2013/10/03

初期のLittle Walter、Big Walter

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged , , @ 11:17 am by Yuki

ものすごく久しぶりにこれを聞いたら、たまげた。初期のリトル・ウォルターです。

Little Walter – Blue Baby

リトル・ウォルターの初期の演奏に、サニー・ボーイ・ウィリアムスン I の影響が強く見られることは有名な話ですが、この曲は特にすごい。細かいニュアンスや音色までまんまサニー・ボーイ1世のスタイルです。私は最近、サニー・ボーイ I のコピーを始めたので、リトル・ウォルターのこだわりがすごくよくわかって、感動すら覚えます。レコードしかない時代に、大変だったろうに(CDやパソコンの方が、聞き返したりする作業が断然楽ですよね)。

天才リトル・ウォルターも、自分のスタイルを作り上げる前は、先代の演奏をしっかりお勉強したんですね。しかし、ここからあのスタイルに発展させたというのは奇跡に近いというか、やはり天才の成せる技、という気がします。でも、後にリトル・ウォルターが生みだした独自のスタイルも、よく考えてみると、サニー・ボーイ1世のスタイルを学んだからこそ、という面も多いでしょうね。スウィング感とか、音楽の弾む感じとか、特に。

さて、サニー・ボーイ・ウィリアムスン I のスタイルを学んだのは、リトル・ウォルターだけではありません。初期のジュニア・ウェルズなんかもそうですけれども、今日はビッグ・ウォルターのこれ。

Walter Horton – Blues In The Morning / Little Boy Blue

特に2曲目の Little Boy Blue(2:53あたりから)がサニー・ボーイ I 入っています。

サニー・ボーイ I のコピーは、やればやるほど、「この人は本当にすごいテクニシャンだったんだなあ」と思います。彼の演奏はシンプルに聞こえますが、実は高度なテクニックがないとできないことばかり(なので私は苦労しています)。

jlsbwi.resized

みんなここから始まった。

広告

2013/02/03

King of Tone – Big Walter Horton

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 1:27 am by Yuki

お久しぶりです!ハープおたくのみなさま、お元気でしょうか?

さてさて、もう2月になってしまいましたが、年が明けたということで、毎年恒例の「ハーピストの干支」はやはりやっておかねば。

今年は巳年。年男は、泣く子も黙るビッグ・ウォルター様でございます。ブルース・ハープをお勉強するにあたってはマストなプレイヤーの一人ですね。崇拝している方も多いかと思います。そういう私も大好きです!

ぶあついトーン。時には突き刺す様なトーン。タングブロックを多用したパーカッシヴなアプローチ。もう大好き!

>Big Walter Horton-Hard Hearted Woman

>Walter Horton – Louise

Big_walter_hebi

最近知ったのですが、ビッグ・ウォルターのよく知られている曲にこちらのブギがありますが、

Walter “Shakey” Horton – Shakey’s Blues

これはトミー・ドーシーのこの曲が元になっているらしいですね。リトル・ウォルターなんかもそうですが、ハーピストってホーンの影響を受けていることが多いですね。

Boogie Woogie – Tommy Dorsey

こんな気ままなブログですが、今年もどうぞよろしくお願いいたします!

2012/06/03

まったく関係ないですが

Posted in テクニック, ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 4:01 pm by Yuki

先日、真夜中に、ぐわしゃ!!という音がしたので、飛び起きてカーテンを開けて外を見ました。そこで私が目撃したものは・・・

ブルン!、キーッ!、ぐわしゃ!!という音を立てながら、

「車がものすごい勢いでバックしながら、うちのガレージに突っ込んでいる」の図

ガレージに泥棒が入るのは実はこれで三度目なのですが、車で突っ込まれるとはさすがに予想しなかったぜ。すぐに泥棒避けのアラームが鳴ったので車はすぐに逃げ、何も盗られずにみましたけれども、それにしても、車で突っ込むってあり?!

ちなみに、一度目はガレージのシャッターをこじ開け、二度目は (その後シャッターのセキュリティーを補強したためでこじ開けるのは無理となったので) ガレージの屋根に穴を開ける、という手法でした。

イギリスではマウンテンバイクを狙った犯罪がとても多く、バイクの強盗を専門にしたギャングがたくさんいます。しかもその多くはティーネイジャー。バイクの強盗はそれほど重い罪にはならないので、捕まってもすぐに保釈され、また同じ犯罪を繰り返す、ということがほとんどなのだそうです。暗い話ですね。

さて、それとはまったく関係ないですが、今日は、最近はまっているビッグ・ウォルター様のこのクリップ。

Big Walter Horton

ぐっと攻めるところ以外は軽く静かに吹いていることがほとんどで、その辺がやっぱりさすがだなあと思います。

私は、アンプリファイドの演奏をする時に、「かっこいい音出したい!」 と思って力んでしまうことが多いんです。私に限らず、こういう人は少なくないと思います。でも、上手い人の演奏を注意して聞くと、やさしく軽やかに吹いていることが多いんですよね。このビッグ・ウォルターもそうですが、リトル・ウォルターとかキム・ウィルソンとかは、軽やかさの極致。ハーモニカもアンプも、やはり力付くでは良い音を出してくれないものだと思います。

2011/05/20

動きがかっこいいハーピスト番付 ・ 本編

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged , , , , , , , @ 8:06 am by Yuki

ブルース・ハープ界の色男たち」 に続く、くだらない企画シリーズ第二弾。ということで今回は先日の予告通り、動きがかっこいいハーピスト番付の本編です。では、さっそく行きますよ!

第5位は、片足ロッド

>Rod Piazza

片足に重心をのせて、もう一方の足でリズムを取る姿がかっこいい、ロッドおじ様でございます。0:31 あたりで足元が写ります。ライブ見て惚れそうになりました。「このボーカル・マイクの持ち方はどうなんだろうか?」 という多少の疑問もあばたもえくぼの、最高にセクシーな63才。

第4位は、踊るビッグ・ウォルター

Big Mama Thornton, John Lee Hooker, Big Walter Horton & Dr Ross

以前にも書いたことがありますが、この踊るウォルター様は本当に素敵です。ビッグ・ウォルターって、(残っている他の映像を見る限り) あまり体を動かさなで演奏することが多いと思うのですが、そのイメージとのギャップが良いです。みなさん、女性を落とすにはギャップ、ギャップですよ!あ、でも狙ってやってもだめなんですけどね。

第3位は、トルネード・デニス

Dennis Gruenling – Sweet Home Chicago – Gloucester Blues Festival

うちの夫がデニスのライブを始めて見に行った時、私は日本にいたのですが、ライブの後に、「デニスすごかった!トルネードみたいだった!蛇みたいだった!」 という興奮した電話がかかってきました。その時はなんのこっちゃと思っていたのですが、翌年にライブを見て納得。これはその時の映像ですが、今見てもやっぱり惚れ惚れしちゃいます。シャッフルのリズムに合わせて身体がぐわんぐわんうねる様に動くその姿はまさにトルネード。身体をくねらせながら口を開ける様子は威嚇する蛇 (2:35 あたりくらいからがわかりやすいかと思います)。ちなみに、夫はこのクリップを見るたびに、デニスがこの時自分のアンプを使ったということを自慢します (笑)。私は一緒にピッツァを食べに行ったことが自慢 (爆)。

第2位は、バタ足キム

Kim Wilson, Charlie Musselwhite, Mark Hummel

キム・ウィルソンって、一見演奏している音楽とは関係ないようなところで足を上げたりバタバタさせたりぶらぶらさせたりしますよね。ハープ吹きの夫によると、「この感覚はすごくよくわかる」 とのことですが、私にはどうしてこうなるのかというのは未知の世界であります。でもやっぱりかっこいい。0:52 あたりで、思いっきり盛り上げた後に見せるちょっと攻撃的な表情もいいですね。ステージ上の存在感と歌の上手さも含めて、この人はやっぱり現代ハープ界の王者。

輝く第1位は、役者・サニーボーイ・ウィリアムソン II

Sonny Boy Williamson – Nine below zero

このサニー・ボーイ2世のクリップを見るたびに、大うけ (良い意味で。) する私です。ドレスアップしてお行儀良く聞いている観客がまたおかしい。最後の足の伸びもポイントが高いです。私は演奏家というのは、自分自身のストーリーを自分自身の言葉で語る役者のようなものだと思っています。歌詞がある場合はもちろんですが、歌なし、楽器だけの演奏でもそれは同じで、レッスンでもそういう話をよくします。このクリップのサニー・ボーイ2世の雰囲気の作り方はすごいですね。演奏を始める前から曲の世界に入り込んで、その空気に観客を飲み込んでいく様は、クラシックの演奏家にも似たものがあります。ということで、めでたくこの方が1位!

さて今回、特別賞もあります。

特別賞は、尻振りジュニア・ウェルズ

>Junior Wells – What’d I Say.mpg

ジュニア・ウェルズは激しいパフォーマンスの映像がけっこう多く残っているので、それを1位から5位までに入れても良かったのですが、今回私が取り上げたかったのはハーモニカを吹かずに “What’d I Say” を歌って踊りまくるクリップだったので、特別賞ということにしました。のっけからハイテンションで首を振るジュニア・ウェルズ。ん~感じてますね~バックビート。それからすぐにお尻をふりふりする様子がアップになりますが (0:21 と 0:45 あたり)、なんでしょうか、やっぱりカメラの人は目が行っちゃったんでしょうかね。グッド・ジョブです。2:12 あたりからもかなり振ってますね。まさに特別賞にふさわしい強烈なパフォーマンスです。

それから、オギさんに悪知恵を入れられて、激励賞というのも作りました。この賞は、動きがかっこ悪いハーピストに与えられるものです。

激励賞は、棒立ちジェリー

>Muddy Waters – Blow Wind Blow

ジェリー・ポートノイのファンのみなさま、どうか怒らないでくださいね。このブログでも書いてきた様に、私もジェリーの演奏は好きなんです。なんですが、この人はなぜにいつも、ほとんど直立不動なのでしょうか?ちょっと前かがみで上半身が固まっている感じで、肩もこりそうだし・・・。このちょっと抑制した感じがジェリー・ポートノイの良いところなのかもしれませんが、たまに 「Go Jerry! Go wild! Go crazy!」 と激励の叫びを上げたくなることがある私です。不自然に動き回るハーピストよりはずっと良いですけどね。それに何しろ、演奏が上手ければ身体の動き方なんてどうでも良いことなのですが。しかし何ですね、現在も素敵ですが、この頃のウィリー・スミスはかっこいいですね。セクシーですね (またそういう話・・・)。息子のケニー君もお父さんの若い頃にそっくりで、男前であります。

みなさま、独断と偏見による 「動きがかっこいいハーピスト番付」、いかがでしたでしょうか。みなさまのご想像通りデニスが1位でも良かったんですけどね、今回はセクシーさに限らないかっこよさということで、こういう結果となりました。でもやっぱりこういう番付は、生でライブを見たことのある人が入っちゃいますね。リック・エストリンなんてライブを見たら、すぐさまトップになりそうです。この方のライブはぜひぜひ見てみたい。こういう写真だけでもう大うけ。

くだらない企画にお付き合いありがとうございました。

2010/04/02

トレモロとビブラート

Posted in テクニック tagged , @ 9:58 am by Yuki

ビブラートの話が続いたので、今日はついでにトレモロとビブラートの違いについて。

日本では、隣り合った2つの音を交互に鳴らすテクニックをトレモロと呼ぶこともあるようですが、これは英語圏では、ウォーブル (warble)、トリル (trill)、ヘッドシェイク (head shake) などと呼ばれます。それでは英語で言うトレモロとは何なんだ、ということになりますが、これはスロート・ビブラート (= throat vibrato, 喉を使ってするビブラート) と非常に良く似たテクニックのことを指す場合が多いです。呼び方は人によって違いがあることもありますし、さほど重要ではないですが、この2つのテクニックの違いを知っておくことは大切だと思います。

トレモロとビブラートの違いは、ピッチ (音程) の変化を伴うものがビブラート、ピッチの変化を伴わないものがトレモロ、と一般的に認識されています。Wikipediaにあったスペクトログラムを使った図解がとてもわかりやすいので、ここで引用します。トレモロではピッチが一定しており、ビブラートではうねうねと音程の波があるのが見て取れると思います。

つまりハーモニカでは、一定の音にベンドを加えて (ピッチを変えて) 変化をつけるのがビブラート、ベンドを加えずに (ピッチを変えずに) 変化をつけるのがトレモロ、ということになります。テクニック的には、喉を開けたままするのがトレモロで、そのトレモロのテクニックを喉を閉じて (ベンドして) するのがビブラートです。喉を少し閉じるとソフトなビブラートとなり、たくさん閉じるとより深いベンドとなるため、ディープなビブラートとなります。ジョー・フィリスコが、ワークショップでトレモロとビブラートの違いを実演して見せてくれたことがありますが、これは目から鱗でした。
スロート・ビブラートの他にも、先日リー・サンキーが実演していた (>Lee Sankey – sweet vibrato) 顎を使ってするジョー・ビブラート (jaw vibrato) などがあり、これは喉を閉じる代わりに顎を動かしてベンドするやり方ですが、音をベンドしてピッチを変えるという点はやはり一緒です。

ビブラートに色々あるように、トレモロも非常にソフトなものから機関銃の連射音ようにシャープなものまで、色々とあります。様々なビブラートとトレモロを試しているだけで、1時間くらいあっという間に過ぎてしまいますね。

トレモロをよく使っていたのは、ビッグ・ウォルター (Big Walter Horton) とジョージ・スミス (George “Harmonica” Smith) で、この二人はもう、トレモロ王ですね。彼らが使っていたのはほとんどがトレモロで、ビブラートを使う時でも、ほぼトレモロに近いビブラートということが多いと感じます。例として、ビッグ・ウォルターの有名な “Easy” を紹介します。

Walter Horton – Easy

しかし、”Easy”、久しぶりに聞きましたが、やはりすごいですね。ちなみに、この曲の元となっているのは、アイボリー・ジョー・ハンター (Ivory Joe Hunter) の “I Almost Lost My Mind” です。

ivory joe hunter/i almost lost my mind (1950)

2009/08/13

楽器の強み

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 9:32 pm by Yuki

最近、ハープ仲間の間で話題になっていたビッグ・ウォルター (Big Walter Horton) の映像。
Walter Horton, Floyd Jones – Goin Down Slow

ビッグ・ウォルター様は、私のハープ・ヒーローの一人であります。ハーモニカを練習し始めた頃、「こんなふうに吹けるようになりたい」 と一番の目標としたのが、ウォルター様だったのです。それぞれの楽器にはその楽器特有の強みというものがあって、その強みをどのように最大限に引き出すかということが、優れた奏者の成せる業だと思います。ビッグ・ウォルターの演奏は、初心者の私にもわかるくらい明確に、ブルース・ハープの持つ強みを引き出していると感じました。

big_walter_od

私は所詮ピアノ弾きなので、気をつけていないと、ハーモニカの強みというものをあまり考えていない演奏になってしまうことがあります。そして、こうしてウォルター様の演奏を聞いたりして、反省したりするのです。

2009/03/18

Tiger Man

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged , , @ 10:47 am by Yuki

キム・ウィルソンが演奏する曲で好きなもののひとつに、”Tiger Man” があります。エルヴィス・プレスリーが演奏したので有名な曲らしいですが、私はこの曲はキムから入りました。なんかこの曲、かわいくて好きなんですよね。何と言っても、はじまりの歌詞が、

俺はジャングルの王様だ
やつらは俺のことを、虎男 (タイガー・マン) と呼ぶのさ

I am the king of the jungle
They call me the tiger man

ですから。
2番では山にも登っちゃいますよ!

俺は山に登って、俺の黒猫を呼ぶんだ
I get up on a mountain
And I call my black cat back

こんな感じで本人は強がっているんですが、どこかぬけて感じられるところが好きです。30代も半ばに差し掛かろうとしている女としては、男ってかわいいよな、と思わせる歌であります。もっと若い頃なら、こんなふうに山の上から威張って呼ばれたら、「ふん、何さ。そんなに偉そうにして呼んだって行かないわよ。」 と言うこともあったかもしれませんが、最近は、「かっこつけちゃって、仕方ないわねえ。はいはい、今、行きますよ。」 とあしらうことができる気がします。尤も、こういうマッチョ系の人を好きになることはあまりないのですが。

YouTube に、この曲の作曲者でもあるジョー・ヒル・ルイス (Joe Hill Louis) による演奏がありました。ハーモニカは・・・この演奏はたぶん、ビッグ・ウォルター・ホートン (Big Walter Horton) でしょうか。

Tiger Man – Joe Hill Louis

続いて、キム・ウィルソンとキッド・ラモス (Kid Ramos) のデュオ。1995年の映像だそうです。キムの同名のアルバム “Tiger Man” がリリースされたのが93年ですから、そのちょっと後ですね。ここではアコスーティックのハープを吹いています。

Fabulous Kim Wilson-Tigerman

以前、キムのライブを見に行った時、キムが、「リクエストはある?」 と観客に聞いたことがありました。私は思わず 「タイガー・マーン!」 と叫びそうになったのですが・・・なんだか恥ずかしくてできなかったです。

2008/12/16

Easy

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 10:45 pm by Yuki

今日は、うちの夫の演奏を少しだけアップしたいと思います。
5月にドイツで行われたフェスティバルでの、ジャム・セッションの模様です。写真は真ん中がデニス・グルンリング (Dennis Gruenling)、右でハープを吹いているのが夫、その横で座っているのが以前紹介したオランダ人の友達のベン・バウマン (Ben Bouman)、ギターはドイツ人の友達のマックス、ベースはトマスです。下の写真ではスティーヴ・ベイカー (Steve Baker) がハープを吹いています。

schorndorf_jam1

schorndorf_jam2

音源は、みんなでビッグ・ウォルター (Big Walter Horton) の “Easy” を演奏した時のものです。デニス→夫→スティーヴ→デニス→夫という順でソロを演奏したのですが、デニスやスティーヴの演奏を無断でアップすることはできないので、残念ですが夫が演奏した部分だけに編集しました。アンプリファイドの演奏をしているのが夫です。

>Easy 1
>Easy 2

私は自分がミュージシャンということで、我が夫の演奏といえども、厳しく批評してしまうことが多いのですが (嫌な妻ですねよ。でもその分良いと思った事ももちろん伝えます。)、この “Easy” はなかなか良い演奏していると思います。

夫が最後に、あの有名な “Easy” のメロディーを演奏した時には、全身の血が沸騰するような感覚に襲われました。このメロディーは、デニスもジャムの始めで吹いたのですが、デニスのそれよりも、夫の演奏の方が心にぐっときました。私の心にダイレクトに訴えかけてきたのは、破裂音にも似たシャープなデニスの音色よりも、太く厚い夫の音色だったのです。これは単に好みの問題でしかないと思いますし、デニスは私のハープ・ヒーローで、私は彼に惚れこんでいるので、あくまで、「この時のこのメロディーに限っては、夫の演奏の方が好みだった」 ということです。でもそれにしても、この時から私の夫の演奏に対する評価が数段上がったことは確かです。

夫の演奏を聞くたびにいつもすごいなあと思うのは、何といってもその音色。それから、音のシェイプの仕方です。これはどの楽器にも言えることですが、音楽を演奏する上で一番いけないのは、「何気なく音を出してしまう」 ということだと思います。上手い人の演奏を聞くと、一音一音、全ての音を形作って演奏していると感じます。そしてそのあたりのこだわりこそが、上級者と中級者を分ける一線なのではないかと思うのです。

数年前、ジョー・フィリスコ (Joe Filisko) がブリストルのフェスティバルに来たのですが、その時以来、ジョーは夫の演奏を高く評価してくれています。夫は確かに良い奏者なのですが、ジョーがそこまで気に入る理由はなんなのだろう、と考えることがたまにあります。多くのハーピストが 「ハーモニカ・ゴッド」 として崇めるジョーとうちの夫を比べるのはおこがましいのを承知で書くと、それはたぶん、二人の演奏の根本となるものが同じだからなのだという気がします。「ハーモニカという素晴らしい楽器の魅力を最大限に引き出したい」 という、楽器とその演奏に対する謙虚で真摯なアプローチのような気がするのです。

関連記事
>Joe Filisko
Dennis Gruenling

2008/10/23

Gary Primich

Posted in ハープ日記, ハーモニカ・プレイヤー tagged , , , , , , @ 12:30 pm by Yuki

キム・ウィルソン (Kim Wilson) の “Boogie All Night” のコピーがだいぶ形になってきたので、それと平行して、2日前からゲイリー・プリミチ (Gary Primich) の “Playgirl” のコピーもはじめました。これで5日間で3曲 (キム・ウィルソン、リトル・ウォルター、ゲイリー・プリミチ) の音取りを完了したことになります。まだ細かい練習は残っているものの、これはなかなか良いペースです。最近は、暇な時間ができるたびにハープを握っております。

“Playgirl” のソロは36小節が2回と、最後に12小節が1回。私はこれまでは、ビッグ・ウォルター (Big Walter Horton) やジェリー・ポートノイ (Jerry Portnoy) のような分厚い音色で攻める演奏を中心に練習してきたのですが、最近はちょっとその軌道から外れて、リトル・ウォルター (Little Walter) やキム・ウィルソン、そして今回のゲイリー・プリミチノのような、軽やかな演奏の習得も目指して、がんばってコピーをしております。まあ、リトル・ウォルターもキムもゲイリーも軽やかなだけではもちろんないのですが、全体のトーンとしてはやはり軽く、スウィンギーだと思います。

ゲイリー・プリミチは、インプロヴィゼイション (即興、アドリブ) の仕方がすごく好きなプレイヤーです。ビッグ・ウォルターやデニス・グルンリング (Dennis Gruenling) などもそうですが、前のリフやリックを発展させて音楽を作り上げていくやり方は、私の理想にすごく近いです。間の取り方もすごくいい。それから、やはりスウィング感が素晴らしいですね。私が練習している曲ではないのですが、ゲイリーのライブ映像をアップします。

The Late Great Gary Primich 4/20/1958 – 9/23/2007 RIP
The Late Gary Primich with Nick Curran on Guitar

ハープ界を悲嘆にくれさせたゲイリーの死から一年が経ちますが、こうして演奏を聞くたびに、早すぎた死を惜しく思います。
一曲目 (I’m A Nervous Fellow) はサード・ポジション。マイナーの曲で使われることが多いサード・ポジションですが、こういうスウィンギーな曲にも合うんですよね。

ギターは去年までキム・ウィルソンのバンドで演奏したりもしていた、ニック・カーラン (Nick Curran) ですね。良い演奏していると思います。

2008/10/21

Little Walter と Kim Wilson

Posted in ハーモニカ・プレイヤー, CD tagged , , , @ 11:29 pm by Yuki

キム・ウィルソン (Kim Wilson) は、モダン・ハーピストの中で、私が最高に好きなハーピストの一人である。本当に素晴らしいプレイヤーだから、私に限らず、そういう人は多いと思う。それでも、批判というのはどこにでも存在するもので、キムをリトル・ウォルター (Little Walter) のコピーだとかイミテーターだとか言う人も存在する。要するに、「リトル・ウォルターの真似してるだけじゃん」 ということである。

キムを自分のスタイルをしっかりと持つトップ・プレイヤーだと思っている私は、彼をただのイミテーターと呼ぶのはナンセンスだと思うけれど、キムがリトル・ウォルターに大きな影響を受けているのは確かである。ちょっと聞いただけではあまりわからないが、二人の演奏を聞きこめば聞きこむほど、キムがリトル・ウォルターから受けた影響が明らかになってくる。まず、明るくて軽めで、ホーンのような音色。それから、フレージングと、メロディを構成するリズム。このフレージングやリズムの影響は、多くの場合、微妙に現れているので、聞き込まないと気がつかないことが多い。しかし、二人の演奏をあまり聞いたことのない人でも、キムがウォルターに影響を受けているということがはっきりとわかる曲がある。ジミー・ロジャース (Jimmy Rogers) が演奏する “Sloppy Drunk” という曲である。YouTube でリトル・ウォルターがハープを吹いているこの曲を聴くことができる。
Jimmy Rogers – Sloppy Drunk

キムは、ジミー・ロジャースの “Ludella” というアルバムに収められたこの曲でハープを吹いていて、これがまた、リトル・ウォルターの影響を受けまくった演奏をしている。残念ながら YouTube ではキムのこの演奏が見つからなかったのだけれど、アルバムをお持ちの方は聞き比べてみるとおもしろいと思う。(ちなみに “Ludella” はすごくかっこいいアルバムなので、キムが好きな人は買っても損はしないでしょう。)

もちろん異論はあるかもしれないけれど、この曲に関しては、私はリトル・ウォルターの演奏の方が好きだ。ハープというのは、バッキング・アップをするのがとても難しい楽器だと思う。他の楽器と演奏する場合、音が際立つので、自分のソロが回ってきた時は良いのだけれど、それ以外の時、他の楽器やヴォーカルの邪魔にならずにバッキング・アップをするのが非常に難しい。特に、ハープの演奏するラインはヴォーカル・ラインと近いこともあって、ヴォーカルを妨げない演奏をするのは特に困難である。これが最高に上手いのが、リトル・ウォルターとビッグ・ウォルター (Big Walter Horton) で、私は常々、バッキング・アップに関しては、この二人の右に出るものはいないと感じている。この “Sloppy Drunk” でも、リトル・ウォルターは始終ヴォーカルにからんでいるけれど、それが決してうるさくなく、邪魔でもなく、逆にこの曲の重要な部分となっているのである。

人から聞いた話で、真実かどうかは定かではないのだけれど、キムは、「リトル・ウォルターは自分よりも上手い」 と言っているそうである。私としては、「そんなことはない。ブルース・ハープの歴史の中では、キム・ウィルソンだってリトル・ウォルターと同じくらい重要なハーピストだ」 と思うのだが、本当に上手い人というのは謙虚さをいつも心に持っているものなのだろう。

次のページ