2009/02/21

スケールのすすめ

Posted in テクニック tagged @ 11:04 pm by Yuki

私が毎日の練習に取り入れているもののひとつに、スケール (音階) の練習があります。なぜスケールを練習するかというのは人によって多少異なるのかもしれませんが、私にとってのスケール練習は、

アドリブ (即興演奏、インプロヴィゼイション) における自由を獲得するための手段

に他なりません。この 「自由」 というのは2つに分けることができて、

1.思考上の自由
2.身体上の自由

となります。

ブルース・ハーピストというのは、私を含め、他のハーピストのリフやリックをコピーしてアドリブをすることが非常に多いです。コピーをするのは大切な練習法ですが、それ以外のアプローチができない奏者が多いのも事実だと思います。知っているリフやリックを繋ぎ合わせるだけではなくて、もうちょっと踏み込んだ、又はもっとオリジナルな演奏をしようという場合には、理論的なアプローチが手助けになってくると思います。スケールを練習すると、「どこにどの音があるか」 というマップが頭の中にできやすいですし、ブレス・パターンによる演奏だけではなくて、音楽の構成に従って音を選んでいくことができるようになります。「今、バンドはこのコードを演奏しているから、このスケールの中からこの音を使うことができる」 というようなアプローチが可能となるわけです。これが、「思想上の自由」 です。

「身体上の自由」 というのは、出したい音を、出したい時に、出したいように出せるという自由です。例えば、ベンド音。何度も練習したリフの中ではうまく鳴らすことができるベンド音も、アドリブで咄嗟に 「今、ここでこういう音色でこのベンド音を鳴らしたらかっこいいだろう」 という時には、身体がついて行かないことがあります。アイディアも音のイメージもあるのだけれど、コピーし慣れたリフやリック以外の演奏にはテクニックがついて行かないのです。これも、毎日のスケール練習でかなり改善することができます。ただし、身体に共鳴した良い音色が出ているか、ピッチは正確か、身体に余分な力が入っていないか、身体の正しい場所でアーティキュレーションができているか、レガート奏法はできているかなど、色々と注意しながら練習することがあくまで大切で、何も考えずにがむしゃらに練習しても時間の無駄となるだけです。これらのことがきちんとできるテンポで始めて、徐々にテンポをあげて行くのが良いと思います。テンポが上がっても、注意点は忘れないことが大切です。

ジェイソン・リッチ (Jason Ricci) も、「ハーモニカを速く演奏する方法 (Playing Harp Fast) 」 という題で、スケール練習を取り上げています。私は速吹きを目指しているわけではないのですが、スケールが速く上手くできるようになってから、特に速くないフレーズでも、演奏するのがぐっと楽になりました。ジェイソンは、ハーモニカ専用のフォーラムでもスケール練習の重要さを話題にしていて、現在でもスケールを練習していると言っていました。

Playing Harp Fast Part 2

私は、ジェイソンがここでやっている練習法を含む計8パターンの練習法を、メジャー・ペンタトニック・スケール、マイナー・ペンタトニック・スケール、ブルース・スケールの3つのスケールでそれぞれ練習します。なぜこの3つなのかというと、私がブルースのアドリブで使うのは、この3つのスケールが圧倒的に多いからであります。これを、1st、2nd、3rd、4th、5th、6th、11th、12th の各ポジションで練習すると、軽く2時間はかかります。「そんな退屈なこと毎日やってられるか!」 という方も多いかと思いますが、私はこういうのはあまり苦にならないんですね。かれこれ2ヶ月ほど毎日やっていますが、効果は抜群で、最近はジャムに行くのが楽しいです。スタンダード・ポジション (1st、2nd、3rd) 以外には興味がないという方は2時間もいらないですし、スケールを毎日の練習にちょっと取り入れてみるというのはいかがでしょうか。

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2008/11/12

誰にでも始まりはある

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged , @ 6:06 pm by Yuki

ジェイソン・リッチ (Jason Ricci) が YouTube で公開している、自身がビギナーだった頃の映像。
Have to start somewhere (Early first harmonica performance)

この映像についての、ジェイソンの説明。
「オーケー、ビギナー諸君、これで君達も希望が持てるよ!僕もかつてはビギナーだったんだ!このビデオを見せるのは恥ずかしいけど、これを見て励まされる人もいると思ったんだ!
(OK now all you beginners can feel better! See I’ve been there too! I’m ashamed of this video but thought some of you might appreciate it! ) 」

1991~1992年頃の映像ということなので、ジェイソンは17歳か18歳ですね。お世辞にも上手いとは言えません。というか、かなりひどいです。テクニック的にも音楽的にもド素人という感じ。まあリズム感はけっこういいかな?という気はしますが、、、。しかしこの数年後、21歳の時には The Sonny Boy Blues Society Contest というコンテストで一位になり、ファースト・アルバムを録音し、その後の活躍ぶりは周知の通りです。

現在では天才と言われることも多いジェイソンですが、そこに至るまでは努力と練習の毎日であったことは、この映像を見ると明らかですね。デニス・グルンリング (Dennis Gruenling) も、毎日8時間や12時間練習した時期があったと言っていました。私達はよく、「どうやったらあんなふうに吹けるんだろう?」 とか、「あんなふうに吹けたらいいな」 などと軽く言ったりしますが、トップ・プレイヤー達は皆、並大抵ではない努力をしているんですよね。

ジェイソン・リッチをよく知らない方は、こちらをどうぞ。
Jason Ricci and New Blood – Solo from “The Way I Hurt Myself

2008/10/12

Pat Ramsey

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged , @ 12:25 pm by Yuki

悲しいニュース。
パット・ラムジー (Pat Ramsey) が、ホスピスに入院したそうです。回復の見込みは低いそう。

ジェイソン・リッチが “Dad” と呼んで慕うパット・ラムジー。初めてパットのライブを見て感動したジェイソンは、メイン州にあった自宅からパットの住むメンフィスに移り住み、そこで働きながらパットの演奏を研究したのだそうです。

「パットの演奏は、装飾的だけど、すごくメロディアスだった。きざな感じだけど、そこには常に魂があった。僕はそれまで、シュガー・ブルーやジョン・ポッパーなんかのプレイヤー達には心を閉ざしていたんだ。それが、パットはその中間みたいなところにいて、僕は彼を受け入れることができたんだ。

Well it was fancy but it was really melodic. It was affected but it never lost any soul. I was really close-minded towards guys like Sugar Blue and John Popper but here came Pat who was somewhere in between. And I was able to accept him.」

ジェイソンのこの言葉が全てを語っている気がするので、私の下手な説明はなしで、パットの演奏を聴いてください。
Pat Ramsey & Blues Disciples … ” Build Me A Women “

2008/09/09

カスタム・ハーモニカ

Posted in ハーモニカ tagged , , , @ 1:36 am by Yuki

より良い演奏を無駄な労力なしでできるように手が加えられたハーモニカを、カスタム・ハーモニカといいます。アメリカやヨーロッパでは、プロのハーピストやプロ並の演奏をする人 (または目指す人) は、カスタマイズされたハーモニカを使っていることが多いです (手直しされていないハーモニカをそのまま使う人ももちろんいます)。私は日本の事情はよくわからないのですが、吉田ユーシンさんなんかがカスタマイズをやっているみたいですね。

「どうしてカスタマイズなんかが必要なんだ。ソニー・ボーイ・ウィリアムソン (両者) やリトル・ウォルター、ビッグ・ウォルターなどの往年のプレイヤーは、みんな Marine Band をそのまま使っていたじゃないか」 という疑問が湧いてくるわけですが、その頃の Marine Band は近年の物とは比べ物にならないくらい質が良かったのです。大量生産されるようになったのと、古い機械を長年変えずに使い続けて来たのとで、近年の Marine Band は質がぐっと下がってしまったらしいです。しかし、Hohner で働く知人によると、数年前に機械に入れ替えをしたので、最近はまた質が上がって、60年代に次ぐ質の良さに戻ったのだということでした。

もともと市販のハーモニカというのはどれも少しずつ癖があって、完璧な物は稀なのです。物によって、「2穴が鳴りにくいな」 とか、「3穴がすかすかするな」 とか、難点があるのが当たり前というくらいです。特に Marine Band は当たりはずれが多い楽器だと言われます。Marine Band をそのまま使っているというプロの人もいますが、そういう人でも、「はずれ」 の Marine Band は使わないはずだと思います。それから、オーバー・ブロウなどを演奏で使う人は、それがしやすいように手を加えたハーモニカを好む様ですね。

さて、カスタム・ハーモニカの職人として有名なのが、以前紹介したジョー・フィリスコ (>Joe Filisco)。キム・ウィルソン (Kim Wilson)、デニス・グルンリング (>Dennis Gruenling)、ジェリー・ポートノイ (>Jerry Portnoy)、ハワード・リーヴィー (Howard Levey) など、トップ・プレイヤー達のハーモニカをカスタマイズしている人です。ジョー自身もすばらしい演奏をするプレイヤーであります。

他には、リチャード・スレイ (Richard Sleigh)、ジェームス・ゴードン (James Gordon)、ブラッド・ハリスン (Brad Harrison)、ジョー・スパイアーズ (Joe Spiers) などが有名どころでしょうか。前述のジョー・フィリスコをはじめ、この方達はもう、魔法のような仕事をすることで名が知られています。各プレイヤーのニーズに合わせて、膨大な時間をかけてハーモニカを仕上げます (当然値段もお高いです)。私は夫が持っているブラッド・ハリスンのハープをちょっと試し吹きしたことがありますが、これは大きな衝撃でした。驚くほど気密性が高くて感度が良く、同じハーモニカであるとは信じられないほどでした。でも逆に、感度の良いハープというのは、テクニックがしっかりしていないと使いこなすのはむずかしいなあ、と思ったのも事実です。

カスタム・ハーモニカと普通のハーモニカを吹き比べする、というのを、我らがジェイソン・リッチ (Jason Ricci) がやっております。
Custom Harmonica Vs. Out of Box Harmonica 007

彼が吹き比べをしているのは次の3つのハーモニカ。

1.普通の Marine Band
2.ジョー・スピアーズがカスタマイズした戦前 (1920年代) の Marine Band
3.ジェイソン自身がカスタマイズした Golden Melody

聞き比べてみると、確かに、なめらかで気密性の高いカスタム・ハープに比べて、普通の Marine Band は leaky (空気が漏れやすい) ですね。音量もカスタム・ハープに比べると小さいです。ジェイソンは 「自分は、普通の Marine Band をそのままギグで使うことは絶対にない」 と言っていますね。それでも彼が吹くと、普通の Marine Band もさすがにいい音がしていると思います。

ついでに、ジェイソンがカスタム・ハープを使ってオーバー・ブロウをして見せる映像というのもあります。
Custom Harmonicas Part 2/bending overblows 008

2008/07/24

Jason Ricci

Posted in ハーモニカ・プレイヤー tagged @ 10:14 am by Yuki

ハーモニカに限らず、速弾き (吹き) で攻めるブルースの演奏は好きではないのですが、唯一例外なのが、ジェイソン・リッチ (Jason Ricci)。

この人の演奏に対するアプローチは全く新しいもので、ブルース・ハーモニカの新境地とも言えると思います。初めて聞いたときは自分の耳を疑って、ぶっとんで、感動して涙がでました。

速吹きのプレイヤーですが、この人の演奏は、一音一音と、その音が作り出すフレーズに、きちんと意味があります。それに、速吹きをしても、間を取るところではたっぷり取るので、「速いだけ」 の演奏で終わらずに、しっかりと聞き手に訴えかけてきます。そういうところが、シュガー・ブルー (Sugar Blue) などの速吹きプレイヤーと違うところです (シュガー・ブルーが好きな皆様、ごめんなさい。ただ単に私の好みです)。

映像は、前半アコーティスティックで、後半アンプリファイドに切り替えて演奏するジェイソン。速吹きでも、きちんとハープが泣いています。速吹きのプレイヤーではありませんが、私はマーク・ハメル (Mark Hummel) が好きではなくて、「どうして彼の演奏は、心にぐっとこないんだろう」 と考えたことがあったのですが、彼の演奏はハープが泣かないんですね (マーク・ハメルが好きな皆様、ごめんなさい。あくまで私の好みです)。やっぱりブルース・ハープは 「泣き」 が入ってこそだと思います。

ジェイソンは、絶対にライブを見てみたい人の一人です。

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