2009/04/30

Joe Spiers Custom Harmonica - その1

Posted in ハーモニカ tagged , @ 4:38 pm by Yuki

ジョー・スパイアーズ (Joe Spiers) のハーモニカが届きました!数ヶ月前に注文して、待ちに待っていたカスタム・ハーモニカです。ジョーは、ジェイソン・リッチなどのハーモニカを手がけるトップ・カスタマイザーの一人で、こちら (欧米) で現在のハーモニカ事情を目ざとく追っている人なら、誰でも知っている名前であります。

今回私が買ったのは、マリンバンド (C調) をカスタマイズしたもので、コームは完全防水加工された特製の木製コームが使われています。口当たりがなめらかで非常に吹きやすいです。そして、美しい。なんかもう、オーボエとかクラリネットとか、そういう雰囲気です。ため息出ちゃいます。

spiers_harp

吹いた感想は、「素晴らしい。」 の一言。全ての穴がバランスよく調整されていて、とても吹きやすい。ベンドも余分な力を入れずに楽にできますが、同時にしっかりとした安定感もあります。オーバー・ブロウ / ドローのセッティングもばっちり。それから、私が一番感心したのが、吹いた時のドライブ感。ものすごくパワフルです。カスタム・ハープの利点のひとつは音量を出せるということにありますが、ジョーのハープは音が大きいというだけではなくて、音にパワーがあります (もちろん、そのパワーを引き出せるかどうかは奏者にかかっているわけですが)。それでいて、ものすごく小さく繊細な音を出そうとしてもきちんと対応してくれる。素晴らしいです。

私は様々なポジションを使うので、チューニングは平均律 (equal temperament) でお願いしましたが、コードの響きを少し和らげるために、全ての3度 (2、5、8 ブロウ、3、7 ドロー) を5セントだけ下げてもらいました。これは、リチャード・スレイから教えてもらったコツなのですが、結果、平均律のあの耳障りなコードの響きがかなり和らいで、とっても満足。しかし、ジョーがチューニングした純正律 (just intonation) のコードの響きは本当に素晴らしいということなので、それが体験できなかったことは非常に残念です。

音色は、カスタム・ハープにしてはやや暗めで、深く豊かな音色です。カスタム・ハープって、ものすごく鮮やかで明るい音色のことが多いんですよね。それは音が通るということなので、バンドと一緒に演奏する時は最大の長所となるわけですが、アコースティックのソロとか、デュオの演奏などでは、ちょっと薄く感じてしまうことがあるのも事実です。ジェイソン・リッチは、音色をよりダークにするために、このカスタム・マリンバンドにスペシャル20のカバープレートを付けてもらっているのだそうです。私も注文する際に、そういうオプションがあることを教えてもらったのですが、結局、普通にマリンバンドのカバープレートを付けてもらいました。結果、予想していたよりも明るすぎなかったので、私としては満足でした。

YouTube で、Todd Parrott と Jason Ricci がジョーのハープを使ってデモストレーションをしている映像があるので、興味のある方はご覧下さい。もちろん、ジョーのハーモニカを使えば彼らのように吹けるようになるというわけでは全くありません (笑)。また、ジョーのハーモニカに限らず、カスタム・ハーモニカはベンドが無駄な力なしでできるようになっているので、まだベンドがきちんとできていない初心者は、口先だけで音をベンドしてベンドができたと思い込み、悪い癖がついてしまう危険性もあると思います。私は個人的には、基礎はストック・ハープ (カスタマイズされていない、店で普通に売られているハープ) で学ぶのが良いという気がします。

Joe Spiers Custom Harmonica – Todd Parrott
In ‘SPIER’ ed (A one chord harp tribute to Joe Spiers) Bb

ということで、このように素晴らしいハーモニカなわけですが、もちろんお高い物です。今回、私が買ったものは、アメリカからの送料込みで305ドル。日本円にすると、現在のレートで2万9千600円。ストック・ハープと比べると驚きの値段ですね。貧乏音楽家には正直きついです。しかし、最近うちの夫がカスタマイズの仕事を始めたので、それを見ている私は、カスタマイズにどれほどのスキルが必要で、一本のハープにどれだけの膨大な時間を費やすかがよくわかるのです。今回買ったジョーのハープは、リチャード・スレイやジミー・ゴードン、ブラッド・ハリソンなど、他のトップ・カスタマイザーに比べでも一段と高いのですが、それでもその製品の価値を思うと、決して高すぎる値段ではないと思います。加えて、今回私が買ったハープは、2年間の保証つき。2年の保証期間が終わった後も、有料でメインテナンスはきちんとしてもらえる、一生もののハーモニカです。

次回、カスタム・ハーモニカというものについて、もうちょっと詳しく書きたいと思います。

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2009/04/27

Little Walter – The Complete Chess Masters - その後

Posted in CD tagged @ 8:46 pm by Yuki

リトル・ウォルターのチェス・ボックス・セットがリリースされるということは先月書きましたが (>Little Walter – The Complete Chess Masters)、今日はその後日談です。

結局、あの記事を書いてからすぐに注文してしまったのですが、夫の誕生日プレゼント用に買ったので、それまではおあずけ状態だったのでした。先日、誕生日を迎えた夫に渡され、ようやく開かれることとなったのであります。

l_walter-complete1

結果・・・いや~、買ってよかった。未発表曲が聞けるというのはもちろん嬉しいのですが、それより何より、リトル・ウォルターのチェスでのソロの録音を年代順に全てまとめて聞けるというのが良い。聞いたところによると、新しく音処理もされて、音質も良くなっているそうですよ (私自身、従来の録音と聞き比べたわけではないので、実際にどれほど違って聞こえるのかは定かではありません)。

ケースなどのデザインは特に期待していなかったんですが、開けてみるとかなりかっこいいです。ケースにも、ブックレットの中にも見たことのない写真が載っています。解説も、以前に紹介したリトル・ウォルターの本 (>Blues with a Feeling: The Little Walter Story) と同じ著者陣によるしっかりとしたもので、文句なしです。

little_walter-complete2 l_walter_complete3

実は私は、リトル・ウォルターの良さがわかるようになるのに、けっこう時間がかかったんですね。ブルース・ハープの音楽はハーモニカを始めるずっと前から聞いていたわけですが、「リトル・ウォルターって確かにかっこいいけど、皆がそれほど評価するほどのことかね・・・。」 などと思っていた罰当たりなやつだったのであります。その頃は、例えば、ビッグ・ウォルターやサニー・ボーイ二世、ジェームス・コットンなどの方がわかりやすかったんです。しかし、実際に自分でハーモニカを吹き始めて、ブルース・ハープの奥深さを知り (笑)、リトル・ウォルターの偉大さが徐々に理解できるようになっていったのであります。今では、「ブルース・ハープの歴史で、後にも先にもリトル・ウォルターを超えるプレイヤーはいない。」 などと言う人がいるのもよくわかります。Imaginative (想像力のある) で、inventive (独創力のある) で、最高にスウィンギー。しばらくは、うちのディナー・タイムは、リトル・ウォルター一色になりそうです。

2009/04/20

Dennis Gruenling インタビュー

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged , , @ 11:51 pm by Yuki

最近、リチャード・スレイ (Richard Sleigh) がデニス・グルンリング (Dennis Gruenling) をインタビューした映像をアップしていました。内容は、デニスのレコード・コレクションについて、リトル・ウォルターやサニー・ボーイ一世のスタイルがそのキャリアの中でどのように変わって行ったかについて、などなど。デニスの演奏もちょっとですがあります。ジェイソン・リッチ (Jason Ricci) も下の方にコメントを書いていて、それもまた楽し。

Dennis Gruenling interview part 1

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デニスは、去年このブログでやった 「ブルース・ハープ界の色男たち」 という世にもくだらない企画で、見事に一位の座を獲得しました。リチャードは、ロッド・ピアッツァ (Rod Piazza) と並んで、今年の色男番付 (またやる気か?) の一位を狙っている最中であります。「お気に入りが二人そろって出てるからって、あまり興奮しなうように。」 と夫に釘を刺されてしまった私ですが、やはり素敵でございました。Part 1 ということなので、続編もそのうちアップされるのでしょうか?楽しみです。

2009/04/15

Marine Band Crossover

Posted in ハーモニカ tagged @ 10:48 am by Yuki

少し前に、ハーモニカおたくご用達のメーリングリストで、近々発売されるマリンバンドのニュー・モデルが話題になっていました。その名も、マリンバンド・クロスオーバー (Marine Band Crossover)。

Marine Band Deluxe や Marine Band SBS など、ホーナーの製品開発に深く関わって来たスティーヴ・ベイカー (Steve Baker) が、メーリングリストでこの新製品についての説明をしていました。以下は、スティーヴによる説明の要約ですが (本文ではもっと詳しく説明されていました。)、「~なのだそうです。」 という表現はまどろっこしいので省かせていただきます。

marineband_crossover

スティーヴは18ヶ月前に、密封加工とラミネート加工がされた竹製のコームを試して、その吹いた感触と感度に直ちに惚れ、ダイアトニック・ハープに竹製のコームを使うことをホーナーに勧めました。その後、色々なテストを重ね、去年の秋に、Howard Levy、Joe Filisko、Michael Timler を交えて、ブラインド・テストを含む様々なテストを実施。結果、竹製コームが、プラスティック製や梨木製のコームにかなりの差をつけて、総合的に高い点数を獲得しました。それを受けて、ホーナーはマリンバンドの新しいモデルに竹製コームを使うことを決めたのであります。

チューニングは、スティーヴ (ホーナー) が呼ぶところの “new compromise tuning” です。これは、従来のマリンバンドのチューニング (compromise tuning) と equal temperament の中間に位置するチューニングで、全ての3度 (2、5、8 ブロウ、3、7 ドロー) がequal temperament のそれより6セント低くチューニングされており、更に、ドロー・コードの7度は equal temperament にチューニングされています。結果、スムーズな響きのコードを保ちつつ、ファースト、セカンド、サード・ポジション以外のポジションを演奏する場合にも、ほどよく調和のとれた演奏が可能となる仕上がりになっています。

60ドル (約5,900円) というのはちょっと高いという意見に対しては、確かに安いとは言いがたいけれど、ジョー・フィリスコの 「ホーナーがこれまで作った中で最高のハーモニカ」 という意見を踏まえて、(少なくともスティーヴ自身にとっては) その値段分の価値がある製品であると言っております。

Marine Band Crossover が入手可能となるのは、アメリカではSPAH (ハーモニカ・フェスティバル) の行われる8月中旬、ヨーロッパではその1~2ヶ月前の予定。楽しみですね。

2009/04/12

Rod Piazza に惚れる

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 10:28 pm by Yuki

ロッド・ピアッツァのライブを観て参りました。もうだめです。完全にやられました。惚れました。CDを聴いたりDVDでその姿を拝見してはいたのですが、最前列で体感する生の演奏の迫力とはやはり比べ物になりませんでした。ライブの良いところは、生の演奏が聴けるというだけではなくて、奏者が発するエネルギーやオーラを直に身体で感じ、彼らの身体の中に流れるビートやグルーヴを目で見て吸収できることだと思います。今回のロッドも、片足に重心を乗せてもう片方の足でステップを踏む様や、揃えた両膝をきゅっきゅっと左右に動かしてリズムを取る様、フレーズを切れ良く終わらせる時にぐっと上体が動く様など、見所満載でございました。

rod_burnley

ロッドは1947年生まれで今年62歳になるわけですが、こんなにセクシーな60代は、私にとっては、同じく1947年生まれのデヴィッド・ボウイくらいです (笑)。ハープ・プレイヤーのライブでこんなに胸ときめいたのは、2年前に見たデニス・グルンリング以来。奥様のハニー・ピアッツァも、今年58才になる女性にはとても見えませんでした。実は私はハニーのピアノはあまり好きではないのですが、それでも、自分が58才になった時、彼女のように若々しくかわいらしく、そして力強くステージに立っていたいと思ったのであります。

ロッドと彼のバンドは、アドリブで演奏することは少ないのだと聞きました。私はアドリブで繰り広げられるブルースが好きで、自分の演奏でもそういう所を目指しているのですが、ロッドの演奏はそんなことが気にならないくらい素晴らしかったです。音色も、フレージングも、リフやリックも、「ロッド・ピアッツァ」 以外の何物でもないという感じ。

今回のイベントは、私の住んでいるブリストルから車で3時間以上かかる所で行われたので、実は行こうか行かないかと散々迷ったのです。フェスティバルなのでチケットは高いし、ホテル代、ガソリン代もかかるし、3時間の高速運転はけっこうきついし・・・と。それでも、ロッドが前にイギリスに来たのは10年以上も前だというし、これを逃したら一生ライブを観る機会はないかもしれない!と思い、誕生日が近い夫へのプレゼントとしてチケットとホテルを予約したのでした (ハーピストの妻の鏡ですね)。結果、はるばる見に行って、本当によかった。CDにサインをしてもらい、握手をして一緒に写真も撮ってもらい (しつこいようですが、本当に素敵だった。)、ほくほくで帰って来たのであります。

2009/04/10

アンプ比べ大会 ・ その後

Posted in ハープ日記, ハーモニカ・プレイヤー @ 12:10 am by Yuki

ハーモニカ仲間で集まってアンプ比べ大会をした話を先日書きましたが (>アンプは楽器の一部)、友人がその時の模様をビデオにして YouTube にアップしています。音質も画像も良くありませんが、字幕付きで楽しいビデオに仕上がっている!!顔はちょっとしか映っていませんが、出演は、撮影・編集をした友人 (Oxharp)、毎週のように顔を合わせる良きハープ友達 (Moses T.)、夫 (Jon)、 私 (Yuki)、こんなハーモニカおたくの集まりに付き合ってくれたうちのバンドのギタリスト (Dave) です。ビデオカメラでの録音のため、アンプによる音色の違いはそれほど明らかではないので (当日は本当にかなり違って聞こえたのですが。)、アンプ選びの参考にはならないと思います。本当にお暇な方だけご覧下さい。週末明けにはネットから下ろすと言っているので、見たい方 (いるかな?) はお早めにどうぞ。

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2009/04/08

Joe Filisko (アンプリファイド)

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 11:45 pm by Yuki

最近、更新が遅れがちなこのブログ。こう見えてもなかなか忙しくて、あくせくしております。特に今日はストレスになることが多くて、どっぷりと疲れました。こんな日は、かっこいい音楽を紹介して元気を出すに限ります。うちの夫が師と仰ぐ、ジョー・フィリスコ (Joe Filsko) の演奏です。

joe_filisko

ジョーのアコースティックの演奏は以前紹介しましたが (>Joe Filisko)、今日はアンプリファイドの演奏です。

Joe Filisko – Pretty Thing

いやはや、かっこいい。アコースティックの演奏とか、戦前ハープの演奏なんかをすると、心にじわ~っと染みる彼の演奏ですが、こういうダーティーなアンプリファイドも吹くんですよね。恐るべしジョー・フィリスコ氏であります。

2009/04/05

アンプは楽器の一部

Posted in ハーモニカ小物 / お手入れ tagged , @ 1:43 pm by Yuki

先日、ハープ仲間でアンプを持ち寄って、アンプ比べ大会を行いました。アンプは全部で5台でしたが、メインは Fender Bassman 2台 (1台は Rod Piazza モデル) と Sonny Jr Four-Ten の吹き比べ。同じセッティッングでどれだけ音が違うかとか、マイクを変えたらどうなるかとか、ああでもない、こうでもない、とハープおたくが集まって楽しい一時を過ごしたのでした。

機材にはどうものめりこめない私は、おたく度丸出しの集まりに参加して、やっぱりもっと勉強しようかなあと反省したりもしたのですが、それと同時に、エキップメントにものすごく詳しい人が、「タングブロック・ベンドがまだできないんだよね。」 などと言っているのを聞いて、「機材へのこだわりに費やすその膨大な時間を、タングブロック・ベンドの練習に少し回した方がよいのでは?」 と人事ながら疑問に思ったのも事実です。大切なのはバランスですね。

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ジャムなどに参加するたびに思うのは、アンプを本当の意味で使いこなせている人は非常に少ないということです。私を含む初心者は、マイクのグリップが上手くできていなかったり、アンプから聞こえてくる音に惑わされて身体への共鳴ができなくなったり、音のイメージとテクニックが結びつかなかったりなどの理由から上手くいかないことが多いのですが、長年アンプリファイド・ハープを吹いてきた人でも、アンプを楽器の一部として使いこなしている人はほんの一握りだと感じます。

アンプを通して吹く場合、強いアタックを使ったりディストーションを起こしたりして、ヘビーなサウンドを作り出すことに心を砕く人が非常に多いです。でも、アンプリファイド・ハープの魅力はそれだけでは決してないと思うのです。曲の最初から最後まで、ヘビーなサウンドでがーっと吹き倒す人も多いですが、そういうのを素晴らしく上手くやってのけるのはジェームス・コットンくらいではないでしょうか。大抵の場合は、一定の大きな音量、一定のヘビーな音色が延々と続くそういう演奏は、半分くらい聞いただけで、「もうやめて~」 と思ってしまいます。先日紹介したキム・ウィルソンのインタビューでも、キムが言っていましたね。聞き手が 「パンチが来るぞ!」 と予想している所では、パンチはしないものなのです。まして、パンチだらけでは聞き手はすぐにおなかいっぱいになってしまいます。パンチは有効に使いましょう。

上手い人達の演奏を聞くと、「何か特別なことが奏者とアンプの間で起こっている。」 と目に見えて感じる瞬間があります。私自身できるわけではないので具体的な説明はできないのですが、眠っていたアンプの機能がぱっと目覚めたような音がするのです。でも彼らは、決して強く吹いているわけではないんですよね。マイクを離して吹き続けてもらい、アンプを通さない音を聞くと、「こんなに静かに吹いているんだ」 と驚きますよ。上手い人達に共通するのは、楽器やアンプを強いることではなくて、同調させることで多彩な音色と表現力を作り出そうという姿勢だと感じます。そしてそれが、「アンプを楽器の一部として鳴らす」 ということだと思うのです。