2010/06/09

バッキング・アップ

Posted in テクニック, ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 11:01 pm by Yuki

先日、トム・ボールのライブを見て改めて感心したのが、彼のバッキング・アップのスキル。ケニーがソロを取る時、的確な音量、音域、リック、フレージングで素晴らしいバッキング・アップをするトム。そして、自分のソロの番になるとすかさず自己主張して入ってくるその様は、ちょっとジャズ・プレイヤーの演奏を思わせます。この日は最後にもう一人のハーモニカ・プレイヤー (私たちのハーモニカ仲間で、このコンサートのオーガナイザー。) が加わって2曲ほど一緒に演奏したのですが、この時のトムのバッキングアップも絶妙でした。ハーモニカでハーモニカを伴奏するのって難しいと思うのですが、それを難なくやってのけるトム・ボール。他のハーモニカ・プレイヤーと一緒に演奏するのはこれまで見たことがなかったので、今回改めて彼の演奏の幅広さをを知り、ううむと唸ったのでありました。

私はブルースの演奏で最も楽しいことのひとつは、他の奏者との演奏だと思っています。合いの手を入れたり入れられたり、インスパイアし合ったりしながら共に音楽を作り上げて行くのは、最高にスリリングでエキサイティングな瞬間です。ジャムであれ、自分のバンドの演奏であれ、他の人のバンドに参加させてもらうのであれ、ブルース・プレイヤーならば誰でも、「かっこいいソロを演奏したい」 と思うものだと思います。ですが、それと同時に、自分がソロを取らないところ以外でどのようなバックアップができるかということも、ソロを弾くくらい重要な課題だと思うのです。

私もまだまだ勉強中ですが、他の奏者がソロを弾きやすいように、歌を歌いやすいように、バンド全体としてのバランスが良く聞こえる様に、いつも心がけています。あくまで私の場合ですが、普段からどういう点に気をつけているのかを挙げてみますね。

1. 他の奏者の音を良く聞いて演奏する

自分以外の人の演奏を聴いて、それに合った音域、音色、音量、フレージング、メロディ・ライン、リズムで演奏するようにします。ピアノと比べて、ハーモニカや鍵盤ハーモニカは音域・音色ともにか歌とぶりやすいので、これらの楽器で歌の人とやる場合は、より一層気を使います。鍵盤ハーモニカとハーモニカも音域と音色がかぶるので、お互いの音をきちんと聞いていないと一緒に演奏するのは難しいです。エレクトリック・ギターとハーモニカというのも、ブルースでは一般的な組み合わせですが、これも実は難しい組み合わせだと思います。ハーモニカと音質がかぶるということにも原因があるのでしょうが、エレクトリック・ギターは何しろ音が非常に通るので、それでハーモニカを殺してしまうということが多いです。というか、エレクトリック・ギターは、ハーモニカだけではなくて、ピアノや歌も殺してしまうことがありますね。

2. 上手い人の演奏や録音を聞いて、バッキングアップのスキルを盗む

ジャムで上手い人の演奏を盗んだり、CDを聞いたり。ハーモニカでバッキング・アップが上手い人は・・・と考えてすぐに私の頭に浮かぶのは、ビッグ・ウォルターとリトル・ウォルターでしょうか。お2人とも特に、歌の伴奏をするのが上手い。ビッグ・ウォルターはまあ、ひどく酔っ払って演奏している録音もあるので、本当にごくたまーにですが、「う・・・これは?」 というものもありますが、ほとんどの場合は素晴らしいバッキング・アップをする人だと思います。

それから、ニューオリンズ・ジャズなんかを聞くのも非常に良い勉強になります。例えば、こういうの。
>Louis Armstrong – Basin Street Blues – 1964

トランペット、クラリネット、トロンボーン、3つの管楽器が同時に演奏されていますが、お互いの邪魔をすることなしに、上手く引き立て合っています。歌の背後で演奏されるクラリネットとピアノのメロディアスなバッキング・アップも素晴らしいし、トロンボーンのソロが終わった後、トランペットとクラリネットが入って来てからのエンディングはすごい。3者とも吹きまくりですが、うるさいということは全くなくて、絶妙なポリフォニーとなっています。先日、上手いハーモニカ奏者とジャム (私は鍵盤ハーモニカで参加。) をした時、ニューオリンズ・ジャズみたいな感じで演奏できた瞬間があって、すごくうれしかったのでした。

3. 自分が演奏しやすいバッキングアップをしてくれる人のスキルを盗む

ソロを弾いている時、または歌を歌っている時、弾き (吹き) やすいな、歌いやすいな、と感じることがありますね。その逆で、弾きにくい、歌いにくいと感じることもあります。その時、他のプレイヤーがどうやって自分をバッキングアップしていたかを覚えておいて、それを参考にするようにしています。演奏しやすいバッキング・アップをしてくれる人の技は盗み、演奏しにくいバッキング・アップをする人は反面教師とするわけです。
上手い人の演奏で一番強く感じるのは、私が弾いている (歌っている) 音域を避けてくれることと、スペースを空けてくれることです。それから、適切な音量を選んでくれる、というのもあります。バッキング・アップがあまり上手くない人の演奏はその正反対で、これは演奏しにくいったらないです。そういう思いをするたびに、「自分はこうしないように気をつけよう」 と心に誓うこととなります。

他の人と一緒にする演奏は、うまく行くと本当に気持ちが良いですね。そういう特別な瞬間を目指して、今日も練習です。

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2008/10/21

Little Walter と Kim Wilson

Posted in ハーモニカ・プレイヤー, CD tagged , , , @ 11:29 pm by Yuki

キム・ウィルソン (Kim Wilson) は、モダン・ハーピストの中で、私が最高に好きなハーピストの一人である。本当に素晴らしいプレイヤーだから、私に限らず、そういう人は多いと思う。それでも、批判というのはどこにでも存在するもので、キムをリトル・ウォルター (Little Walter) のコピーだとかイミテーターだとか言う人も存在する。要するに、「リトル・ウォルターの真似してるだけじゃん」 ということである。

キムを自分のスタイルをしっかりと持つトップ・プレイヤーだと思っている私は、彼をただのイミテーターと呼ぶのはナンセンスだと思うけれど、キムがリトル・ウォルターに大きな影響を受けているのは確かである。ちょっと聞いただけではあまりわからないが、二人の演奏を聞きこめば聞きこむほど、キムがリトル・ウォルターから受けた影響が明らかになってくる。まず、明るくて軽めで、ホーンのような音色。それから、フレージングと、メロディを構成するリズム。このフレージングやリズムの影響は、多くの場合、微妙に現れているので、聞き込まないと気がつかないことが多い。しかし、二人の演奏をあまり聞いたことのない人でも、キムがウォルターに影響を受けているということがはっきりとわかる曲がある。ジミー・ロジャース (Jimmy Rogers) が演奏する “Sloppy Drunk” という曲である。YouTube でリトル・ウォルターがハープを吹いているこの曲を聴くことができる。
Jimmy Rogers – Sloppy Drunk

キムは、ジミー・ロジャースの “Ludella” というアルバムに収められたこの曲でハープを吹いていて、これがまた、リトル・ウォルターの影響を受けまくった演奏をしている。残念ながら YouTube ではキムのこの演奏が見つからなかったのだけれど、アルバムをお持ちの方は聞き比べてみるとおもしろいと思う。(ちなみに “Ludella” はすごくかっこいいアルバムなので、キムが好きな人は買っても損はしないでしょう。)

もちろん異論はあるかもしれないけれど、この曲に関しては、私はリトル・ウォルターの演奏の方が好きだ。ハープというのは、バッキング・アップをするのがとても難しい楽器だと思う。他の楽器と演奏する場合、音が際立つので、自分のソロが回ってきた時は良いのだけれど、それ以外の時、他の楽器やヴォーカルの邪魔にならずにバッキング・アップをするのが非常に難しい。特に、ハープの演奏するラインはヴォーカル・ラインと近いこともあって、ヴォーカルを妨げない演奏をするのは特に困難である。これが最高に上手いのが、リトル・ウォルターとビッグ・ウォルター (Big Walter Horton) で、私は常々、バッキング・アップに関しては、この二人の右に出るものはいないと感じている。この “Sloppy Drunk” でも、リトル・ウォルターは始終ヴォーカルにからんでいるけれど、それが決してうるさくなく、邪魔でもなく、逆にこの曲の重要な部分となっているのである。

人から聞いた話で、真実かどうかは定かではないのだけれど、キムは、「リトル・ウォルターは自分よりも上手い」 と言っているそうである。私としては、「そんなことはない。ブルース・ハープの歴史の中では、キム・ウィルソンだってリトル・ウォルターと同じくらい重要なハーピストだ」 と思うのだが、本当に上手い人というのは謙虚さをいつも心に持っているものなのだろう。