2009/01/22

Hymn to Freedom

Posted in ハーモニカ以外 tagged @ 3:31 pm by Yuki

オスカー・ピーターソン (Oscar Peterson) が残した名曲、名演奏は数多くあるけれど、その中であえて一曲挙げて、と誰かに言われたとしたら、たぶん私は “Hymn to Freedom” (「自由への賛歌」) と答えるだろうと思う。この曲が収められたアルバム “Night Train” は全編にわたってブルージーで、普段あまりジャズを聞かない人でも、ブルースが好きならば大いに楽しめるお勧めの一枚である。

peterson_night_train3

初めてこの “Hymn to Freedom” を聴いた時、全身の血が泡立って、鳥肌が立った。何か特別なオーラのようなものがあると思った。なぜかわからないけれど、「この曲は特別な曲なんだ」 と確信した。それからしばらく経って、オスカー・ピーターソンがキング牧師 (マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、Martin Luther King, Jr.) にインスパイアされてこの曲を作ったのだと知った時、「ああそうか、そういうことだったのか。だからこの曲はこんなにも特別なんだ」と納得した。歌詞があるわけでもないのに、作る側の意思が受け取る側に伝わる音楽の力というものを、改めて感じた瞬間だった。今でもこの曲を聴くたびに- 特にピーターソンが両手のトレモロでクレッシェンドしていくところで - 全身の血が沸騰するような感覚に襲われる。

oscar_peterson_bs

先日アメリカでは、オバマ氏が大統領に就任したが、その式典では、この “Hymn to Freedom” が合唱団によって歌われた。公民権運動が行われたのが、1955年から1968年。オスカー・ピーターソンが “Hymn to Freedom” を録音したのが1962年。そして今、アフリカ系アメリカ人が大統領となる時代が来たのである。この曲が、このような舞台で演奏される時代が来たのだ。人々がオバマ大統領に期待を寄せるのは、彼がアフロ・アメリカンであるからということだけが理由であるべきでないとは思う。しかし、そのことが歴史的に大きな意味を持つのも、やはり確固たる事実である。
式典では、アレサ・フランクリン (Aretha Franklin) も “My Country, ‘Tis of Thee” を歌った。アレサは、キング牧師の葬式でもこの曲を歌ったのだという。
Aretha Franklin – Sings ‘America’ My Country Tis Of Thee

aretha_franklin_inauguration

残念ながら、YouTube では “Hyms to Freedom” の良さが伝わる映像が見つからなかった。オスカー・ピーターソンは、脳梗塞で左手がうまく使えなくなったということもあり、非常に悲しいことではあるけれど、晩年の演奏はぱっとしない。私は亡くなる前の年にライブを見に行ったのだが、その時も演奏の衰えは明らかで、悲しくなってしまった。そういう訳で、今回は、まだばりばり弾いていた頃の - クリスプで、力強く、エレガントな演奏をしていた頃の - ピーターソンの演奏をいくつか紹介したい。
Oscar’s boogie
Oscar Peterson: Take the “A” Train
Oscar Peterson – Fly Me To The Moon

“Hymn to Freedom” は、ぜひアルバムに収められたものを聴いていただきたいと思う。切なる祈りと熱い思いが込められた、素晴らしい演奏である。

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3件のコメント »

  1. ogitetsu said,

    Yukiさんもオバマの話題ですね。

    アレサは、あの零下の温度の中、よくこれだけ歌い切りました。さすがです。
    アメリカの大地で、這いつくばりながら、地味で辛い労働を行い、辛酸を舐めて来た数多の人々(黒人だけでなく貧しい白人や移民達)の霊への鎮魂となったのではないでしょうか。

    オバマと言う人は、白人とアフリカ人の混血と言うわけで、南部で奴隷を経験した人達の血は入っていないわけで、同じ黒人から、「あいつはニガーじゃねぇ」と陰口を叩かれたことも有りますが、考えて見れば奥さんがシカゴのサウスサイドの労働者階級だから、彼女から学ぶ事も有るでしょうね。

    彼が黒人であると言うことを大きく取り沙汰されるよりも、彼の就任演説でも言われた様に、彼が多くの人種や宗教が集まって出来た米国の多様性のシンボルとして代表してくれていれば良いと思うのです。

    おぎ

  2. Yuki said,

    >オギさん

    そうですね。「所詮、中身は白人のエリートじゃないか」 というような声もあった中、ミシェルさんの存在が、彼の印象を良くする手助けをした部分もあったのではないかという気もします。

    オバマ氏が大統領に選ばれたという事実と彼の演説は、アメリカだけではなくて、世界中の多くの人に希望を与えたと思います。イギリスでもかなり盛り上がっていましたし、こういうことには関心が薄くなりがちな日本でも盛り上がっていたみたいですね。オスカー・ピーターソンはカナダ人でしたが、彼にも生きていてあの瞬間を見て欲しかったなあ、と思いました。

    大変な時期ですが、オバマさんにはがんばってほしいです。

  3. Kazu said,

    「初めてこの “Hymn to Freedom” を聴いた時、全身の血が泡立って、鳥肌が立った。」
    私も全く同じ感覚に襲われました。その後この曲に興味を持ち色々調べこのページに行き着きました。


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