2009/01/29

練習を録音してみる

Posted in テクニック, ハープ日記, ハーモニカ tagged @ 1:22 am by Yuki

自分の演奏を録音して聴いてみるというのが大切な行為だとは承知していますが、実はそれほど頻繁にはやりません。ものぐさなのもありますが、何より、録音した自分の演奏を聞くのは恥ずかしくて、逃げ出したくなってしまうからであります。これは本業のピアノも同じです。でも、常にそう言ってもいられないので、昨日は練習をちょっと録音してみました。私の練習なんか聞いてもしょうがないという気もしますが、お暇な方はどうぞ。何しろ初心者なのでお聞き苦しい点もありますが、良くないところは反面教師として下さいませ。

Slow blues in G

こうして聞いてみると、4穴ベンドの弱さが浮き彫りになりますね。4穴のベンドは調子がよい時はけっこうしっかりできるのですが、緊張したりすると (録音するのって、誰が聞いているわけでもないのになぜか緊張しますよね。)、グリップが弱くなってしまいます。ということで、今日はいつもの一通りの練習の他に、4穴ベンドの練習を小一時間やりました。意識して練習すると、普段使っていない筋肉が鍛えられているのが感じられてうれしいのであります。最低でもあと一週間はこの練習を続ける予定です。

ちなみに、曲の終わりで使った、2穴と3穴を同時にベンドして上げるというテクニックは、とてもよいベンドの練習になります。両方の穴の音をかすれたり途中で途切れたりせずに最後まで上げ切るのはなかなか大変ですが、これができるようになると、全体にベンドがしやすくなると思います。「ベンドは一応できるけど、なんかいまいちなんだよなあ」 と思っている方は、挑戦してみるとよいかも知れません。ベンドってできていると思っていても、実はまだまだ改善の余地があることが多いんですよね。

その他の反省点としては、3穴ベンドの音色にもっとバリエーションがあった方がいいなとか、いくつかのフレーズはもっとなめらかさがあった方がいいなとか、色々あって挙げるときりがありません。しかし、こういうバッキングなしでやるソロのアドリブって難しいですね。拍やリズムを自分でキープしなければならないし、グルーヴを作り出すのも大変です。更に、しっかりした構成をアドリブで作り上げていかないと、わけのわからない演奏になりかねないとも思います。バッキング・トラックを使った練習も役には立ちますが、ソロの練習も大切だと実感したのでありました。

bushman

今回使ったハープは、Bushman の Delta Frost です。何の変哲もない (カスタマイズなどされていない) 普通のハープであります。日本ではどうなのかわかりませんが、イギリスでは16.99ポンドと安いのがうれしいハープです。Marine Band Deluxe が34.99ポンド、Suzuki Hammond が29.99ポンド、Seydel 1847 が61.50ポンドですから、これは安い! 今のところ、C調はこの子一本でがんばっています。

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2009/01/20

身体で感じて演奏する

Posted in テクニック tagged , @ 12:02 am by Yuki

昨晩は、エディ・マーティン (Eddie Martin) が、ゲストとして夫 (ハープ吹き) と私 (知らない方、忘れている方もいらっしゃるかもしれませんが、本業はあくまでピアノ弾き) をライブに呼んでくれたので、彼のバンドに加わって演奏しました。エディはイギリスが誇るブルース・マンです。以前紹介したことがあるので、知らない方はこちらの過去記事をどうぞ。
Eddie Martin

eddie_martin_lp

エディのような大物と演奏するのはとても刺激があるし、私も数曲リードさせてもらったりして楽しかったのですが・・・しかし、エディのバンドは相変わらず音がでかい。先日会った際に、最近はなるべく音量を落とすようにしていると言っていたのですが、それでもやはりでかい。ドラマーの音が大きいので、それに比例してバンド全体の音量が上がっている感じを受けました。うちのバンドは音量を上げすぎないことを常に心がけているので、こういうステージ・ボリュームが高い中で演奏するのは、私としては理想のコンディションではありません。しかも昨日は、真後ろにドラム、斜め後ろにベースアンプがあるというピアノの配置。モニターの音量をぎりぎりまで上げても、自分の音が聞こえにくいという状況でした。

ステージで自分の音が聞こえないというのはとてもやりにくいし、全く好きではありません。でもですね、ピアノだと、よく自分の音が聞こえなくても弾けるんですよね。「こういうふうに身体をつかって、こういうタッチで弾いたら、こういう音が出る」 というのを身体で覚えているし、イメージした音は頭の中で全て鳴るので、実際に音が聞こえなくても弾けるのです。極端な話をすると、電子ピアノを無音で (スピーカーやヘッドフォンを通さずに) 弾いたものを録音してみたとしたら、弾きこんだ曲ならば、そこそこの演奏にはなると思います。

ピアノという楽器は、一度出してしまった音は修正できません。ハーモニカや多くの管・弦楽器は、音を出してしまった後からでも音色を立て直すことができますが、ピアノはそれができないので、鍵盤に触れて音を出すまでが勝負なのです。ですから、熟練したピアニストなら誰でも、身体 (指だけでは決してない) の使い方と音のイメージを密着させた演奏法を身につけているはずだと思います。

ハーモニカはピッチ (音程) を自分でコントロールしなくてはならないので、ピッチ調整は調律師任せであるピアノとは若干違いますが、それでも身体で覚えていれば音が聞こえにくくても演奏できるようです。「ようです」 と書いたのは、私自身、まだできていないからであります。ジャムで演奏する際、自分の音が聞こえないと、どの音を吹いているのかさえよくわからなくなることがあります (恥)。更に、ついつい強く吹きすぎてしまい、その結果、音程が下がったり、音色が荒くなったりもします。それでも聞こえていないから、気づかないんですよね。後で夫に指摘されて、落ちこむ羽目となるわけです。

夫に言わせると、「音が聞こえなくても空気の流れを感じることができるし、どういう音が出ているのかを口や身体で感じて吹くことができる」 のだそうな。確かに彼は、大音量のジャムでも、昨日のようなステージ設定でも (夫の隣には、エディのでかいギターアンプがありました。) 強く吹きすぎることなく演奏できるし、音も客席にはしっかり通っているんですよね。デニス・グルンリング (Dennis Gruenling) もワークショップで、「自分の音が聞こえないって言う人は多いけど、身体で感じればきちんと演奏できる」 と言っておりました。

これは、「音を聴かなくてもよい」 ということではないので、どうか誤解しないで下さいね。演奏において、自分の音、更に他の奏者の音をよく聴くことは、とても大切ですし、ステージでは自分の音と他の人の音がバランスよく聞こえるのが理想です。ここで私が言いたいのは、熟練した奏者は、身体の使い方と音色をいつも意識して演奏しているので、音がよく聞こえない状況でも演奏をすることが可能であるということです。そのように楽器を自分のものにするためには、「上手く吹けている時、良い音がしている時は身体のどこを使っているのか。どのように身体で感じているのか」 を日々の練習で意識して、少しずつ身体に覚えこませていくしかないのだと思います。地味な作業ですね。

私はハープに関しては、まだまだ 「身体で感じて吹く」 というレベルではありません。でも考えてみたら、ピアノはもう30年近くも弾いていて、それでもまだ毎日練習している状態です。練習を始めて3年にも達していないハープが簡単に行かないのは当然ですよね。楽器の習得は、時間と経験を要するものなんだよなあ、とつくづく感じます。

2009/01/17

Woodshedding

Posted in ハープ日記 tagged @ 12:06 pm by Yuki

先月の末から、ジャム・セッションに行っていません。ただひたすら、家で練習しております。前回行ったジャムで、納得の行く演奏ができなかったので、「こんなことではいかん!ジャムなんかに参加する前に、もっとやるべきことをやらなくては!」 と思ったのであります。この夜は、自分の腕の足りなさに腹が立って、悔しくて、帰り道でつい涙なんかこぼしてしまいました。昨晩も、ジャムに出かけていく夫を、家に残された犬のような目で見送り、一人練習に励んだのであります。

人前で演奏する際、どこで自分にゴー・サインを出すかというのは、その人によっても、演奏する状況によっても違うと思います。私の場合、聞くに堪える音色、しっかりとしたグリップで作り出すベンド音、タング・スラップによるリズム奏法、スロート・トレモロ、タング・トリル、オクターブ奏法などを使って演奏できるくらいの段階になるまで、最初のジャムに参加するゴー・サインが出せませんでした。「最低でもこれぐらいはできるようにならなければ、人前で演奏する意味はあまりないし、自分自身で納得がいかない」 という思いがあったのです (繰り返すようですが、これはあくまで私の場合です)。そして、なんとか念願のハープ・デビューを果たしたわけですが、そのゴー・サインを出すハードルは、上達するごとに高くなって行きます。練習を重ねて自分の演奏への要求が高くなってくるし、耳も肥えてくるので、以前と変わらぬレベルの演奏では自分で許せなくなってくるのです。

ブルースは人と作り上げていく音楽なので、ジャムなどで演奏するのはとても大切だと思います。家で一人で練習している時には見えない課題が、人前で演奏することや、他のミュージシャンと一緒に演奏することで浮き彫りになったりもします。でも、音楽には、自分自身と一対一で向かい合って、黙々と孤独に練習する期間も必ず必要だと思います。

woodshed2

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

ジャズ・プレイヤーが人前から姿を消して猛練習することを、”woodshedding” と表現します。“woodshed” とは 「まき小屋」 のことで、その名の通りまきを貯えておく小屋なのですが、ジャズ・プレイヤーにとっての 「まき小屋」 というのは一つの例えで、自宅の一室であったり、橋の上であったり、川原であったり、とにかく一人で黙々と練習できる場所のこと。そこで集中して一心不乱に練習して、ステージに戻って行くわけです。ソニー・ロリンズ (Sonny Rollins) がウィリアムズバーグ橋 (The Williamsburg Bridge) で練習した、というのは有名な話ですね。

“woodshedding” について書かれた、すごく素敵な記事があります。
Woodshedding & the Jazz Tradition

少しだけ紹介すると・・・

すばらしいソロ、難解なビーバップ、複雑なリズム・パターンは、根気強く取り組めば学ぶことができる。それは地味だけれど必要な雑用のようなものだ。火を起こす前に、まきを割るようにね。(The amazing solo, the intricate bebop melody, the complex rhythmic pattern, can be learned, if one is patient. It is a humbling but necessary chore, like chopping wood before you can start the fire.)

現在ではジャズは大学や高校で教えられ、熱心なミュージシャンは、多くの教材を手にしている。本、ビデオ、パソコンのソフトウェアにいたるまで、ジャズのアドリブを学ぶための資料はあふれている。21世紀になり、そのあり様は変わったのである。それでもなお、”woodshedding” というアイディアは変わっていない。ジャズの伝統の一部でありたいと願うミュージシャンなら誰でも、懸命に学んで経験を積まなくてはならない。斧を手に、まき小屋へ行き、火をともす前に、まきを割らなくてはいけないのだ。(Now that jazz is taught in universities and high schools, aspiring musicians have a multitude of resources for learning the art. There are a plethora of books, videos, even computer software for learning jazz improvisation. Woodshedding in the 21st century has taken on new forms. Still, the idea of woodshedding has not changed. Any musician who wants to be part of the jazz tradition has to pay his or her dues. You still have to take your axe in hand, go to the woodshed, and chop that wood before you can light the fire.)

「斧」 というのは、スラングで 「楽器」 という意味があります。”woodshedding” という言いまわしは、主にジャズ界で使われるのですが、これは他のジャンルにも当てはまるものだと思います。しばらく姿をくらましていたロバート・ジョンソン (Robert Johnson) が、戻って来て素晴らしい演奏で人々を驚かせたというのは有名な話です。トップ・プレイヤー達は皆、影でそういった努力をしているはずなのです。

私も現在は、斧を手に黙々とまき割り中です。進歩のない演奏で満足できるなら、人前で演奏するのは簡単です。でも、それでは自分で納得が行かないから、まきを割るのです。熱く、力強く、美しい火をともすことができることを祈りつつ。

2008/09/02

David Barrett - The Diatonic Harmonica’s Greatest Strength

Posted in テクニック, ハーモニカ・プレイヤー tagged , @ 6:54 pm by Yuki

デヴィッド・バレット (David Barrett) が編集しているオンライン・マガジンで、Harmonica Sessions というのがあります。2ヶ月に一度更新 (オンラインとはいえ一応マガジンなので、「発行」 と言った方がいいのかな?) され、バレット本人をはじめ、様々なハーピストによる記事が載っていて、なかなか読み応えがあります。

8月号 (最新号) はデヴィッド・バレットによる “The Diatonic Harmonica’s Greatest Strength” というタイトルのハーモニカ練習法の記事があり、これがとても興味深かったです。
The Diatonic Harmonica’s Greatest Strength (Harmonica Sessions)

「ダイアトニック・ハーモニカの最大の強みは、ひとつの音を多くの方法で表現できるということにあります。」 と始まるこの記事。4小節の短いリックを、異なる13の方法で演奏する練習です。例1は、ロングノートにビブラートかトレモロを加える奏法、例2は音の出だしをベンドする奏法、、、などなど。オーディオのファイルをクリックすると、実演も聞くことができます。バレットは同じ例を、アコースティックとアンプリファイドで2度ずつ演奏しています。確かにブルース・ハープは、同じリックでもちょっと手を加えるだけで違う表現になりますよね。バレットのこの記事はとても良い例だと思います。今日は一通り、全ての例を練習しました。

デヴィッド・バレットは、しっかりとしたメソードを持った、優れた教師であることで有名です。私は本人にお会いしたことはまだないのですが、機会があったらワークショップに参加したいと思うハーピストの一人であります。

2008/07/30

グラスで練習

Posted in テクニック, ハープ日記, 音色 tagged , @ 12:53 am by Yuki

ここ数日、アコースティックの音色が数段よくなったのを実感しているのですが、アンプリファイドの音色は停滞したまま。生の音色はかなり満足いくものになってきたのに、アンプを通すとへなちょこな音しか出ないということは、マイクの持ち方に原因があるんですね。ということで、今日はマイクの持ち方に力を入れて練習しました。

アンプリファイド奏法では、手でマイクとハーモニカを密封して、気密性を高くすることが大切だというのはよく言われることですが、私は手が小さいので、これがとても難しいのです。ほんの少しの隙間が大きな音色の差を生むので、なるべく隙間を埋めることを心がけて小一時間練習しました、、、が、アンプから出てくる音は、少しは改善されたものの、あまりぱっとしません。隙間は特に見当たらないのになぜ?と、ここでかなり落ちこんでくじけそうになったのですが、めげずにマイクをグラスに持ち替えて練習。マイクはグラスよりも一周り小さいので、グラスで練習をするとマイクを持つのが楽になる、と誰かが言ったのを思い出したのであります。私がいつも使うのは、マイクよりも一周り大きい、直径7cmのグラスです。

ああでもない、こうでもないと、手をごそごそと動かしながら練習すること小一時間。すると、ある瞬間、手の皮膚と口の周り皮膚がぴったりとくっついているような感じがありました。「あれ?これはなんだか今までと違うぞ?」 と思って、もう少し手をごにょごにょと動かしてもう一度吹いてみると、音がしっかりとミュートされている!このグラスを使った練習はこれまでもしたことがあるのですが、こんなに手と顔に密着間を感じたのは初めてです。興奮しつつも、忘れないようにそのままもう暫く練習して、今度はマイクに持ち替えて練習。夜遅かったのでアンプは通しませんでしたが、音はかなりミュートされています!これまでは、マイクやグラスを持つと、アコースティックでは簡単にできるフレーズが吹けなかったり、スムーズな演奏ができなかったりしたのですが、その点も改善されて、自然な動きができるようになりました。

マイクの基本的な持ち方というのは色々な人が教えていますが、手の形や大きさ、また顔の形は人によって違うので、あれこれ試しながら、自分に合ったグリップを見つけて行くしかないのだと思います。私の場合は、左手の親指と人差し指と中指で、ハーモニカをがっちりと押さえすぎていたのが問題だったようです。ハーモニカは親指の上にバランスをとるように載せて、上に載せる人差し指と後ろに当てる中指は、そっと添える程度の力にしたら、うまく行くようになりました。

今日は難関をひとつ突破した感があって、とってもうれしいです!

2008/07/26

オクターブ下の音を歌う

Posted in テクニック, 音色 tagged @ 8:11 am by Yuki

昨日はアンプリファイドの練習をしていて、「もうちょっと低音部が感じられる太い音色が欲しいなあ」 と思いました。日々の練習の成果があってか、全体に音色は良くなってきたのですが、まだまだ改善する点はあると感じています。音色の追求には終わりがありませんね。

良い音色を作るためには、口の中を開けることが大切だということは、前に書きましたが (>熱い息で演奏する)、昨日は、それを上手く感じられる方法を使って練習しました。オランダ人のハープ職人 / ハーピストである友人が随分前に教えてくれた方法なのですが、すっかり忘れていて (その頃は、私はまだ真剣にハープに取り組んでいなかったんですね。)、昨日、「なんとかもう少し音色に厚みが出ないものか」 と考えていた時に、この練習法をふと思い出したのです。この友人は、分厚い音色を持つことで有名なので、これは良い練習になると思います。

例として、A調のハープの2番ドロー (ミの音) を使いますね。まず、この音を声に出して歌ってみます。発音は、エとかイだと口が横に広がるので、オが良いと思います。「オーーー」 です。それができたら、その音を、1オクターブ下げて歌います。オペラ歌手にでもなったつもりで、低く太く 「オーーー」 です。そして、その口と喉の形を保ったまま、2番穴をドローします。すると、良い音が出ませんか?

私は、歌うのを1オクターブ下げたところで、口の中がぐわっと広がって、喉がぐっと下がって開くのが感じられます。これまでも口の中を開けることは注意して練習してきたのですが、まだまだ開く余地はあったのだと驚きました。そしてうれしいことに、音色も変わりました!後は、これを毎回注意して練習して、いつでも自然にできるように、喉の筋肉を鍛えて、筋肉の記憶 (英語ではマッスル・メモリー = muscle memory と言います) を発達させるのみです。

一歩先に進むコツがつかめて、昨日は有意義な練習ができました。普段使わない筋肉を使うので、長く練習すると喉がちょっと疲れますが、筋肉が鍛えられているのだと思えば、練習もはかどります。今日もがんばるぞー。

2008/07/21

魅惑のホール3

Posted in テクニック tagged , , @ 11:26 pm by Yuki

「ブルース・ハープは吹くのではなくて、吸って演奏する」 という話を聞いたことのある人は少なくないと思います。ブルースの演奏においては、ブロウ音よりもドロー音の方が、表情に富んだ音色を持ちます。そして、そのドロー音よりも、更に表情豊かでブルージーな音色を持つのが、ベンド (ドロー・ベンド) 音です。ブルースにおいてのベンド音は、通常のブロウとドローでは得られない音程を補うだけではなく、ブルース的な 「色」 を演奏に加える、重要な役割を持つのであります。

今日は、このベンド音が3つもある3番穴についての話です。この穴はすごいです。演奏する人によっては、この穴だけでブルースは演奏できてしまうというくらいの表現力があります。往年のハープ・プレイヤーは皆、この3番穴を駆使しているし、現在のプレイヤーでも上手いと思う人は皆、3番穴の使い方に長けています。 逆に言うと、3番穴を上手く使いこなせるかどうかは、素人と玄人を分けるポイントのひとつなのです。

表情豊かなブルースを演奏するために、この3番穴は欠かせないのですが、これを自由自在に使えるようになるのは至難の業です。まず、

一.3つのベンド音を、正しいピッチと良い音色で鳴らすことができる

というのは大前提で、その後、

二.ブルー・ノートを含む、半音と半音の間の微妙な音程 (microtone = 微分音) をコントロールすることができる

三.音をスライドしたり、第1ベンド音にスロート・ビブラート (喉でするビブラート) をかけたりなど、音に表情をつけることができる

という段階を得て、やっと、

四.上記の3つを、効果的にセンス良くインプロヴィゼイション (アドリブ / 即興) に生かして行く

という、なんとも長い道のりです。

3番穴を使いこなすには、テクニック的な面の練習と同時に、色々なプレイヤーの演奏を聴いて、彼らがこの穴を使ってどのような表現をしているかを、耳をそばだてて聴くと良いと思います。泣いたり、怒ったり、囁きかけたり、じらしたり、存在を主張したり、、、様々なハーピストが、3番穴を使って本当に色々な表現をしています。今日も、ビッグ・ウォルター (Big Walter Horton) の、第1ベンドにかけられた美しいスロート・ビブラートや、半音と半音の間の微妙な音程を行ったり来たりするソロを聴いて、鳥肌が立ってしまった私です。

イギリスのハープ・プレイヤー、ジャイルス・キング (Giles King) は、この3番穴で奥さんを口説いたらしいです。彼が3番穴を吹いた (正確には吸った) 瞬間、ライブを観に来ていた彼女は何か特別なものを感じたのだそうです。演奏に表現力が増して、更に、素敵な女性 (または男性) を口説けてしまうなんて、言うことなしですね。みなさん、がんばって3番穴を上手く使いこなせるようになりましょう!

2008/07/18

インプロヴィゼイションの練習方法 ・ その3

Posted in テクニック tagged , @ 9:56 am by Yuki

今日から始めた、新しい練習法。ドロー音だけを使ってインプロヴィゼイション (アドリブ / 即興演奏) をするという練習です。ブロウ音を使わないということ以外は、通常と同じ様に演奏します (私はバッキング・トラックを使いました)。避ける穴を決めて練習する方法は以前書きましたが (>インプロヴィゼイションの練習方法 ・ その1)、今回はブロウ音すべてを避けるわけです。限られた音で、どうやって説得力のあるソロを作り上げていくかというのが、この練習の課題です。

大半の場合、ブルース・ハープは吹くよりも吸って演奏することが多いので、ブロウ音なしでもかなりのことができます。更に、ドロー音はブロウ音よりも表情のある音色を出しやすいので、うまくすれば、ドロー音だけでもすばらしい演奏になります。

使う音を制限すると、嫌でも通常のパターン以外の動きをしなければならなくなるので、インプロヴィゼイションをマンネリ化させないための良い練習になります。また、普段、音名やインターバル (音程) を考えずに演奏している人や、初心者でハーモニカに馴染みの薄い人にとっては、「この穴を吸ったら、この音が出る」 というように、楽器の音の配列 (またはインターバル) を熟知する助けにもなります。

2008/07/12

耳は育つ

Posted in テクニック tagged , @ 5:56 pm by Yuki

音楽を学ぶ者にとって、一番大切なもののひとつは、耳の良さだと思います。楽器の練習は、基本的には自分の出す音や自分の演奏を批判して改善していくことの繰り返しなので (しかし、孤独な作業ですね。)、良いものと悪いものを聞き分ける耳がなければ、上達しません。

特にブルースは、耳で学ぶことが多い音楽です。教則本などでは、有名なリフが筆写されていることもあって、それはもちろん役には立つのですが、教則本で学べるリフやリックは数が知れています。それに、第一、自分の耳で何度も録音を聴いて、何が起こっているのかを分析して吹けるようにする、というのは音楽を学ぶ者にとって、とても大切な練習です。これは、私のハープ・ヒーロー、デニス・グルンリング (>Dennis Gruenling) も言っていました。彼は、ハーピストはもちろん、ギタリストやヴォーカリスト、また、ジャズ・クラリネッティストやサキソフォニストの奏でるラインを一音一音コピーしまくった時期があるそうです (毎日12時間くらい練習する、というのを数年間続けたそうな)。デニスに限らず、現在活躍しているトップ・プレイヤー達は、往年のプレイヤー達の演奏を必死でコピーして学んだ時期が必ずあるはずだと思います。

でも、耳で全てを探り出すというのは大変だし、難しいですよね。私も練習し始めの頃は、CDを聴いても、どうやって演奏しているのか、なかなかわかりませんでした。本業がピアノ弾きなので音名は聞き取れるのですが、様々な効果音にいたっては (ブルース・ハープでは多いんですよね、これが。)未知の世界、という状態でした。

でも、こういうのも、聞こえる人にはちゃんと聞こえるんですね。「ビッグ・ウォルターの、音の吹き始めに聞こえる破裂音とか、音と音の間に聞こえる音みたいなのは何?」 と夫に聞くと、「あれはタング・スラップと喉でするアーティキュレーションを組み合わせて、、、」 などと、彼にはきちんと聞こえているのです。「夫には聞こえるのに、どうして私には聞こえないんだろう?私にはハープを演奏する耳がないんだろうか、、、?」 などと思ったりもしました。

でもですね、ハーモニカが上達すると共に、だんだんと聞こえるようになってくるのです。タング・スラップ、タング・トリル、様々なアーティキュレーション、ダーティー・ノートなどができるようになってきた今、CDを聴くと、そのプレイヤーがどうやってその音を出しているか、以前よりもかなりよくわかるようになりました。練習を積んで、様々なテクニックを習得して行くうちに、耳の方も効果音などの細部まで聞き取れるようになってくるんですね。もちろん、わからない所もまだたくさんありますが、練習すれば耳も育って、いつか聞き取れるようになると思えば、未来が明るいではありませんか。

2008/06/08

スロウ・ベンド

Posted in テクニック tagged , @ 7:34 pm by Yuki

先日の、弱音ベンドに続いて、最近行っているベンドの練習法。

4穴ドロー・ベンドをできるだけ大きな音で鳴らします (もちろん良い音色で)。そのまま、ゆっくりとピッチを上げていって、なめらかに4穴ナチュラル・ドロー (ベンドではない普通のドロー音。) に到達するように練習します。ピッチを上げる途中で、音量が小さくなったり、音色が薄くなったり、音が跳んでしまったりしないように注意。音量、音質を変えずに、ゆっくりとなめらかに音程を上げていくところに、この練習の意味があります。それができるようになったら、今度はその逆で、4穴ナチュラル・ドローからゆっくりとピッチを下げて、4穴ドロー・ベンド音に到達するように練習をします。この時も、注意する点は一緒 。(音量、音質を変えず、なめらかに!)
上手くできるようになったら、1穴、2穴、3穴、6穴でも練習し、更に、弱音での練習もします。

これは、口の中を開いて、喉でピッチを調節し、お腹で支える、という正しい方法でベンドをしないと上手くできないので、とても良い練習になります。これが上手くできるようになると、ベンド・ノートの音色が改善され、ピッチも安定するようになります。

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