2009/08/06

アンサンブルの楽しみ ・ その2 (ブルース・ミュージシャンとしての技量)

Posted in ハープ日記, ハーモニカ・プレイヤー tagged , , @ 11:46 am by Yuki

先日のジョー・フィリスコのコンサートでは、サポート・バンドの演奏が2つありました。どちらも地元の若いバンドです。流れとしては、ウィル・ワイルドというハーモニカ・プレイヤーが率いるバンドがまず演奏して、次にジョーが1時間ほどアコースティック・ソロの演奏をし、その後、もうひとつのバンドの演奏があり、最後にこのバンドにジョーとウィル・ワイルドが加わって、セッションで締めくくるというものでした。

ジョーに会うために開場前に中に入っていた私は、サウンドチェックの様子を見る機会があって、実はどちらのバンドにもあまり期待していなかったのです。でも本番では、このウィル君という若きハープ・プレイヤーのバンドは、とても良い演奏をしていました。ヴィブラートの音や、あまりにも露骨にパッカーを押し出したアプローチが私の好みではないのですが、このような演奏が好きだという人がいるのは理解できるし、そういった評価に値するプレイヤーだと思います。このバンドは普段はエレクトリック・ギターを使うらしいですが、今回はアコースティック・ギターでの演奏でした。おそらくジョーのサポートであるということを考慮しての選択で、そういうセンスの良さや柔軟性にも感心します。そして何より私の気に入ったのが、ウィル君がきちんと他のミュージシャンとのセッションができるということです。サウンドチェックを聞いていた際は、「ハーモニカが一人よがりに吹きまくるマスターベーション的演奏になるのではないか」 という予感がしたのですが、本番ではギターがソロを取る場面ではすっと引いて上手くバックアップしていたし、最後のセッションでも、ジョーとかぶらないように音量をコントロールしたり、ハーモナイズしたり、引くところでは引いて出るところではしっかり出るという演奏をしていました。彼はまだ20歳だそうで、先が楽しみです。
Will “Harmonica” Wilde (myspace)

w_wilde

ウィル君のバンドと正反対だったのが、もうひとつのバンド。音楽はもちろん、ファッション、歩き方、話し方、演奏中の身体の動きから、ローリング・ストーンズ (特にミック・ジャガー) の影響を受けているのが一目瞭然。ストーンズが悪いというのではもちろんないですが、音楽よりファッションや身のこなしが先走っているというその感じと、サウンドチェックの音から、「この人達、ブルースのセッションができるんだろうか」 という嫌な予感が頭をよぎりました。そして本番、予感的中。バンドの演奏自体は、私の好みでは全くないにしろ、まあこういうのもありかな、とは思いましたが、ジョーが加わってのセッションは、てんで話になりませんでした。ジョーがどんなソロを吹いていようが全くおかまいなしで、勝手に弾きまくって勝手に盛り上がって行くバンド。ジョーの音など聴いていないのが、見ていて明らかです。ウィル君のバンドを最後にしてセッションをした方が絶対に良かったのに、と残念に思いました。

ブルース・ミュージシャンとしての技量が本当に問われるのは、セッションにおいてだと思います。ブルースというランゲージを使ってコミュニケーションを取ることができなければ、それはもはやブルースではないと思うのです。その良い例 (悪い例と言った方がいいのか。) が、リトル・ウォルターがロックの殿堂入りをした時のセレモニーでの演奏。ハーモニカがジェームス・コットンというのはこの晴れ舞台にふさわしい適役だと思いますが、彼以外のバンドの演奏が、どう見てもブルースを知っている演奏ではないのです。”Juke” はコットンとバンドがばらばら。ブルースなんて12小節の枠を繰り返し演奏してればいいんだろう、というバンドの感じが見え見えで、コットンのソロに反応することなどもちろんありません。ブルースを演奏し慣れた人なら、(たとえリハーサルなしのセッションだったとしても) ここでコットンがやりたいことは実に明快なはずですが、このバンドにはコットンの意思が全く伝わっていません。コットンが、「おい、合わせろよ」 という感じでバンドの方をちらちらと何度か見ていますが、それも見事に無視。そんなだから、最初から最後までコットンとバンドが4小節ずれていても気づかないという事態になるのです (終盤でコットンがかろうじて合わせていますが)。そして、”My Babe” はギターが張り切りまくり、弾きまくりで、もううるさいったらないです。

リトル・ウォルターがロックの殿堂入りしたのは (おそらく) 喜ぶべきことですが、このセレモニーはひどかった。冒頭のエリック・クラプトンのリトル・ウォルターについての見解も全く的はずれだし (”crude” という言葉は他のブルース・プレイヤーに当てはまることはあっても、リトル・ウォルターには当てはまらない、というか、むしろその全く逆だと思います)。リトル・ウォルターもジェームス・コットンもなんだか気の毒ですね。このクリップを見る度に、頭が痛くなる私です。
Little Walter’s induction into the R&R Hall of Fame

関連記事:
アンサンブルの楽しみ ・ その1

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3件のコメント »

  1. mosi said,

    ベン・ハーパーはジョンハートのトリビュートCDで良いのやってたんでオリジナルは別として一目置いてたんですが、今回はToo Muchでしたね~。
    今のお客の求めるところ・・・、なのかな。
    しかしこのバンドはドラムひどすぎ。もっとスイングしてほしい。

    ところでこのHP見てたら無性にハープやってみたくなりました。ちょっとがんばってみます。で・・・どの辺りから始めたら良いですかね?、先生w

    • Yuki said,

      >mosiさん

      私は教えられるような立場では全くないのですが、基本中の基本は音作り - 腹式呼吸を使って、身体を余分に力ませることなく、リラックスして、身体に共鳴させて音が出せるということ - だと思います。これができなければ何も始まらないと思いますが、実際にきちんとできている人は多くありません。

      ハーモニカは、特別高いものを使う必要はないですが、ある程度は質の良いものを選んだ方が、悪い癖がつきにくいと感じます。Suzuki の製品は定評があるようですし、最近は Seydel も評判が良いです。Hohner もMarine Band Deluxe など良い製品がありますが、質の安定性に欠けます (物によって当たりはずれが多いということです)。

      教材は、Jerry Portnoy の “Blues Harmonica Masterclass” がお勧めです。
      http://www.amazon.co.jp/Blues-Harmonica-Masterclass-Jerry-Portnoy/dp/B00005KJ36

  2. mosi said,

    あ、すみません。
    チャレンジは何度かしたことありますが、すぐあきらめました。
    でもこのHP見てたら、やらねば!と。
    今度こそ頑張ってみます。

    昔Jimmy Rogersもハープ吹いてたそうで、「ワシはハープ吹いてたから、ハーピストが気持ちよく吹けるバッキングがわかる」って言ってたのがチャレンジのきっかけでした。

    マリーンバンド持ってますが、確かに最初から音が出ないのがありました。
    高いのに。

    >身体を余分に力ませることなく、リラックスして
    これはギターを弾くうえでも、ここのHPでのお話がすごく参考になりました。
    バンドのメンバーともそのことで話しました。
    今一番気をつけなければならない点と、強く思ってます。感謝してます、Yukiさん。

    教材、早速買います。

    腹式呼吸は音楽とは別に何度もチャレンジしましたが、出来た試しなし。
    感覚がよくわかんないんですよね~。
    これももう一度チャレンジです。

    あ、バンドにハーピストいますが、同級生なんで逆に聞く気になれません。 ビミョーです。


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