2013/09/02

Dear John Lee “Sonny Boy” Williamson

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 8:11 am by Yuki

親愛なるジョン・リー

今日も私は、あなたの音楽を聞いて幸せな気持ちになることができました。あなたの音楽は、いつも私に微笑みを与えてくれます。私をやさしく慰めてくれます。あまりに楽しくて、笑いが止まらなくなることだってあります。時にはあたたかいジャズのトランペットのように歌い、時には悲しみと憂いを帯びた人の声のように唸り、時には古いポンコツ自動車がデコボコ道を行くような音を立て、時には何かを口いっぱいもぐもぐ食べているような可笑しな音がするあなたのハーモニカが、私は大好きです。これは私の想像だけれど、たぶんあなたの心は、ハーモニカをプレゼントしてもらった11歳のクリスマスの日から、ちっとも変わらなかったのでしょう。農家だった家の手伝いをするばかりの毎日を送っていた少年が、ぴかぴかの新品のハーモニカを手に入れた喜び。急に人生が開けたような興奮。この小さな楽器が秘める大きな可能性を発見して行く時の驚き。ハーモニカを吹くのがただただ楽しくてたまらないという気持ち。あなたの音楽は、そういうものであふれている気がします。

あなたは歌も、ハーモニカを吹くみたいに歌うよね。ハーモニカは人間の声や歌声に一番近い楽器だと言われるけれど、あなたの歌を聞いていると、本当にその通りだなあ、と改めて納得してしまいます。言語障害のため自己表現がうまくできなかったあなたは、ハーモニカを手に持って歌うことで、やっと自由を得たのかもしれない。そう思えるほど、あなたの歌声は自然で自由で、人間味を持って私の心に語りかけてきます。その音楽を聞いていると、ブルースというものが生まれた訳や、ブルースにおけるハーモニカという楽器の役割や、ハーモニカ・プレイヤーが歌を歌うことの意味のようなものが、悟りが開けたようにぱっとわかる時があります。なんだか大げさなようだけれど、本当です。

それなのに、現代であなたのことが語られる時、多くの場合は、あなたが 「どれほどブルースの歴史において重要な人物であるか」 ということについてばかりです。正にその通り!あなたはブルース・ハープの歴史の中で、それはそれは重要な存在です。だって、ハーピストが歌を歌ってフロントマンとしてバンドをリードするということを始めたのもあなただし、現在まで継承されているのシカゴ・スタイルのブルース・ハーモニカを始めたのもあなたです。これまで誰もやらなかったことをやるのが天才というものだとしたら、あなたは確かにその一人だったと思うのです。そして、あなたが作り上げたそのスタイルは、リトル・ウォルター、サニー・ボーイ・ウィリアムソンII、ジュニア・ウェルズ、ビッグ・ウォルターなど、後に続く重要なハーピストに大きな影響を与えて来ました。要するに、現在ブルース・ハープを演奏する人なら誰でも、意識的にであれ無意識的にであれ、あなたのスタイルの影響を受けていることとなります。あなたはソング・ライターとしても優れていて、その多くの曲は、ブルース・スタンダードとして今日まで多くのミュージシャンに演奏され愛され続けています。ライブの帰りに窃盗を目的とした暴行に遭い、34歳という若さで亡くなるということがなかったら、自分がどれだけ大きな影響を与えたかを目にすることができたのに、と私は心から残念でなりません。そう、みんなが言うように、あなたはブルースとブルース・ハープの歴史の中で重要な人物なのです。

でもね、ジョン・リー、本当のことを言うと私は、もっとたくさんの人が、歴史的価値ばかりではなくて、あなたの「音楽」について語ってくれたらいいな、と思います。もっとたくさんの人が、あなたの音楽を愉しんでくれたらいいな、と。気持ちの良い春の午後の日差しの中で、眠れない夏の熱帯夜に、秋の夕暮れの静けさの中で、冬の朝に凍りつく窓の外を眺めながら、人々があなたの音楽に耳を傾け、その心を愉しませてくれるといいな、と。かつて、あなたが活躍していた時代、他のハーピスト達が皆こぞってあなたのようになりたがり、あなたのハーモニカを真似して学んだように、現代でももっと多くのハーピストがあなたに憧れて、あなたのスタイルを学んでくれたらいいな、と。だってね、ジョン・リー、本当に本当に、私はあなたの演奏が大好きなのです。素晴らしい音楽をありがとう。

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