2011/01/23

Uakti – “Aguas Da Amazonia”

Posted in ハーモニカ以外 tagged @ 10:30 pm by Yuki

仕事も一番の趣味も音楽、という音楽バカな私ですが、そんな私でも、(というか、そんな生活を送っているからこそ、ということなのかもしれませんけれども)、「今日はもう音楽は聴きたくない!」 という日が、たまーにですがあります。滅多にないんですけどね。たまーに。

練習をしたり、聞き取りをしたり、分析をしたりなど、一生懸命お勉強をした日が続いた時、脳みそが、「もうお腹いっぱいだよー。これ以上は無理だよー。」 と拒否反応を起こすのです。こういう時は、私にとっての三大ジャンル (クラシック、ブルース、ジャズ) を聴くことは、絶対に無理です。それで、拒否反応の症状が軽い時にはロックやレゲエなどを聴いたりするのですが、症状が重い時にいたっては、それさえも受け付けません。そんな重症の時にお役立ちなのが、この一枚。

“Aguas Da Amazonia”。

フィリップ・グラス (Philip Glass) が作曲した曲を、ブラジルの Uakti というグループが演奏しているアルバム。フィリップ・グラスお得意のミニマル・ミュージックなのですが、全体的にリラックスできる雰囲気です。”Aguas Da Amazonia” (waters of the Amazon) というアルバム・タイトル通り、アマゾン熱帯雨林の川がテーマとなったコンセプト・アルバムで、それぞれの曲には、アマゾンの川の名前がタイトルとしてつけられています (”Metamorphosis I” というタイトルの終曲を除く)。私が特に好きなのは、このアルバム最後の川、”Amazon River”。

Uakti – Amazon River (Composed by Philip Glass)

執拗に繰り返される音のパターンに身をゆだね、その中に起こるちょっとした変化に耳を澄ませるように聴いていると (これこそが、ミニマル・ミュージックを聴くことの醍醐味ですね。)、川から川へ、どんぶらこっこー、どんぶらこっこーと流されているような気分になります。そして最後にこのアマゾン川に流れ着き、それから終曲へと向かっていくというコンセプト・アルバムとしての出来も素晴らしい。

「浜辺のアインシュタイン (Einstein on the Beach)」 など、グラスの作品を嫌う夫でさえも、このアルバムは好きだと言っていました。 “Aguas Da Amazonia” は、ブラジルの民族楽器によって演奏され、ヴォーカルも使われていませんし、自然がテーマということもあり、温かな仕上がりとなっていて、全編に渡って無機的な感じの 「浜辺のアインシュタイン」 などとはちょっと違います。私はグラスの他の作品も大好きで、聞いていて興奮してしまうのですが、確かに音楽でおなかいっぱいになっている時には聞きたい音楽ではありません。

ちなみに、「浜辺のアインシュタイン」 はこんな感じです。こういうのが延々4時間以上続きます。演奏するのはすごく大変そう。他の人の音に紛れて、自分がどこを演奏しているのかすぐにわからなくなりそうです。

02 Einstein on the Beach- Train 1 part 1

philip glass einstein on the beach

そんなわけで、この “Aguas Da Amazonia” を聞いて頭と心をリフレッシュして、またいつもの生活 (三大ジャンル) に戻って行く、ということになります。音楽が聞きたくなかったら聞かなきゃいいんですけどね、そこはほら、何しろ音楽バカですから。

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2011/01/14

パワフルでスウィンギーなうさぎの後日談 (それと音楽理論について少し)

Posted in ハーモニカ・プレイヤー, 音楽理論 tagged , @ 8:25 pm by Yuki

先日のウィリアム・クラークの記事をアップした翌日、アダム・ガッソー (Adam Gussow) が自身のフォーラムにて、ウィリアム・クラークについて同じ様なことを書いていたのを発見して、驚きました。

アダムが問題にしていたのは、私も先日の記事で紹介した、このクリップ。

William Clarke – Blowin’ The Family Jewels – 1990

「ウィリアム・クラークがこの演奏でダイアトニック・ハーモニカを使っているということが判るまでに、最低でも1分はかかった」 と言って、知的で創意に富んだその演奏を賞賛していたアダム。私も、先日紹介したクリップの中ではこの演奏が一番好きで、夫にクリップを見せて、「ね、これ、ダイアトニックだよね?クロマティックじゃないよね?ベンド音が出てくるまで気づかなかった!」 という話を興奮してしたりしていたので、ちょっとうれしくなってしまいました。記事をアップした日付は、アダムが12月31日、私が1月5日ということで、私とアダムは、同じ時期に同じクリップを聞いて、同じようなことを考えていたということになります。それにしても、このクリップでのウィリアム・クラークの演奏は本当にすごいです。

上手い人の演奏を聞く時、「この人はどういうアプロ-チでインプロヴィゼーションをしているんだろう」 ということに、私はとても興味があります。スケール中心、コード音中心、リック / リフ中心・・・などなど、インプロヴィゼーションの攻め方は色々で、そういう話を他のミュージシャンとするのもまた、ライブやジャムに行く楽しみのひとつです。(しかも私は、ピアノやハーモニカの人よりも、ギターやサクソフォンなど、自分が演奏しない楽器の人の話を聞くのが好きだったりします。)

さて、今回、年男の記事を書くにあたって、ウィリアム・クラークの演奏を改めてじっくり聞き直したわけですが、その間ずっと、「この人はどこまで音楽理論 (セオリー) の知識があったんだろう」 ということに関心がありました。真相はわかりませんけれども、彼のクロマティックの演奏や、今回のクリップの様にそれを (クロマティックのアプローチを) ダイアトニックに適用した演奏、また、そのインプロヴィゼーションのスキルなどを聴く限り、「ウィリアム・クラークはかなりのセオリーを知っていたのではないか」 と (個人的な想像として) 思います。手持ちのリック / リフ、それと直感とセンスに頼るだけでは、こういう演奏はできないのではないかと思うんですよね。少なくとも、コード音とインターヴァルの知識くらいはあったのではないでしょうか。彼がセオリーを知っていたという証拠にはなりませんが、ウィリアム・クラークがギターを弾いているクリップなんかもあります。リトル・ウォルター (Little Walter) もギターが弾けたといいますね。

>William Clarke Plays Guitar

もちろん、理論など知らなくても、素晴らしい演奏をするプレイヤーはいます。キム・ウィルソン (Kim Wilson) なんかは、「セオリーなんか知らない。そんなもの必要ない」 というようなことをインタビューで言っていますし、私もセオリー至上主義というわけでは全くありません。知識は豊富なのに演奏できない批評家肌の人よりは、理論なんて知らないけれどかっこいい演奏ができるという人の方が断然好きです。でも、キム・ウィルソンは現在のブルース・ハープ界を代表する天才的なプレイヤーなわけで、みんながみんなキムの様に吹けるわけではないのもまた事実ですよね。

誰かの演奏をコピーしたり分析したりする時、マンネリ化したインプロヴィゼーションから抜け出して新たなアプローチを見つけようとする時、セオリーは大きな手助けとなります。特に現代では、インターネット、教則本・DVD、レッスンなど、理論的なことを学ぶ機会はいたるところにあるわけで、それを頑なに拒否するのは、怠慢あるいは探究心の欠如という気もしないではありません。キムのようにずば抜けてかっこいい演奏ができれば、もちろん何も言うことはないのですけれども。

ハウリン・ウルフ (Howlin’ Wolf) は晩年、音楽理論を学んだのだといいます。誰かに聞いた話で出典は定かではないのですが、私はこのエピソードが大好きです。昔は現在のように情報があふれていたわけではないので、学びたくても学べなかったということも多かったのではないかと想像します。ハウリン・ウルフのように、キャリアがあり、名声もあるミュージシャンが、その晩年に自らセオリーを学びたいと思ったということは、私をひどく感動させるのです。ミュージシャンを進化させるのは、音楽に対する尽きない好奇心と探究心なんですよね。

2011/01/05

パワフルでスウィンギーなうさぎ

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 10:02 pm by Yuki

全国のハープおたくのみなさま、遅ればせながら、あけましておめでとうございます!みなさまにとって、実りの多い素晴らしい一年となりますように。

さて、このブログではもはや新年恒例となりつつある 「年男のハーピスト」 ネタですが、今年もまたこれではじめたいと思います。

2011年はうさぎ年ということで、新年一発目はパワフルでスウィンギーなうさぎ、ウィリアム・クラーク (Willliam Clarke) です!

ウィリアム・クラークの生まれた1951年という年は、キム・ウィルソン (Kim Wilson)、ハワード・リヴィ (Howard Levy)、ビリー・ブランチ (Billy Branch) の誕生した年でもあり、ハープ界にとっては多産の年であります。ウィリアム・クラークの他は皆、現役でばりばりと活躍している方々ばかりですね。そう考えるとやはり、彼の早すぎた死を悼まずにはいられません。もっともっと、彼のハーモニカが聞きたかった。ライブだって見たかった。

ウィリアム・クラークの演奏で特筆すべきことは、やはりその革新的なクロマティック・ハーモニカの演奏ではないでしょうか。ジョージ・スミス (George “Harmonica” Smith) の影響ももちろん見られますが、師匠の受け売りではなく、自分のスタイルをしっかりと作り上げた人だと思います。

しかし、巧妙でクレバーなクロマティックの演奏と相反して、彼のダイアトニックの演奏は、複雑なメロディや速吹きなどを用いない、シンプルなものが多いです。

下のクリップでは、1曲目はクロマティック、2曲目はダイアトニックとなっていて、アプローチの違いが聞いて取れます。

WILLIAM CLARKE ~ Blowin’ like hell & Cash money ~ instrumental

だからと言って、ウィリアム・クラークのダイアトニックのスキルがクロマティックのそれに比べて劣っていたのかというと、そんなことは全くなくて、私はこれは (彼のダイアトニックの演奏にシンプルなものが多いのは)、意図的なものだったと思うんですよね。ダイアトニックを演奏する時は、その楽器の特質を生かして、地味なメロディを豊かな音色で派手に歌わせる、というやり方をあえて選んだのだと思うのです。言葉数少なく、ひとつひとつの言葉に表情と重みをもたせるというやり方を。

その証拠に (と言うのもなんですが)、ウィリアム・クラークは、ダイアトニックを使ってのスキルフルな演奏も残しています。これらの演奏での音のチョイスはクロマティックの演奏のアプローチにに近いですね。

William Clarke – Blowin’ The Family Jewels – 1990

William Clarke / Your Love is Real

恐るべしウィリアム・クラーク。間違いなく、ブルース・ハープの歴史に残るべき一人だと思います。これは全くの個人的推測なのですが、デニス・グルンリング (Dennis Gruenling) のジャンプ・ブルースも、ウィリアム・クラークがいなかったら生まれなかったかもしれない、などと思ったりもします。

新年はウィリアム・クラークからはじめよう、というのは前々から決めていたのですが、いざ書き始めてみると思ったように筆が進まなくて、また書きながら彼の音楽に聞き入ってしまったり、分析してしまったりして、一足遅れた新年のご挨拶となりました。今年もこんな調子でマイペースでやって行く予定ですが、またよろしくお願いいたします。