2011/01/14

パワフルでスウィンギーなうさぎの後日談 (それと音楽理論について少し)

Posted in ハーモニカ・プレイヤー, 音楽理論 tagged , @ 8:25 pm by Yuki

先日のウィリアム・クラークの記事をアップした翌日、アダム・ガッソー (Adam Gussow) が自身のフォーラムにて、ウィリアム・クラークについて同じ様なことを書いていたのを発見して、驚きました。

アダムが問題にしていたのは、私も先日の記事で紹介した、このクリップ。

William Clarke – Blowin’ The Family Jewels – 1990

「ウィリアム・クラークがこの演奏でダイアトニック・ハーモニカを使っているということが判るまでに、最低でも1分はかかった」 と言って、知的で創意に富んだその演奏を賞賛していたアダム。私も、先日紹介したクリップの中ではこの演奏が一番好きで、夫にクリップを見せて、「ね、これ、ダイアトニックだよね?クロマティックじゃないよね?ベンド音が出てくるまで気づかなかった!」 という話を興奮してしたりしていたので、ちょっとうれしくなってしまいました。記事をアップした日付は、アダムが12月31日、私が1月5日ということで、私とアダムは、同じ時期に同じクリップを聞いて、同じようなことを考えていたということになります。それにしても、このクリップでのウィリアム・クラークの演奏は本当にすごいです。

上手い人の演奏を聞く時、「この人はどういうアプロ-チでインプロヴィゼーションをしているんだろう」 ということに、私はとても興味があります。スケール中心、コード音中心、リック / リフ中心・・・などなど、インプロヴィゼーションの攻め方は色々で、そういう話を他のミュージシャンとするのもまた、ライブやジャムに行く楽しみのひとつです。(しかも私は、ピアノやハーモニカの人よりも、ギターやサクソフォンなど、自分が演奏しない楽器の人の話を聞くのが好きだったりします。)

さて、今回、年男の記事を書くにあたって、ウィリアム・クラークの演奏を改めてじっくり聞き直したわけですが、その間ずっと、「この人はどこまで音楽理論 (セオリー) の知識があったんだろう」 ということに関心がありました。真相はわかりませんけれども、彼のクロマティックの演奏や、今回のクリップの様にそれを (クロマティックのアプローチを) ダイアトニックに適用した演奏、また、そのインプロヴィゼーションのスキルなどを聴く限り、「ウィリアム・クラークはかなりのセオリーを知っていたのではないか」 と (個人的な想像として) 思います。手持ちのリック / リフ、それと直感とセンスに頼るだけでは、こういう演奏はできないのではないかと思うんですよね。少なくとも、コード音とインターヴァルの知識くらいはあったのではないでしょうか。彼がセオリーを知っていたという証拠にはなりませんが、ウィリアム・クラークがギターを弾いているクリップなんかもあります。リトル・ウォルター (Little Walter) もギターが弾けたといいますね。

>William Clarke Plays Guitar

もちろん、理論など知らなくても、素晴らしい演奏をするプレイヤーはいます。キム・ウィルソン (Kim Wilson) なんかは、「セオリーなんか知らない。そんなもの必要ない」 というようなことをインタビューで言っていますし、私もセオリー至上主義というわけでは全くありません。知識は豊富なのに演奏できない批評家肌の人よりは、理論なんて知らないけれどかっこいい演奏ができるという人の方が断然好きです。でも、キム・ウィルソンは現在のブルース・ハープ界を代表する天才的なプレイヤーなわけで、みんながみんなキムの様に吹けるわけではないのもまた事実ですよね。

誰かの演奏をコピーしたり分析したりする時、マンネリ化したインプロヴィゼーションから抜け出して新たなアプローチを見つけようとする時、セオリーは大きな手助けとなります。特に現代では、インターネット、教則本・DVD、レッスンなど、理論的なことを学ぶ機会はいたるところにあるわけで、それを頑なに拒否するのは、怠慢あるいは探究心の欠如という気もしないではありません。キムのようにずば抜けてかっこいい演奏ができれば、もちろん何も言うことはないのですけれども。

ハウリン・ウルフ (Howlin’ Wolf) は晩年、音楽理論を学んだのだといいます。誰かに聞いた話で出典は定かではないのですが、私はこのエピソードが大好きです。昔は現在のように情報があふれていたわけではないので、学びたくても学べなかったということも多かったのではないかと想像します。ハウリン・ウルフのように、キャリアがあり、名声もあるミュージシャンが、その晩年に自らセオリーを学びたいと思ったということは、私をひどく感動させるのです。ミュージシャンを進化させるのは、音楽に対する尽きない好奇心と探究心なんですよね。

2009/07/30

コピーの手順

Posted in 音楽理論 tagged @ 2:27 pm by Yuki

先日、デニスの演奏をコピーしているという記事 (>アドリブにおける構成力) を書いたら、「音取りはハープでするのか、ピアノでするのか」 というコメントをいただきました。そこで今日は、コピーをする時の手順を書いてみたいと思います。あくまで私流のやり方なので、どれほどのお役に立つかはわかりませんが、何かの参考になればと思います。

私は、コピーの大部分は、楽器を使わずに耳と頭で行います。その曲をとにかく聞きまくって、頭に叩き込んでしまうのです。といっても、長いソロの頭から終わりまでをいっぺんに覚えるのは大変なので、少しずつ分けて覚えていきます。比較的簡単なコーラスだと、数回聞いただけで12小節まるまる覚えられることもありますが、リズムや音の並びが複雑なフレーズが出てきた場合は、いくつかの部分に分けて、その部分だけを繰り返し聞いて覚えていきます。すべての音が頭の中でイメージできるようになるまで聞き込むことがポイントです。実際に声を出して歌う、頭の中で歌う、どちらでもよいですが、そのフレーズをそらで歌えるようになってはじめて、実際にハーモニカを持って吹いてみます。難しいフレーズの場合、10回聞いて1回吹くくらいの気持ちで聞き込むとよいのではないでしょうか。そうやって部分部分が吹けるようになったら、そのコーラスの始めから終わりまで通して吹く練習をします。そしてそれができるようになったら、ソロの最初のコーラスから練習したコーラスまで通して吹けるようにします。それができたら、次のコーラスに取りかかる・・・と地道に進めて行くわけです。

コピーの作業中、「音は頭でイメージできるけれど、テクニック的に難しくてうまく吹けない」 という箇所があると思いますが、そういう場合は、その部分だけをゆっくり練習して、だんだんとスピードを上げて吹けるようにしていきます。吹けない部分がある時は、音がわからないから吹けないのか、テクニック的に問題があって吹けないのかを見極めて、それに合った練習をして行くと時間が有効に使えると思います。

私は、集中してある曲を練習している時は、練習していない時でも頭の中でその音楽が鳴っていることが多いです。今はデニスですが、その前はスティーヴィー・ワンダーを集中してやっていて、私があまりにも始終その曲を口ずさんでいるので、「お願いだから、その曲はもう勘弁してくれ」 と夫に言われたことがありました (笑)。曲が夢にまで出てくることもあるし、夜中にぱっと目が覚めて、突然その曲が脳内に流れ出すこともあります。人間は眠っている間に記憶するという話を聞いたことがありますが、たぶんそれは本当なのでしょうね。そうなると、曲の最初から最後まで頭の中で復習し終えるまで眠りにつけません。クラシックのリサイタルが迫っていて猛練習している時などは、プログラムを最初から最後まで何度も繰り返し復習して、結局朝まで眠れないということもあります。何が言いたいのかというと、楽器の演奏は身体で覚える部分も大きく、それももちろん大切なことですが、音をイメージするのはあくまで脳だということです。そして、イメージができないと (音を頭の中で鳴らすことができないと)、良い演奏はできません。

曲を聞いてもどの音を吹いているのかわからなくて音取りが苦手という方は、イヤー・トレーニングをすることをお勧めします。ハーモニカの場合は、インターバル (音程) を聞き分けられるようになると、とても役に立ちます。インターバルとは、2つの音の高さの隔たりのことです (詳しくはこちら)。

イヤー・トレーニングをしてインターバルを聞き分ける力をつけると同時に、ハーモニカの各ポジションにおけるインターバルも頭に記憶させて行きます。例えば、2ndポジションだと、2穴ドロー、3穴ブロウ、6穴ブロウ、9穴ブロウがトニック (主音) で、そのトニックを基準にして、6穴ベンド、9穴オーバー・ドローが m2 (マイナー・セカンド = 短2度)、3穴1音ベンド、6穴ドロー、10穴ドローが M2 (メジャー・セカンド = 長2度)・・・というように、インターバルとして楽器の音の並びを覚えて行くのです。ポジションが変わるともちろんインターバルも変わるので、3つのポジション (1st、2nd、3rd) を使われる方であれば、3通りのインターバルを記憶しなくてはならないということになります。面倒だと思われるかもしれませんが、覚えてしまえば音名などをいちいち考えなくてもハーモニカを持ち替えるだけで移調ができるわけですから、そんなに大変なことではないと思います。他のほとんどの楽器は、スケールひとつ練習するのにでも全調で練習して、その音の並びをひとつひとつ覚えて行かなくてはならないのですから、それに比べたらずっと楽だと思いませんか?

インターバルを使う利点は、コピーがしやすくなるということももちろんですが、ハーモニカを持ち替えてもインターバルの感覚は変わらずに使えるということ、同じリフやリックを違うポジションで演奏する時に役立つということ、ハーモニカ以外の楽器の演奏も楽にコピーできるようになること、他の奏者と演奏する際に、相手がどの音を演奏しているかわかるので、アンサンブルが上手くなるということ、身体で覚えているリフやリックを吹く以外のアプローチができるようになり、アドリブの幅が広がるということです。インターバルの感覚は、トレーニングによって誰にでも身につけることができます。デニスも昔、ピアノを使ってトレーニングをしたのだと言っていました。みんなそうやって努力しているんですよね。
イヤー・トレーニングができる、こんなサイトもあります。
Big Ears

2009/02/02

ポジションって何? - 五度圏

Posted in 音楽理論 tagged , @ 12:19 am by Yuki

今日は、ポジションについての説明です。「ポジションってそもそも何?」 とか、「CハープでG調の曲を吹くのことを、どうして2ndポジションって言うの?」 と疑問に思っている方々への、ちょっとした音楽理論です。

西洋音楽で使われる音は、全部で12音あります。C、D♭(=C♯)、D、E♭(=D♯)、E、F、F♯(=G♭)、G、A♭(=G♯)、A、B♭(=A♯)、B です。鍵盤の上で見てみるとわかりやすいですね。
pianonotes

この12音を、五度圏 (circle of fifth) というシステムに当てはめると、下のような円ができあがります。

circle-of-fifths

この表は、時計回りで、完全5度ずつ進んで行きます。完全5度というのは、2つの音の高さの隔たり (音程) を表す度数のひとつです。ここでは、そのキーのメジャー・スケール (長音階) をトニック (主音) から上に数えて5番目の音 (ドレミファソラシドのソの音) のことです。例えに、この表をCから見てみます。Cの完全5度上の音はG、Gの完全5度上の音はD、Dの完全5度上の音はA、、、というように進んでいって、最後にFからまたCに戻り、12の音から成る円を完成させるわけです。

実は、1st、2nd などというポジションの名称は、この五度圏に基づいているのです。例えば、Cハープを手に持っているとします。それでC調の曲を吹いた場合が、1stポジションとなります。そこから順に、時計回りで、G調の曲だと2nd、D調の曲だと3rd、A調の曲だと4th、、、と数えて行くのです。他の調のハープを使う場合も理論は同じです。例えばAハープならば、A調の曲を演奏するのが1stポジションとなり、時計回りで一つ進んだE調の曲を吹く場合が2ndポジションとなります。

こうして見ると、ハーモニカのポジションは全部で12あることがおわかりですね。各ポジションにはそれぞれのキャラクターがあるので、演奏する曲によってポジションを選ぶわけです。今日、ブルースで頻繁に使われるのは何といっても2ndで、その次に1st、3rdという感じでしょうか。これは、この3つのポジションがブルースに合うということももちろんありますが、その他の理由として、これらのポジションがブルース・ハープの伝統となっているということもあると思います。ブルース・ハープは人の演奏をコピーして学ぶことが多いので、ポジションもやはり先代のやり方を受け継いで演奏する人が多いのだと思います。最近ではこの3つ以外のポジションを使う人も増えていますし、極端な話をすれば、スキルさえあれば、(その表現に限界があるとはいえ)、一本のハープで全てのキーを演奏することも可能なわけです。

ハーピストがジャムやセッションに出向くと、「ハープ何本持ってる?」 と聞かれることがよくあります。ハーモニカのことをよく知らないだけで、悪気がないのはわかっているのですが、私はこれがあまり好きではありません。せめて、「どのキーでも行ける?」 とか、「できないキーはある?」 とかにしてほしいなあ・・・。