2011/07/13

音楽はやはりメイクラブ的に

Posted in ハーモニカ・プレイヤー, ハーモニカ以外 tagged , , , , @ 2:39 pm by Yuki

このブログを読みに来て下さっている方々はご存知かと思いますが、私は古いブルースと同じくらい、現代のブルース・プレイヤーやブルース・シーンに興味があります。例えば、「何だかんだ言ってもやっぱり誰もリトル・ウォルターにはかなわないや」 というようなことを思うこともたびたびあるのですが、それでもやっぱり現代のブルース・シーンを追うのは楽しいと思います。現在トップ・プレイヤーとして活躍している人達は皆、ものすごい労力と時間を費やして真剣に古いブルースを勉強して来たはずで、そういう人達が今、どうやってブルースを自分のものとして演奏しているかというのは、彼らと同じく現代においてブルースを演奏する者の端くれとして、また純粋にブルース・ラバーのリスナーとして、私はすごくエキサイティングなことだと思うんです。

最近はまっているのが、ジョン・ネメス (John Nemeth) がキッド・アンダーセン (Kid Andersen)、ランディ・バミューデス (Randy Bermudes)、マーティー・ドッドソン (Marty Dodson) と演奏しているクリップです。このブログでは何度か取り上げて来ましたが、すごく好きな演奏で、もうちょっと書きたくなってしまったので。

>John Nemeth & Kid Andersen – Come And Get It

>John Nemeth & Kid Andersen – She’s Looking Good

ジョン・ネメスはハーピストなのでみなさんご存知かと思いますが、他の3人も、現在のブルース・シーンで活躍しているミュージシャンです。ハーピストとの共演も多くて、キム・ウィルソン、リック・エストリン、チャーリー・マッスルホワイト、マーク・ハメル、デニス・グルンリングのアルバムなどで一度は名前を目にしたことがあるかと思います。誰と誰が一緒に演っているかというのを追うのもまた、現代ブルースの楽しみのひとつです。私はそれほどくわしいわけではないですが (すべてのミュージシャンの活動を常に追っているわけではないので。)、でも例えば、デニス・グルンリングのアルバムにマーティー・ドッドソンの名前を見つけたり、リック・エストリンのライブにランディ・バミューデスがゲストで参加しているのを見たりすると、やっぱりわくわくしちゃいます。

ジョン、キッド、ランディ、マーティーという組み合わせは他では見たことがないと思うのですが (いや、他にもある!と言う方はぜひ教えてください!)、すごくかっこいいと思います。ランディが出ているので私としては視覚的に楽しいというのもありますが、そういう下心は抜きにして、純粋にバンド・サウンドとしてこのクリップの演奏はすごく好きです。マーティーのプレイにランディが反応したり、その逆もあったり、ジョンの歌とキッドの掛け合いが良かったり、マーティーがジョンのプレイに反応して煽ったり、それにランディが加わったり。4人のからみ具合がおもしろくて、何度聴いても飽きません。

ブルースに限らず、クラシックなんかでもそうなのですが、音楽には、特定の相手と演奏するからこそ生まれるエネルギーやマジックみたいなものがあって、そこがおもしろいのだと私は思います。パフォーマンスの場合は、会場の雰囲気やオーディエンスのヴァイブなどによっても演奏のエネルギーの方向性が変わります。それが生きた音楽というものであって、誰とやっても同じ、どこでやっても同じ演奏しかできないなら、それはつまらないというか、人と演奏したりパフォーマンスとして演奏をする意味はあまりないような気が私はします。

以前、知り合いのギタリストがドラマーに、ある曲 (確かマジック・サムの曲だったと思います。) を 「CDと同じようにやって」 と頼んでいるのを耳にしたことがあるのですが、傍で聞いていて、「それは無理!!」 と思いました。だって、彼 (ドラマー) はマジック・サムとやるわけではないし、他のバンド・メンバーだってCDで演奏しているミュージシャンとは別人です。バンドの編成だって違います (そのバンドには原曲にはないハーモニカが入っていました)。「全体的にこういう感じで」 というのならわかるのですが、最初から最後までCD通り叩けというのではアンサンブルから生まれる音楽の面白みを殺してしまうと思います (誤解のないようにちょっと説明しますが、私はすべての音を一音一音コピーして学ぶやり方を否定するわけではありません。それはブルースを学ぶ上では避けては通れない道だと思います。でも、それと私がここで言いたいことは別のことです)。2人のミュージシャンが、よく聞き合って、反応し合ってひとつの演奏を作り上げる時、1+1が2以上になる瞬間があるのが、音楽というものだと私は思うんです。

以前書いたマーティー・ドッドソンについての記事で、

「どういうシャッフルを演奏するのかというのは、他のプレイヤーがどういった演奏をしているのか、どういったサウンドを作り出そうとしているのかによる」

「他のバンド・メンバーと一緒に音楽的な演奏を作り出すことにエネルギーを注ぐことが大事なんだ」

というマーティーの言葉を紹介しましたが、これは人と一緒に音楽を作り上げる上で、本当に大切なことだと思います。先日ライブを見たジェリー・ジェモットも、他の人がソロを取るたびに毎回身体の向きを変えて、そのプレイヤーと会話をするかのようにベースを弾くその姿がとても印象的でした。ギター、ハモンド・オルガン、ピアノ、テナー・サックスとソロを取る楽器は多かったのですが、その度にジェモットは身体の向きを変えるんです。

他の奏者の演奏をよく聴いて、それに反応して演奏するというのはアンサンブルの基本だと思いますが、でも、他のプレイヤーがやっていることを聞かずに弾きまくる (吹きまくる) 人って意外と多いですよね。こういう演奏を、英語で “wanking” と言います。”wank” というのは、スラングでマスターベーションのことです。特にギタリストに多くて、ロックっぽいギタリストが集まるジャム・セッションでは 「大ギター・ワンク大会」 となってしまうこともあり、こういう時は私は演奏はあきらめます。でもドラマーやベーシスト、ピアニスト、ハーピストでもたまにワンキングをしている人を見かけるので、ギタリストに多いというのはただ単にギタリスト人口が多いというだけなのかもしれません。何はともあれ、音楽はやはりマスターベーション的にではなくて、メイクラブ的に楽しみたいものだと思います。

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2011/05/31

トーンは自分自身の中に - マーティー・ドッドソン

Posted in テクニック, ハーモニカ以外, 音色 tagged , , , @ 8:57 am by Yuki

マーティ・ドッドソン (Marty Dodson) のドラムを聞くと、「ドラムにもトーン (音色) ってあるんだよなあ」 と改めて思うことが多い私です。ドラムに詳しいわけでは全くありませんが、この人は音がすごくきれいだと思います。先日の記事で、ジョン・ネメス (John Nemeth) がキッド・アンダーセン (Kid Andersen) や ランディ・バミューデス (Randy Bermudesa) と演奏しているクリップを紹介しましたが、そこでもドラムを叩いていたのがこの彼です。全体に気持ち良い演奏ですが (この人のドラミングはどうしていつもこんなに気持ちが良いのでしょう。)、特に曲の始め、4小節のイントロの4小節目 (0:11 あたり) のトーンが好きで、何回でも聞けちゃいます。シャンパンの泡がはじけるかのような美しいトーン。

John Nemeth & Kid Andersen – She’s Looking Good

彼の作り出すシャッフルのリズムとグルーヴも最高ですが、それを際立たせているのも、このクリアなトーンのような気がします。デヴィッド・バレットのサイトからの映像で、ドッドソンが様々なシャッフルの説明をしているクリップがあって、これがまた素晴らしい。ハーモニカ (David Barrett)、ギター (Rusty Zinn)、ベース (RW Grigsby) を加えての、バンドサウンドのデモンストレーションもあって良いお勉強になるかと思います (バックビートについての話などもしています)。

>Shuffle, Part 1 – Blues Harmonica Band Performance Training: Groove for BluesHarmonica.com

マーティーは、「どういうシャッフルを演奏するのかというのは、他のプレイヤーがどういった演奏をしているのか、どういったサウンドを作り出そうとしているのかによる」 と言っていますね。こういうところにも激しく同意。

それから、デヴィッド・バレットがこのお三方に、「ハーモニカ・プレイヤーが取り組むべき課題は何か」 という質問をするクリップもあって、そこでマーティーは、トーン (音色) についてこのようなことを言っています。

「いつもと違う音響の部屋で演奏する時、自分の望むトーンが得られないからといって、ハーモニカプレイヤー達がものすごく欲求不満を感じているところを見たことがある。僕も同じ欲求不満を感じることがあるよ。ドラムだってトーンがあるからね。チューニングを変えることだってできるし、例えば、スネアのボディが十分に聞こえない環境で演奏しなくちゃならないことだってあるかもしれない。演奏する部屋の音響がタムには合わなくてもスネアには合うということだってあるかもしれない。バスドラムが良く鳴らないということだってある。それが現実だし、そういう問題は付き物だよ。良いトーンを得ることをあきらめろって言うわけじゃないよ。でも、トーンはエキップメントの中にあるんじゃないって僕は確信している。エキップメントの中ではなくて、指とか、ドラムの叩き方とか、ハーモニカの吹き方とかの中にあるのがトーンなんだ。トーンは自分自身の中にあるもので、僕らはそれを自分自身で探し出さなくちゃいけない。これは音楽的にも肉体的にも、紛れもない真実だよ。だから、部屋の音響が良くないからってそんなにイライラしないで、他のバンド・メンバーと一緒に音楽的な演奏を作り出すことにエネルギーを注ぐことが大事なんだよ。」

難しいシチュエーションで演奏しなくてはならない時、私はこのマーティーの話の最後のくだりを思い出すようにしています。つい先日も、ひどいサウンドマンのおかげでステージ上でピアノとヴォーカルがほとんど聞こえなく (立派なPAだったし、しかもフル・バンドではなくて、ピアノ、ギター、ハーモニカのトリオだったんですよ!それでこれ以上は無理って!?)、一瞬パニックに陥りそうになったのですが、そこでふっとこのマーティーの言葉を思い出して救われるということがありました。ありがとう、マーティー。しかし、この方もなかなかの男前ですね。ちょっとさっぱりしすぎている感じが私のタイプとは違うのですが、巷の女子には人気がありそうです。

それはさておき、こうしてハーピスト以外のミュージシャン (しかも彼らのようなトッププレイヤー) によるハーピストへのアドバイスが聞ける機会ってあまりないので、とても興味深いですね。こういうビデオを作るあたり、デヴィッド・バレットはやはりさすがだと思います。他のアドバイスも勉強になるので、ぜひご覧になることをおすすめします。私は、ラスティ・ジンの、「もっと多くのハーモニカ・プレイヤーに歌を歌ってほしい」 、「音楽の構造を理解するために、ギターやピアノなどを学ぶと良いと思う」 という言葉に共感しました。

Rusty Zinn, RW Grigsby and Marty Dodson share what Harp Players should work on