2013/09/28

チューニング : 純正律、平均律、コンプロマイズド・チューニング

Posted in ハーモニカ小物 / お手入れ @ 11:06 am by Yuki

最近、サニーボーイ I のコピーばかりやっているので、手持ちのハープを純正律にチューニングし直しています。そこで今日は、なぜわざわざそんなことをするのか、また純正律と平均律の違いなど、ハーモニカのチューニングについて書いてみたいと思います。私もおおまかには知っていましたが、詳しいことは学んだばかりなので、自分のための復習も含めて。

平均律では、1オクターブは12の音程に均等に分けられます。現代の西洋音楽では、ほとんどの楽器でこの平均律が使われています。平均律のダイアトニック・ハーモニカは、Lee OskarやHohnerのGolden Melodyなど。

それに対して、純正律というのはコードの響きを基本としたチューニングです。純正律のコードは、わんわんとしたうねりがなく、とてもスムーズに響きます。ブラジルのHering社のハーモニカは純正律のものが多いです。また、SuzukiのFabulousは平均律と純正律の両バージョン出ているみたいですね。更におたく的な話になりますが、純正律にも色々あって、ハーモニカのチューニングで純正律と言うと、ブロー・コードとドロー・コードの両方を純正律に合わせた、「7リミットの純正律」を指すことが多いです。

例えば、現代のピアノは平均律にチューニングされています。これを、Cの純正律に合わせたとすると、Cのコード(ドミソの和音)はうねりの少ない美しい響きとなります。しか、しこの調律でC以外のコードを弾くと、うねりがひどい汚い響きとなってしまいます。また、12音の間隔が均等でないため、ドレミファソラシドという音階を弾くと、微妙な音のずれを感じずにはいられません。ダイアトニック・ハーモニカは、基本、ブロー・コードとドロー・コードの2種類しかなく、曲によって楽器の持ち替えをするので、純正律にチューニングをするという選択も可能となるわけです。ただ、それでも12音の間隔が均一でないことに変わりはないので、メロディーを吹くと音程がずれて感じられたり、2nd以外の他のポジションで演奏する際に困難が生じたりします。

そこで、最近の主流となっているのが、コンプロマイズド・チューニング(compromised tuning)というものです。これは、平均律の均等な音の間隔を保ちつつ、純正律のコードの響きもできるだけ保つように考慮された、言わば平均律と純正律の間を取ったチューニングです。メーカーやモデルによってその設定は様々で、例えば、HohnerのMarine Bandは純正律寄りのコンプロマイズド・チューニング、Crossoverは平均律寄りのコンプロマイズド・チューニングとなっています。

私は少し前までCハープのみを使って演奏していたので、平均律寄りのコンプロマイズド・チューニングを使っていました。しかし最近、ハープの持ち替えもできるようになってきたので、チューニングにおいて選択の余地ができてきたわけです。ここが悩みどころ。例えば、今私がコピーに励んでいるサニー・ボーイ・ウィリアムソン1世など、伝統的な奏法、コードを多用する演奏をする場合、純正律のハープが最も適していると思われます。しかしそうすると、2nd以外の他のポジションで演奏するのが難しくなってしまう。不可能というわけではありませんが、使う音のチョイスに気を使わなければならなくなります。特に純正律(7リミット)では5穴ドローが目立って低くなるので、この音がトニック(主音)となる12thポジションなどはきついです。ブルースでよく使われる3rdでも、純正律のハープを使う人の演奏を聞くと、この5穴ドローが「低っ!」と感じることがあります。コードの響きを取るか、単音のバランスを取るか・・・悩ましいところです。2ndポジションでも5穴ドローが低いことに変わりはないのですが、個人的には、2ndポジションではそれが逆に良い味になっていると感じることが多いです。この辺は好みの問題でしょうか。

ブルースハープの歴史的には、1980年代まではMarine Bandは純正律(7リミットの純正律)にチューニングされていました。戦前、戦後を含め、ブルースにおけるハーモニカの奏法を開拓してきたハーピスト達は皆、純正律のMarine Bandを使っていたこととなります。ハープおたくの夫が言うには、当時のMarine Bandが純正律でなかったとしたら、ブルースハープの奏法は現在私達が知っているものとは違ったように発展しただろう、とのことです。ブルース・ハープの伝統を築いてきたハーピスト達は皆、コードをふんだんに使った演奏をしていますが、それはやはり楽器のコードの響きが良かったので、コードをたくさん使うのが適していると感じたから、又はきれいなコードを鳴らすのが気持ち良かったからそういうことになったのだろう、というわけです。

しかし、クラシックなサウンドと言われるMarine Bandも、現在のチューニングは純粋な純正律ではありません。それで、トラディショナルな響きやスムーズなコードの響きを求める人は、カスタム・ハープを買ったり、既製のハープを自分でカスタマイズし直したりすることが多くなります(今、私がやっているのがこれです)。カスタムでは、19リミットの純正律(5穴ドローと9穴ドローが7リミットに比べて高くなります。)や、純正律で5穴ドローだけを心持ち高くしたコンプロマイズド・チューニングを使う人も多いです(うちの夫がこれ。確かジョー・フィリスコもこのチューニングだったと思います)。

長くなったので、最後に、平均律が主流の現代において、ダイアトニック・ハーモニカでは純正律にこだわる人が多い理由を整理してみます。どのチューニングを取るかというのは、演奏のスタイルや好みによって人それぞれで、どれが良い悪いという問題ではありませんが、参考までに。順不同です。

1. ブルース・ハープの伝統的なチューニングで、サニー・ボーイ・ウィリアムスン1世、2世、リトル・ウォルター、ビッグ・ウォルターなどの偉大なハーピスト達が皆使ったチューニングだから。

2. 多くの他の楽器と違い、曲のキーによって楽器を持ち替えることが可能だから。

3. 純正律のコードが非常に美しいから(楽器の性質上、純正律でないハーモニカのコードの響きは、ピアノなどの他の楽器に比べて耳障りで聞き難いと言われることがあります。たまに「耐えられない」と言う人さえいます。笑)。

私としては、純正律のハープを1セット、それから平均律に近いコンプロマイズド・チューニング、または純正律で5穴ドローだけを高くしたコンプロマイズド・チューニングのハープを別に1セット持つ、というのが理想かなあ、と最近思いはじめました。既製のハーモニカも最近はけっこうなお値段がするので大変ですけれども、私の場合、12のキー全て揃えるわけではないので(6本もあればだいたいのブルース・スタンダードはできますし、普通のブルース・ジャムでも用が足ります。)、時間をかければそれも可能かと。楽器が壊れた場合のスペアにもなりますしね。そんなわけで、少しずつ本数を増やして行きたいと思っています。

今回、チューニングについて学ぶにあたって、参考にしたページをいくつか紹介します。もっと詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。ものすごく濃いです。私は数字や科学的な話にはめっぽう弱いので、実はこういうことをお勉強するのはすごーく苦手。でもためになりました!

>Theory of harmonica tuning – ohw.se

>Hohner’s Tunings for Major Richter Harmonicas – Rick Epping

>Temperaments of various out-of-the-box diatonic harmonicas – Patt Missin

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4件のコメント »

  1. CMB said,

    純正律、平均律ですか。初心者には難しいですが、いつ分るのか楽しみです。
    でも、如何なんでしょうか。西洋音楽は、数字や科学的な話見たいですが。

    • Yuki said,

      >CMBさん

      私もあまり詳しくはなかったのですが、一度興味を持ち始めたらはまりました!

  2. ogitetsu said,

    音楽の理屈を余り知らない僕としては<?>の連続でしたが、読んでいて何となく判り始めたような気がします。
    もし、同じブルースのフレーズを、全く同じ様に純正律と平均律のハーモニカで演奏したら、僕にも違いが分るのでしょうかね。それとも、音感の良い人たちだけの間でしか違いが分らないのでしょうか。

    • Yuki said,

      >オギさん

      純正律と平均律のハーモニカでコードを吹き(吸い)比べてみたら、大抵の人はその違いがわかると思います。平均律が「わんわんわん」とうねりが強いのに対して、純正律はすーーっという感じでうねりがありません。


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