2009/05/19

Jason Ricci インタビュー その1

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 5:00 pm by Yuki

ジェイソン・リッチのインタビューです。
Blues Moose radio Interview Jason Ricci Ospel (NL) Moulin blues 2 may 2009

なかなか良いインタビューで、全体に興味深い話が続くのですが、一部抜粋します。

jason_phrs-2

「ジェイソン・リッチはジェイソン・リッチ以外の何者でもないわけだけれど、自分が他のハーモニカ・プレイヤーと違うのはどんなところだと思う?」 に対しての答え。

よくわからないけど、僕はただ音楽を演奏したいだけで、それがブルースであるかどうかということにはあまり感心がないってことじゃないかな。たぶん、ちょっとポール・バタフィールドみたいな感じかもしれない。それから僕は、ハーモニカ・プレイヤーというより、ギター・プレイヤーみたいに演奏するんだ。

「自分の演奏する音楽はブルースだと思う?」 の問いに対しての答え。

わからないな。ブルースはもちろん演奏するよ。でもこれは難しい問題だよね。トラディショナル・ブルースというものが、現在で言うところのトラディショナル・ブルース (リトル・ウォルターやビッグウォルターなどのことですね。) だと考える人も多いけれど、そういう人達が50年代に生きていたとしたら、50年代のブルースをトラディショナルだとは思わなかっただろうね。つまり、現在リトル・ウォルターそっくりにハーモニカが吹きたいと思っている連中がリトル・ウォルターの時代に生きていたとしたら、彼らはリトル・ウォルターの音楽なんて大嫌いだっただろうってことだよ。だから、僕の音楽を何と呼ぶかというのは、みんなが好きに決めたらいいさ。ブルースに影響を受けている音楽だと呼べることは確かだろう。でも僕の演奏する曲には、絶対に、100パーセントの確率でブルースではない曲もあるけどね。

「何がブルースで何がブルースでないかと決め付ける人はたくさんいるけれど・・・」 ということについての答え。

そんなのはばかばかしいことだよ。マディ・ウォーターズだってジェームス・コットンだって、ブルースがこうあるべきだなんて考えは持ってなかったんだ。ビッグ・ウォルターなんてラ・クカラーチャを演奏してたんだぜ。彼らはみんな音楽に対して偏見がなかったし、新しいものを取り入れる広い心を持っていたんだ。

僕はインターネットを通して若いプレイヤー達と話すことが多いけれど、若い人達や子供達は、新しいものに対してすごくオープンなんだ。僕は新しい時代のほんの始まりであって、これから僕みたいな演奏をする人達がどんどん増えてくると思うよ。移り変わりなのさ。音楽は変わらなくてはいけないんだ。変わらなくては、そこで終わってしまうから。

最後に、「これはいつもみんなに聞くことなんだけど、ブルースを演奏するのにはコットンを摘まなくちゃいけない思う?」 の問いに対しては、

いや、そうは思わないよ。でも僕は悪魔に魂を売らなきゃいけなかったけどね。

と、お茶目なジョークで締めくくっておりました。ゲイの人ってチャーミングな人が多いですね。

これは他のところで読んだのですが、ジェイソンの音楽を聞いて、「こんなのはブルースじゃない」 と言う人も多いみたいですね。でも、ここで彼が語っているように、何がブルースで何がブルースでないかというのは、そんなに簡単に定義できることではないのだと思います。リトル・ウォルターだって、今でこそトラディショナルとされていますけど、ジャンプ・ブルースのテイストを取り入れたり、ロカビリーのような音楽を作り上げたり、それまでのブルースとは程遠い、斬新なプレイヤーだったわけですから。ジェイソンの人となりが表れた、良いインタビューだと思います。

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10件のコメント »

  1. ebk said,

    はじめまして。
    私個人としてはジェイソン・リッチの演奏はあまり好きではないけどこの意見には同意です。
    ブルースを伝統芸能とか考古学みたいなものと捉えてる人も決して少なくはないようだけど、それだと巨匠達のスタイルは残っても心意気までは受け継がれないので片手落ちのような気がします。
    まともにブルースを演奏出来ない奴の負け惜しみと思われるかもしれないですが・・・
    日本には”歌は世につれ、世は歌につれ”という言葉がありますがブルースとて例外ではないと思うんですけどね。

    話が変わりますがYukiさんはクロマをメインにキーがGやDの時に10穴に持ち替える方が良くないですか?
    鍵盤のボキャブラリーと10穴のトーンを活かせるので最高のスタイルだと思いますよ。
    仮にこれが身近な人のケースなら首根っこを捕まえてでもクロマに転向させるレベルw

    • Yuki said,

      >ebkさん

      はじめまして!

      私も新しいスタイルを追求するプレイヤーは好きなのですが、でもそういう人達は皆、古典をしっかりと学んでいるのも事実ですよね。かのリトル・ウォルターだって、極初期はサニー・ボーイ一世の影響受けまくりみたいな演奏をしていましたしね。ジェイソンもなんだかんだ言ってトラディショナルなブルースは勉強しているし、やろうと思えばかなり上手くそういう演奏もできる人だと思います。たまに、「トラディショナル・ブルースへのトリビュート」 みたいな演奏を曲中に織り込むことがあって、そういうのを聞くとうれしくなってしまいます。そして、こういう人だからこそ、このような発言をしても格好が良いし、説得力を持って響くのだとも思います。私なんかが言うのとは訳が違いますね。

      クロマティックは周りにも熱心に勧めてくれる人達がいて、いずれは挑戦したいと思っています。私はダイアトニック特有のあの表現力に惹かれてハーモニカをはじめたので、今のところは各ポジションでそれを生かせるように励んでいます。ブルースでよく使うキーはだいたいできますが、曲の雰囲気によってとか、グルーヴによってとか、その日の調子によってとか (笑) で、上手く行く日と行かない日の差が激しいのが問題です。でもこんなのは、ハープの持ち替えができる人でも、多かれ少なかれ皆感じていることなのかもしれません。

      コメントありがとうございました。またぜひ遊びにいらして下さい。

  2. nogioh said,

    ギターのようにハーモニカを吹く・・・。この人のプレイは度々ヴァイオリンのようにも聞こえます。
    ブルースはジャンルである、形式である、精神である・・・。
    どこに視点を据えて論じるかによって、結論はさまざまに変わり得ると思います。
    僕はジェイソンには「ロック」の衝動を強烈に感じます。でもこれも勝手なイメージです。
    僕は50年代のシカゴスタイルのブルースが一番好きですが、スタイルを継承する者、革新してゆこうとする者、どちらもいてこそ聴き継がれる音楽になるのだと考えています。

    • Yuki said,

      >nogiohさん

      私もたまに、ハーモニカの演奏を聞いて、ヴァイオリンのようだと思うことがあります。ジェイソンもそうですし、サニー・ボーイ2世とか、ジョー・フィリスコとか。ジェイソンはクラシックのヴァイオリン音楽を聞くのが好きで、一番好きな楽器は (ハーモニカをさしおいて) ヴァイオリンだなんて言っておりました。

      何がブルースかというのは、おっしゃる通り、視点によって変わりますね。コットンを摘んだからこそブルースが生まれた時代も確かにあったわけですし。私はクラシック音楽も演奏するので、音楽の歴史という視点から見て、ジェイソンの言っていることは身に染みてよくわかります。クラシック音楽の歴史では、大雑把に言って、バロック (17世紀)、古典派 (18世紀)、ロマン派 (19世紀) と、だいたい100年単位でその様式が変わってきたんですね。現在ではこれを全部ひっくるめて 「クラシック音楽」 と呼んでいるわけですが、ベートーヴェンもショパンも、その当時は真新しい革命的な現代音楽だったのです。そういう意味で、ジェイソン・リッチもあと50年もしたら、ブルースの歴史にすっぽりとおさまるのではないかという気がします。そしてそういう大きな流れで見ると、彼の言う、「(音楽は) 変わらなければ死んでしまう」 という言葉も尤もだと思います。

      私としては、リトル・ウォルターの曲を丸写しで演奏することを目的とする人がいても良いと思うし、その楽しさや心地よさも良くわかります。それと同時に、ジェイソンのような新しいスタイルのプレイヤーが出てくるというのはやはり嬉しいことで、見ていて勇気も出てくるし、こういう人がいないと困っちゃうなとも思います。でも、新しいものを作るには先代の演奏を学ばなくてはいけないというのは、まぎれもない事実ですね。ショパンも、バッハの楽譜をいつも鞄に入れて持ち歩いていたといいます。

  3. ダイ said,

    始めてメールします。
    私は50の手習いでブルースハープを始め、未だに初心者の域を脱していません。
    Yukiさんの自らの経験にもとづくハープ理論と、ハープ愛に満ちた言葉を目からうろこのように読んでいます。

    ジェイソン・リッチも聞いたことがありませんので、今度聞いてみます。

    ブルースハープとクロマチックは音が明らかに違うので、ハープの選択はむずかしいところと思います。それぞれいいところはありますが、Yukiさんの選ばれた道はけわしいけれど、大賛成です。

    • Yuki said,

      >ダイさん

      はじめまして!

      私もこんなブログを作ってはいますが、ジャムに行ったり、自分の演奏を録音して聞くたびに、反省しきりの毎日です。がんばりましょう!

      クロマティックにも興味はあるのですが、お高いものですし (泣)、練習の時間も限られているので、とりあえずはダイアトニックに集中しています。曲によって楽器を選べるようになると演奏の幅が広がるので、いつかは挑戦したいと思っています。

      ジェイソン・リッチの音楽はこちらで聞くことができます。好き嫌いが分かれる演奏かと思いますが、現在のブルース・シーンで最も重要なプレイヤーの一人だと思います。
      http://www.myspace.com/jasonricciandnewblood

      コメントありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

  4. ヤマモト said,

    はじめまして、いつも興味深く、拝読させて頂いております。
    浅はかながら、ブルースに関して感じていることを述べさせてください。
    ブルースは歌が柱であって、歌詞を重視する音楽だと思います。
    ブルースハープの一つ楽器のリズム、リフの斬新さによって、ブルースの革新を起こせるとは到底思えません。ブルースミュージックのハーモニカのパートでの歴史に残る革新を
    起こせるかもしれませんが。 マディー、エルモア、サニーボーイ、ジェイコブスも楽器の
    プレイヤーである前にシンガーだと思います。そう考えると、メッシン、リトルバイリトルなどを作ったジュニア以降は歌い継がれる曲を作った者はいないようにおもいます。
    もし、ブルースミュージックでなくブルースで革新を起こすとしたら、人の記憶に残る歌を
    生んだ時ではないでしょうか。
    長々と失礼いたしました。

    • Yuki said,

      >ヤマモトさん

      こんにちは。コメントありがとうございます。

      ブルースは歌詞を重視する音楽だという意見には同意します。でも私は、ブルースという音楽はそれだけではないとも思います。楽器の演奏のスタイルや、リフやリック、フレージングなども重要ですし、歌なしでブルースを演奏することも可能だと思います。すごく上手いギタリストがリフをひとつ弾いただけでも、「おお、ブルースだ!」 と感じますし、インストの曲でもブルースを感じるものはたくさんあります。

      楽器のリズム、リフの斬新さによって、ブルースの革新を起こせるとは到底思えないとのことですが、私はこれはブルースの歴史では常に起こってきたことだと思います。リトル・ウォルターなんて、そのリフひとつ聞いてもやはり革新的です。Juke や Roller Coaster、Sad Hours なんてインスト曲ですが、これらをブルースの歴史に限らず、音楽の歴史においての革命ととらえる人は多いです。去年ロックの殿堂入りを果たしたウォルターですが、彼が選ばれた一番の理由は、彼がシンガーであったからということでは決してないと思います (良いシンガーであったことは確かですが)。

      最近の人では、ジェイソンもそうですし、ウェスト・コースト・スタイルを確立したロッド・ピアッツァとか、ハーモニカでジャンプ・ブルースをやっているデニス・グルーエンリングなど、その楽器の演奏だけでブルースの歴史に残るであろう人はたくさんいます。デニスなんて歌は全く歌いませんが、彼のスタイルはやはり革新的ですし、多くのミュージシャンにも影響を与えています。

  5. Ogitetsu said,

    最近の彼の新譜は<Done With Devil>という題名ですよね。もう、悪魔は十分だよ、ってことかな。Devilが何を意味するのかは人それぞれかな。
    ノリの良い曲だと思うし、動画に使われていたイメージに悪名高きクローリーが出て来たりで、僕にはエキサイティングだと思いました。もちろん、ブルースの影響はプンプンですが、これをストレートにブルースと呼ぶ人は居ないでしょうね。

    素人の意見として聞いてください。
    僕は古い時代の曲をそのまま、同じギターを使い、マニアックにソックリ真似ることに、抵抗が在るのです。もちろん、自分の研究としては結構ですし、僕もコピーはかなりしてます。でも、その曲を自分が歌う時には、少し変えたり、プラスアルファを加えたくなる。僕にとっては、日本語で歌うのもその一つなんですが。
    オリジナルそのままでは、結局オリジナルを聞けは良いじゃん、というのが、僕の基本的な意見です。

    ところで、Ricciはイギリス系の名前ではないですね。彼はイタリア系かな。
    そうかあ、彼もゲイでしたか。
    俺は芸が無い男ですが。

    オギ

    • Yuki said,

      >オギさん

      私も往年のプレイヤーの演奏をコピーして勉強することはありますし、それはブルースという音楽を演奏する者にとっては必須だとも思います。でも、人前で演奏する際には、一音一音そっくりにコピーした演奏をしたいとは思いません。それは、オギさんのおっしゃるように、「オリジナルを聞けは良いじゃん」 という気持ちもありますし、それから、「どんなにがんばってもコピーはコピーでしかなくて、オリジナルにはかなわない」 という思いがあるからです。

      そっくりのコピーって、「良く勉強してるし、上手く演奏できてるんだけど、やっぱり微妙なところでオリジナルと違うんだよなあ」 というような面ばかり目立って、あら探し的に聞かれてしまうこともあるので、あまり得ではないですよね。あら探しをするつもりはなくても、聞きこんだ曲って、全ての音はもちろん、微妙なニュアンスや音色の変化、間の取り方なんかまでしっかりと頭の中に入っているので、コピーを聞いていると無意識にそれが頭の中で鳴って、比べてしまうというか。ブルースを聞き込んでいるリスナーを、丸写しコピーの演奏で満足させるのは、ほぼ不可能に近いのではないでしょうか。カナダに一人、完璧と言っていいくらいの完成度でリトル・ウォルターのコピーをする人がいて、ここまでくると芸術かなあとは思いますけれど。


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