大きく関わるのですが。昔、ブルース系のハードロックバンドに呼ばれた時は、身体で音を感じるどころか、ひたすら耳が痛くて動悸までしてきてライブ中何度も立ち尽くしてました・・・。終演後「遠慮がちなハーモニカ」、と言われました。遠慮したわけではなかったのですが・・・悲しい思い出です。

  3. ogitetsu said,

    YUKIさんの旦那さん、大変なことをサラリと言ってますね。稚拙なハーモニカはさて置き、自分のギターの演奏をついつい思い起こしてしまった次第です。
    僕はフィンガーピッキングで弾くのですが、ついつい力を入れてピッキングしてしまうと、音の切れ、というかリズムが悪くなります。歌っていて、興奮しやすい性質なので、ついつい力みが入るのですね。

    ところで、夜など静かに寛いで弾いたりすると、「おや、これは」という音色が出ることがある… 僕ね、ロバート・ジョンソンが夜に墓場で練習したという逸話を信じます。きっと、彼もまだ下手な時分は、力みが有りすぎたんだと思います。静かに、自分の出している音色を聞くと言うのは、僕のような初心者には大切です。

    と言うことで、「夜」は友達で有ります。

    おぎ

  4. Yuki said,

    >ぺたぺたさん

    そうです。「でかっ!でかっ!でかいよ~!」 と弾きながら思っておりました。

    個人的には、ブルースは、会場を満たす音量ぐらいで十分だ思います。聴いている人の身体にちょっと響くくらいの音量が一番心地よいです。ハードロックとかになるとまた別ですけどね。

  5. Yuki said,

    >のぎのぎさん

    鶴田浩二さんって知らなかったので、つい YouTube で見ちゃったじゃないですか。「傷だらけの人生」 の映像を見てびっくり!昔、忌野清志郎がやっていたザ・タイマーズというバンドの曲で、「ロックン仁義」 というのがあるんですが、曲の途中で、「古い奴だとお思いでしょうが・・・」 と始まる台詞を清志郎が言うんです。この曲からの引用だったんですね。大発見でした。って、ぜんぜん関係ない話ですみません。

    私も声量はないし、歌は決して上手くないので、自分の声が聞こえないと非常に歌いにくいです。ピアノを弾きながらだと鶴田さんの様にもできないですしね・・・。

    客席に聞こえる音量は、サウンドマンと事前に話をするくらいはできますけど、後は 「きちんと聞こえていますように」 と祈ることぐらいしかできないですよね。ライブの後に、客席で聞いていた人に、「音が小さかった」 と言われるほど、がくっと来ることはないです。
    昨晩は、私がリードした曲ではエディは素晴らしいバッキングをしてくれたので、すごく弾きやすかったです。

    大きすぎる音量のギグって、気持ち悪くなりますよね。私はいつもミュージシャン用のイヤープラグ持参です。ハーモニカは普通のイヤープラグだと頭に響きすぎるので、夫はヴォーカリストなんかが使うカスタムメイドの物を使っているようです。

  6. Yuki said,

    >オギさん

    ギターは、「音色は指先にある」 って言いますもんね。ギタリスト (ハーピストもそうですけど) って機材に凝ることが多いですが、本当に音色を決めるのはその弾き方なのだという意味で。 まあ、機材選びも大切ではありますけどね。

    興奮して力が入るというのは、すごくよくわかります。私もピアノではだいぶ抜けるようになりましたが、ハープはやっぱり力が入ってしまうことが多いです。

    小さな音での練習って大切ですよね。私も、ピアノでもハープでも、「可能な限り小さな音で演奏する」 という練習を取り入れています。弱音で演奏するとなると、嫌でも耳を澄まさなくてはならないし、きちんとしたコントロールが身についていないとできませんよね。大きな音で弾くよりも数倍難しいと思います。


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